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日本CFコーチ協会★ビジョンへの道

書籍を武器に企業研修を獲得──「プロの思考整理術」を営業現場に落とし込んだ実践事例

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2026.01.13 執筆者:中山毅俊  奥村龍晃

 

実践者:中山 毅俊: (キャッシュフローコーチ)
東海3県を中心に、後継者向けのコンサルティングや企業研修を展開
インタビュアー:奥村 龍晃 (日本キャッシュフローコーチ協会会員)

 

今回は営業ツールとして書籍を活用したキャッシュフローコーチの実践記事です。

キャッシュフローコーチとして活動する中で、クライアント企業の課題は財務だけに留まらない。特に後継者が抱える「組織づくり」「人材育成」の悩みは深刻だ。今回は、和仁達也氏の著書『プロの思考整理術』を活用し、ある宅配弁当業者の営業研修案件を獲得・実施した中山毅俊氏(東京6期)にインタビュー。書籍をどう提案に活かし、どのように研修を設計したのか。営業スキルが乏しい現場に「ロジカルシンキング」を根付かせた実践の裏側を聞いた。

 

後継者支援の中で見えてくる「組織の課題」

 

奥村: 中山さんの普段のお仕事について教えてください。

中山: 基本はキャッシュフローコーチをベースにした個別コンサルティングが中心です。主な対象は後継者の方ですね。事業承継が終わった後、どうやって経営していくかで行き詰まる方が多いので、そういった方を支援しています。

奥村: クライアントさんの業種はどういったところが多いですか?

中山: 土地柄もあって製造業が多いですね。ただ、キャッシュフローコーチと言っても関わり方は本当に様々で、財務だけをやっているところもあれば、財務はほとんどやっていないところもあります。後継者の方って、財務以上に人と組織の部分で困っている場合が多いので。

奥村: なるほど。今回の研修案件も、そういった「組織の課題」から生まれたんですか?

中山: そうですね。営業部門のマネジメントで悩んでいる企業からの相談でした。

 

セミナーから生まれた研修案件

 

奥村: 書籍『プロの思考整理術』を使って研修案件を獲得されたとのことですが、最初からこの本が研修に使えるとイメージされていたんですか?

中山: はい。和仁先生もおっしゃっていましたし。ただ、営業研修に使えるかは具体的にイメージしていなかったんです。きっかけは、セールスに関するセミナーをやっていて、そこに来てくださった方が「営業って勢いや感情だけじゃなくて、ロジカルシンキングが大切なんだよね」という考え方の方だったんです。

奥村: その方が、中山さんのセミナー内容に興味を持たれたと。

中山: そうなんです。思考整理をすることで営業に活かせるというセミナーをやったんですが、話を聞いていただいて「これはうちの営業担当者に聞かせたい」ということで、研修につながりました。厳密に言うと、経営者ではなく営業部門のトップの方で、その方が抱えていた課題とセミナー内容、そして『プロの思考整理術』の3つがフィットしたんです。

 

「価格競争」から抜け出せない営業現場

 

奥村: 具体的にはどんな企業だったんですか?

中山: 地元で有名な宅配弁当のサービス業者です。営業担当者が配達をしながら新規顧客獲得も兼ねていて、営業のやり方を誰からも教わったことがないという課題を抱えていました。

奥村: 営業と配達を兼務している方々が対象だったんですね。それは大変そうですね。

中山: そうなんです。基本的に営業というよりは、エリアの配達をしながら新規も取るという感じ。当然、営業のやり方なんて誰からも教わっていない。それをどう教えるかを、営業のトップの方が悩んでいたんです。

奥村: どれくらいの規模の研修だったんですか?

中山: 30人くらいですね。研修では『プロの思考整理術』の4つのステップ、つまり問題解決の基本的なステップを実践的に体験してもらうことで、顧客の悩みを深く理解して、それに合った解決策を提案することの重要性をお伝えしました。

奥村: 具体的にはどのような内容をお伝えしたのですか?

中山: 相手の悩みをしっかり把握してから、それに合うものを提供するという基本ができていなかったので、まずはロジカルシンキングを営業現場で活用できるように、本の概念を噛み砕いて伝えました。多くの営業担当者が「こんな弁当があります」「こんな豪華な素材を使ってます」と自分たちの言いたいことだけを伝えていたんです。でも、相手が求めていなかったら押し売りになるだけですよね。

奥村: なるほど。

中山: そういうレベルのことしかできていなかったので、「まずは相手が何に困っているのか、どうなりたいのかを聞くところから入った方がいいんじゃないですか」という話をしたら、「なるほど」となったんです。

 

研修設計の工夫──「できるようになる」ことを目指して

 

奥村: 研修の具体的な内容を教えてください。4つのステップをどう実践してもらったんですか?

中山: やっぱりワークで体験して実践しないと意味がないと思っているんです。最初に和仁先生がよくやっているデモンストレーションをして、その後、各グループやペアで実践してもらい、体験から理解を深めてもらいました。

奥村: 研修にワークを取り入れるのは有効なんですね。

中山: そうです。実際に自分たちでやってみると、うまくいかない部分が分かるんですよね。でも、型があることで話が進むということは納得してもらえたと思います。

奥村: 参加者の方々は、どの辺りで詰まりましたか?

中山: 条件出しで詰まるのはもちろんなんですが、その前に「理想の未来を出すところ」で結構多くの方が行き詰まりました。

奥村: 理想の未来ですか。経営者レベルでも難しいところですよね。

中山: そうなんです。でも、悩みがちゃんとしていないと、当然理想の未来も出てこない。だから「相手は本当にどんなお弁当が欲しいのか」「お弁当に何を求めているのか」といったところをしっかり聞いていくという話をしました。

奥村: 研修の冒頭で、場作りにも工夫をされたとか?

中山: はい。和仁先生を模範にして、安心、安全、ポジティブな場作り(AAP)を30分くらいかけて行いました。大笑顔ワークなどで参加者の緊張をほぐすんです。

奥村: 和仁先生のやり方を踏襲されたんですね。中山さん自身で特に意識されているポイントはありますか?

中山: 事前にヒアリングをして、皆さんが何に悩んでいるかを把握することですね。そして、3時間なら3時間の研修で「皆さんの悩みが解決する」ということをしっかり前置きで伝えます。

 

「何を話していいか分からない」から「聞き出す営業」へ

 

奥村: 研修中に特に印象に残った質問や反応はありますか?

中山さん: 「私生活でも使えるか」という質問が印象的でした。参加者が「悩みや理想の未来を言語化すること自体が重要である」と理解してくれたんだなと手応えを感じました。

奥村: やはり言語化することが大切なんですね。

中山: そうなんです。そもそも悩みとか理想の未来を言語化するということ自体を、今までしてこなかった人たちなので。そもそもお客さんとちゃんと対話するということ自体ができていなかったし、対話する必要があるとも多分誰も思っていなかった。

奥村: それは大きな変化ですね。

 

幹部層にも波及した変化

 

奥村: 研修後のフォローアップはされましたか?

中山: 一度、フォローアップとして再度のワークセッションを行いました。この企業は集合研修を行う文化がなかったので、私の研修が初めての本格的な研修だったんです。

奥村: それは意外ですね。成果はいかがでしたか?

中山: 経営層には研修への抵抗があったようですが、営業の管理職クラスの姿勢は大きく変わりました。

奥村: 幹部の方々のマインド変化について、もう少し詳しく聞かせてください。

中山: 幹部の方々は、プレイヤーとして営業の学びを得ただけでなく、部下への接し方も変わったんです。特に、部下の話を傾聴し、状況を理解した上で成果向上を考えられるようになった。今まで「気合いと根性」「行ってこい」としか言えなかった幹部が、部下の状況を理解した上でロジカルに成果を伸ばすことを一緒に考えられるようになったんです。営業で起こった変化が、人材育成のあり方にも良い変化をもたらしました。

 

書籍を活用する利点と注意点

 

奥村: 本があることで、営業の段階でも役立ちましたか?

中山: はい。提案段階で『プロの思考整理術』(書籍)を見せることで、一言では伝えづらい内容を相手がすぐに理解してくれました。それと、本になっているくらいの内容を教えてくれるんだ、という権威性も感じてもらえたと思います。自分の本ではなくても、先生が書いた本だということで、営業のドアノックや説明に使いやすかったです。相手も本を読んでくれて、次に進めました。

奥村: 研修当日も、本を物質として配布されたんですよね?

中山: はい、30部を事前に送って、当日配布しました。

奥村: 本はテキストとしてではなく、補足資料のような使い方だったんですか?

中山: そうですね。本をそのままテキストに使うと、3時間や4時間では到底終わらないんです。場作りをして、ワークを入れると、実質の内容は2時間半から3時間くらいしかできない。なので、スライドを作って資料は別に渡して、「詳しくはこの本のこのページを見てください」という形で紐付けました。

奥村: 受講者が自己学習もできるような設計になっているんですね。

中山: 研修後も書籍を活用して各自で復習ができるようにお伝えしています。

奥村: 書籍を使う研修と使わない研修で、やりやすさは違いますか?

中山: やりやすさという点では、本があることで権威性が高まりますし、しっかりした体系化されたノウハウになっていることが伝わります。それに、私がセミナーだけで伝わらないことも、本を読むことで伝わりやすくなる。権威性と、体系化されたものが手元にあるという使い勝手の良さ、この2点が主な活用法ですね。

奥村: 表紙の効果もあると?

中山: そうなんです。特に『超★ドンブリ経営のすすめ』と『プロの思考整理術』に関しては、表紙が便利なんです。表紙さえ見れば何が書いてあるかイメージが湧くので。有名じゃない自分のような講師にとっては、相手が聞く姿勢になってもらいやすい。それに、後のフォローアップにも使いやすいんです。

奥村: 書籍を使うからこその難しさや落とし穴はありますか?

中山: 本の中身を読み出したり、「じゃあ今から本の説明をします」というのは私はやらないですね。学校の授業みたいになっちゃうので。

奥村: それはやりがちですね。

中山: 私がやる研修やセミナーの内容は、本を読んで知識を得ることではなくて、「できるようになる」ことが目的なんです。だから、本はあくまでバックボーンとして、その先さらに自分で学びたい人用という位置づけです。和仁先生の『超★ドンブリ経営のすすめ』のセミナーと同じイメージですね。レジュメは配るけど、レジュメなんて一つも見ない。

奥村: 確かに。読書会みたいにするのとは違うと。

中山: 読書会的なやり方も否定はしませんが、それはどちらかというとコンサル向けですよね。現場の人にいきなり「この本を読みましょう」と言っても、「よく分からん本をいきなり読まされて」となってしまう。

 

これから挑戦する人へのアドバイス

 

奥村: 最後に、これから書籍を使った企業研修に挑戦したいという方に、アドバイスをいただけますか?

中山: やっぱり基本はビジョナリーコーチング(VC)なんです。相手が何に悩んでいて、研修が終わった後にどうなりたいかをしっかり事前に聞いて把握する。その解決策の一つの方法として研修があるという考え方です。

奥村: 相手目線の研修設計が重要なんですね。

中山: そうです。「この本がいいんだよ」ということを伝えるだけとか、自分が伝えたいことだけを伝える研修は避けた方がいい。本ありきの研修よりも、やっぱり相手が何に困っているかベースの研修、つまり相手目線の研修を心がけてほしいです。事前にしっかりお話を聞くことが大切だと思います。

奥村: 今回は日本キャッシュフローコーチ協会、東京6期の中山さんにお話を伺いました!ありがとうございました!

中山: ありがとうございました!

 

まとめ──書籍は「権威付け」と「自走支援」の両輪

 

中山氏の事例から見えてきたのは、書籍を活用した研修の3つの価値です。

1. 営業段階での「信頼の可視化」
著名な著者の本があることで、提案の説得力が増し、クライアント側も社内稟議を通しやすくなる。

2. 研修での「権威付けと体系化」
体系化されたメソッドが書籍として存在することで、受講者の納得感と学習意欲が高まる。

3. 研修後の「自走支援ツール」
書籍が手元にあることで、受講者は自己学習を続けられ、講師側もフォローアップの糸口を作りやすい。

ただし、書籍を「読み合わせる授業」にしてしまうと、本来の目的である「できるようになる」ことから遠ざかる。大切なのは、クライアントの真の課題を掴み、その解決策として研修を設計すること。書籍はあくまで「武器」であり、使い方次第で価値が変わる。

今回の事例は、価格競争に陥っていた営業現場に「顧客の悩み起点」という視点を植え付けた好例だ。そして、それは幹部層の人材育成マインドにまで波及した。書籍を起点に、組織全体の思考様式を変える——これこそが、コンサルタントが目指すべき真のインパクトではないだろうか。

あなたのクライアント企業には、どんな「思考整理」が必要だろうか?

 

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