社員を巻き込みビジョンを実現する キャッシュフロー経営って?
会社の借入金はいくらまでしていいのか?何年で完済できるか、をまず考えよう
2019.05.29 執筆者:和仁 達也キャッシュフロー経営ドンブリ経営借入金
会社経営をしていると、設備投資や新規事業の立ち上げ資金などで
銀行から借り入れをすることがあります。
そのとき、どんな基準で借り入れをすればいいのでしょうか。
いずれは必ず返すものだし、借りた分だけ金利負担も
大きくなるので、過剰な借り入れは避けたいところです。
そこでこの記事では、経営者があとで後悔しないための、
納得の借り入れの仕方についてお伝えしていきます。
以前の記事で、
【ドンブリ経営から脱出するために3つのキーワードがある】
というお話をしましたね。覚えていますか?
「え~っと、それは確か、
① お金に目的別に色をつける
② お金の入りと出のバランスを考える
③ 逆算思考で目標を決める
ということでしたよね」
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そうです。そして以前の記事で
「②お金の入りと出のバランスを考える」という基軸で、労働分配率の話をしました。
つまり、粗利という「入り」に対して、
人件費という「出」がどれだけあるか、を把握しよう、
そして、それが果たしてバランスがとれているかを
チェックしようという話でした。
これからはこの「②お金の入りと出のバランスを考える」
という基軸にもとづいて、もう1つの重要なお話をします。
それは、借金はいくらまでならOKなのか、についてです。
みなさんは、自社の借金が、過大なのか、適切なのか、
少ないほうなのか、と問われたら、どう返答しますか?
「私はいつも資金繰りに追われている感覚があるので、
きっと借金が多すぎると思います」
「私は銀行にもっと貸してくれと言えば貸してくれるので、
きっと借金は少ないほうなんじゃないかな」
なるほど、いろいろな解釈のしかたがあるようですね。
では、それらは本当に自分なりに納得できる程の
根拠になっているでしょうか?
「いや~、感覚的な判断なので、借金が多いにせよ、
少ないにせよ、いくらまでが妥当なのか、よくわかりません」
「私だって、銀行が貸してくれるといっても、
なぜ貸してくれるのかわからないし、
いつ銀行がソッポを向くかもわからないので、不安です。」
わかりました。それでは、自社の収支構造に照らし合わせた
借金の適正額を見極める方法をお伝えしましょう。
借金は寄付ではない! いつになったら返し終わるの?
借金の金利の支払いは経費ですが、
元本返済は経費ではありません。
したがって、税金を払った後でないと
借金を返済することはできません。
つまり、返済は本業のキャッシュフロー(以下、本業CF)
からなされます。
本業CFとは、税引後利益に減価償却費を繰り戻したものです。
よって、年間の本業CFと年間の返済額の関係は、
年間の本業CF > 年間の返済額
となる必要があります。そうでないと、
入りと出のバランスが崩れることになりますからね。
入りよりも出が大きい場合、
貯蓄を取り崩して返済にあてているか、
返済するために新たに借金をする、
というおかしな構図になっているはずです。
「私の会社も入りより出のほうが大きいのですが、
親が資産家なので、親から借りて銀行の借金は返済しています」
う~ん、親から借りて返済をしているとしても、
それも「借りて返す」構図には変わりありませんよ。
実力で返済できる状態を目指すのなら、
それで安心するのはいかがなものでしょうか。
また、もう1つチェックしておきたいことがあります。
それは、
今の借金の総額が、年間の本業CFの
何倍(何年分)になっているか、です。
つまり、次の割り算を考えましょう。
借金の総額÷年間の本業CF = 何倍?(何年分?)
もし10倍なら、今の利益を維持し続けた場合、
10年で完済できる収益力がある、ということです。
もし30倍なら30年かかるはずです。
「うわっ、私の会社は50年もかかる計算になりますよ!
そんな年まで仕事をしているとは思えないんですが……」
それは、あくまで今の収入をずっと維持した場合の話ですから、
今後、利益が上がっていくような対策を打てば、
もちろん返済期間は縮まりますよ。
逆に利益が下がっていくようだと、
返済により長い期間がかかることになります。
当たり前の話ですが、借金は寄付とは違います。
いずれは全額返さなければなりません。
しかも、ただ返すわけではありません。
利息を乗せて返さないといけないのです。
借りるときはそこまで考えて借りてください。
この計算をすると、たまに
「100年かかっても返せない借金」
をしている人がいたりします。
「孫の代まで借金を相続させるつもりかな?」と心配になります。
みなさんの会社はいかがですか?
本業のCFは、年間の返済予定額を上回っているだろうか?
借入金は、本業のCFの何倍になっているだろうか?
銀行を儲けさせるために働きたいですか?
借金をする際に必ず考えておくべきこと。
1つは借りた元本は必ず返すということ。
そして、もう1つは利息の負担です。
おさらいになりますが、
借金の元本は税引後の利益から支払います。
一方、利息は経費(固定費)として支払います。
よって、利息が多ければ多いほど、利益は圧迫されます。
利益が減ると、その分、借金の返済原資がなくなるので、
借金をし続ける期間が長くなります。
借金をしている間は利息が発生するので、
生涯コストとしては膨大な費用を払っていることになります。
下手をすると、
利息を支払うだけで精一杯で、
返済はいつまでたっても終わらない、
なんて悲惨な状態になりかねません。
その状態を
「銀行を儲けさせるために働いている」
と私は呼んでいます。
2%前後で借りられる低金利時代の今のうちは、
さほど気にならないかもしれません。
しかし、将来的に利率が今の2倍、3倍になった
ときのことを想像してみてください。
単純に借金の額が今と同じであれば、
利息の額が2倍、3倍になるということです。
仮に1億円の借金があって、年間200万円の利息を
払っていた会社は、利率が2倍になっただけで
一気に利息が400万円になるのです。
その差額分の200万円分、一気に利益が目減りするのです。
200万円の利益を作るためにどれだけの努力が必要か、
ちょっと考えてみてくださいね。
そこで、年間粗利と比べて何%の借金をしているか、
というモノサシを持っておくと参考になります。
これはもちろん少ないほどよいですが、当面の目標として、
借金の上限を年間粗利の80%以下に抑えることを
目指してください。
なぜか?その考え方をご説明しましょう。
仮に今、みなさんの会社が粗利に対して
3%の利益を生んでいるとしましょう。
そして、その年間粗利と同額の借金をしていて、
その金利が3%だとしたら、どうなるでしょうか?
利益がすべて利息で吹っ飛ぶということです。
もし粗利の200%の借金をしていたら、
粗利に対して6%の利益を生んでいたとしても、
3%の金利で利益が帳消しになるのです。
わたしは多くの会社の決算書を見る中で、
同じ利益を生み出すために、借金の大きさ故に
2倍、3倍の仕事をしなければならない会社を
見ることがあります。
それでは、誰のために仕事をしているのかわかりません。
みなさんは自分のために働きますか?
それとも、銀行のために働きますか?
追伸、
「納得の借入金の判断」をするには、
会社のお金の流れの全体図を把握しておくと、有利です。
その際は以前のこちら↓の記事が参考になります。
「たった1枚の図で会社のお金の流れはすべてわかる!お金のブロックパズルとは?
会社の借金はいくらまでして良いのか?有事の時の考え方を解説
「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」
▶︎有事における融資の考え方。会社の借金は多めに借りるか否か?