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社員を巻き込みビジョンを実現する キャッシュフロー経営って?

人件費の考え方を解説!労働分配率から人件費をいくらまで出せるのかコントロールしよう!

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2018.12.01 執筆者:和仁 達也

人件費の考え方を正しく理解していない社長さんも実は多く、労働分配率から人件費をいくらまで出せるのか?を質問されることも良くあります。

人件費が高騰していると言われていて、人手不足により人件費が高騰し、利益を圧迫してしまう。

このような状況に置かれている企業も少なくありません。

特にドンブリ経営をしてしまっている会社は、「売上さえあげれば、人件費をアップしても大丈夫!」と思いがちです。

「人件費を高くしなくては採用できないし、やめられては困る」
と売上が好調だから、人件費をアップし、より頑張ってもらっているけど、蓋を開ければ、「あれ?利益が全然残らない」

従業員の給与だけに着目してしまい上げてしまうとそれ以外の費用がかかってしまい利益を失うということもあります。

このように、人件費をいくら出せばいいのかは非常に難しいものです。

中小企業や歯科医院経営では、「いくらまで売上をアップさせれば、うちの会社の利益は確保できるのだろう?」と思う経営者も多いのではないでしょうか?

人件費の言葉の意味を知ることで、適正な人件費の考え方を知りましょう!

人件費を理解されている方は多いと思いますが、実際人件費とはどう言った意味でしょうか?

ドンブリで考えてしまう社長の中には、人件費=従業員に支払う給料が人件費だ!と考えている人も多いと思います。

実際には、法定内福利厚生、法定外福利厚生、賞与、退職金、通勤交通費、管理費なども人件費として考えられます。
つまり、雇用で発生する様々な費用のことを人件費というのですね。

ただ従業員の給与を払えばいいというのではなく、ここまで考えて人件費をいくらまで出せるのかを決定しなければいけません。

では、適正な人件費の考え方とは?

「うちの会社では、いくらまで人件費を出せるのだろうか?」

これは、多くの社長の悩みの1つです。そこで判断基準として使える指標をご紹介します。

労働分配率です。

労働分配率とは、以前にもこのコンテンツサイトでご説明した通り、「粗利に占める人件費の割合のこと」で、一般に使われる経営用語の1つです。

労働分配率=人件費÷粗利

人件費は固定費の中で最も大きな費用です。だからこそ、大きすぎず小さすぎず、適切にコントロールしていくことが大切です。

この基準値をあらかじめ決めておいて、絶対にそれを守ることをルールにしておくと、いろいろなメリットを生み出します。

まずは、自社の労働分配率が現在、何%かをはじき出してみましょう。

業種や規模によって適正ラインはさまざまですが、ざっくりとした目安として

50%~60%程度なら妥当な水準、

40%台なら良好(=生み出している粗利に対して、人件費負担が低く収まっている)、

60%以上なら危険信号(=生み出している粗利に対して、人件費負担が高い)

と考えておいてください。

「今計算してみたら、ウチの労働分配率は68%でした。確かに利益は少なくて、かろうじて黒字というレベルです。これは労働分配率が高すぎるのでしょうか?」

これだけで判断するのは早計ですが、その可能性はあります。

もし労働分配率が高過ぎるなら、スタッフが給与に見合った稼ぎ方をしていない、あるいは人が多すぎるということになります。

つまり、「会社としての生産性が低い」ということです。

「生産性、ってよく聞く言葉ですが、どういう意味ですか?」

生産性とは、簡単に言うと

「どれだけの投入に対してどれだけの成果を上げたか」

の効率のことです。

つまり、少ない投入(人手、時間、資金など)で最大の成果(粗利、利益など)を発揮できる企業は「生産性が高い企業」と評価されるわけです。

「なるほど、たしかにウチのスタッフはまだまだ行き当たりばったり的な行動が目につきます。『もっと計画的に考えて動け』といつも言っているのですが……。」

たとえば1000万円の粗利を稼ぐのに、1カ月かかる営業マンと3カ月かかる営業マンがいるとしたら、前者のほうが生産性が高いと言えます。

より少ない投入(時間)で成果をあげているからです。

また、1億円の粗利を1年間で稼ぐのに、10人のスタッフを抱えている会社と5人の会社があるとしたら、5人の会社のほうが少数精鋭で生産性が高いということです。

生産性を数式にすると、次のようになります。

生産性=成果(粗利、利益など)÷投入(人手、時間、資金など)

「なんだか労働分配率の数式と似ていますね?」

そうです!ここでお気づきかと思いますが、労働分配率と生産性は表現のしかたが違うだけです。

分子と分母を逆にしただけで同じことを言っています。

労働分配率は、会社が生み出した粗利のうち、どれだけを人件費として分配しているかを示します。

一方、生産性は、会社が投入した人件費によって、どれだけの成果(たとえば粗利)を生み出したか、を示します。

よって、生産性の高い企業は、必然的に労働分配率は低くなるのです。

そして、何度も繰り返しますが、労働分配率が50%でなければならない、ということは全くありません。

目安があったほうが理解しやすいので、たまたま50%と言っていますが、その会社の前提条件次第で、30%台が理想の会社もあれば、60%台でもOKな会社もあります。

このことを理解するために、1つ簡単なクイズを考えてみましょう。

次のA~Cの3つの会社があるとします。
いずれの会社も労働分配率(すなわち粗利に占める人件費の割合)は50%だとします。

みなさんがオーナーになるとしたら、どの会社を選びますか?

3社のうち、どれを選ぶか?

さあ、どの会社を選びましたか?

「わかった!私はA社を選びます」

自信たっぷりですね。A社を選んだ理由は何ですか?

「3社の粗利を計算してみたのです。労働分配率がすべて50%なので、A社は粗利が6、B社も6、C社は4になります」

そうですね。

「その粗利から固定費を引いたとき、A社だけが利益1が出て、B社は収支トントン、C社はマイナス1で赤字になるじゃないですか」

その通り!

A社は粗利6から固定費5を引くと、利益1が残ります。

しかし、B社は粗利6から固定費6を引くと、利益はゼロ。

C社にいたっては粗利4から固定費5を引くと利益はマイナス1で赤字ですね。

3社の収支を見ると・・・?

「なるほど。【人件費】と【その他の固定費】の構成比の違いによって、このような差が出るのですね」

そうです。たとえば、A社はコンサルタント業や歯科医院、美容院のように人の力に依存する業種の収支構造です。その分、人件費の割合が大きくなるのです。

「では、C社は?」

C社は製造業などのように機械設備に依存する業種の収支構造なので、その分、もともと人件費の割合が小さいのです。

このように業種の違いによって、コストの構成比が違う場合があります。

また、規模によって違う場合もあります。たとえば人の力に依存する歯科医院でも、チェアが3台程度の医院と、チェア10台で手術室まで完備している大型の医院とでは、「人件費」と「その他の固定費」の割合は違ってきます。

したがって、「労働分配率は50%が理想」という一般論的な数字だけを覚えても、あまり意味がないのです。

「必要な利益を生むには、労働分配率は何%以内でなければならないか?」

と発想しましょう。

言いかえれば、必要な利益がちゃんと出るなら、労働分配率は高くてもいいのです。

一般的に、労働分配率を適正に保つには、「人件費はより小さく、粗利はより大きくしよう」と考えがちです。

しかし、本当はもう1つの方向性があります。

それは「人件費はより大きく、その分、粗利はよりもっと大きく」です。スタッフと会社が共に成長・発展し、ハピネスを共有できるのはこのスタンスではないでしょうか。

さあ、キャッシュフロー経営の3つのキーワードの2つ目は、「お金の入りと出のバランスを考える」でしたね。

粗利という「入り」と人件費という「出」のバランスが自社にとっていい感じかどうか。

あくまで自社の収支構造に適した労働分配率を目指すことが重要だということは、もうおわかりですよね。

さて、人件費について考えるとき、社員の給料・ボーナスだけでなく、社長の役員報酬の設定も大切なことですね。

そこで、次にその決め方について触れていきましょう。

なぜ社長は社員の3倍以上、給料を受け取れるのか?

中小企業の社長は、会社と個人のお金の境目がきわめてあいまいなケースが多いです。

銀行借入をしようとすれば、社長の個人資産を担保にしますし、場合によっては社長が会社にお金を貸し付けることもあります。

そのようなリスクを背負っている経営者は、どれくらいの報酬をもらえばよいでしょうか?

セミナーなどで社長からよく次のような意見を聞きます。

「私はスタッフの3~4倍の報酬を受け取っていますが、少し後ろめたい気がしています」

しかしわたしは、中小企業や個人事業においては、

「社長と社員の報酬は、少なくとも3倍以上の差があってよい」

と考えています。

なぜなら、社長は以下のような複数の役割を担っているからです。

① トップセールスマンであり、会社で一番の稼ぎ頭である

② 経営者として、会社経営の舵取りをする立場である

③ さらに起業時ならびにその後も会社にお金を貸す投資家的立場である

つまり、社長は1人で3人分以上の役割を担っていることになります。

さらには、社長は起業リスクを背負っています。つまり社長が数年前に勇気を出して起業していなければ、今はないはずです。

また、その当時はおそらく多大なる苦労をしていたと思います。

起業当初は、タダ働き同然で頑張っていた人も多いでしょう。

その分を、会社が軌道に乗ってきた時点で給与として受け取ることは、正当なことだと思いませんか?

そのかわり、報酬の4分の1~3分の1程度を、万が一の時の事業貸付用に貯蓄しておくことを社長にはお勧めします。

その割合は、状況に応じて決めればよいですが、要はあらかじめお金に枠組みをつくっておくことが大切です。

そうすれば、一時的に資金が必要になっても、銀行や他人に頼らず、そこから会社に貸すことができますから、社長は資金繰りに頭を煩わされずにすむのです。

社長は会社のお金と同様、給料もドンブリ経営ではなく色分けをしておくことが大切だということです。

追伸、
なお、この記事の内容をさらに理解したい人には、拙著「お金の流れが一目でわかる! 超★ドンブリ経営のすすめ」が参考になります。

 

人件費の考え方がわかる”お金のブロックパズル”の動画です。

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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