書籍「コンサルタントの言語化力」を使ったリーダー育成の具体的ステップ
2026.06.27 執筆者:和仁 達也
コミュニケーション日本キャッシュフローコーチ協会社員研修言語化
課題図書を“読んで終わり”にしない。
クライアント企業のリーダー育成にどうつなげるか?
課題図書を配ったのに、組織が変わらない。
その原因の多くは、「読んで終わり」になっていることにあります。
では、本を「共通言語」として機能させるには、どうすればいいのか?
今回、書籍『コンサルタントの言語化力』を使った実践的な研修設計について
相談を受けました。その相談事例をもとに、具体的な進め方を紹介します。
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塾生
「和仁先生、こんにちは。今日は、課題図書として活用している“言語化力”の本を、クライアント企業のリーダー育成にどうつなげていくか、ご相談したくて」
和仁
「はい、お願いします。どんなふうに進めておられるのか、まず聞かせてもらえますか」
塾生
「今、2社で研修を進めています。どちらも社内のコミュニケーションが少しギクシャクしていて、ちょうど行動指針の見直しにも取り組んでいるところです」
和仁
「なるほど。行動指針をつくるタイミングだからこそ、言葉の定義をそろえる必要があるわけですね」
塾生
「そうなんです。まずはリーダー向けに、“言語化力”をテーマにした研修を90分で実施しました。そのあと本を使いながら“モットーづくり”や“心に残ったキーワードを20個書き出す”ワークをやってもらいました」
和仁
「いいですね。すでにリーダーのみなさんは、本の中身への関心も高まっていて、自分ごととして考え始めておられる、と」
塾生
「はい。かなり前向きに取り組んでもらえました。そのうえで今度は、社員の皆さんにも本を配って、同じような内容で進めていこうかと考えています。ただ、私が一方的に話すだけでいいのかな、という迷いもありまして」
和仁
「今回の目的は、どこに置いておられますか?」
塾生
「社内に、コミュニケーションの“共通言語”を持たせることです。
たとえば、『言葉の選び方ひとつで伝わり方が変わる』とか、『まずは相手の話を色のついていない状態で聞く』とか。そういう認識をそろえたいんです」
和仁
「でしたら、リーダーにお伝えした内容を、リーダーも同席の上で社員さんにも基本そのまま伝えるのはアリですね。むしろ、そのほうが共通言語は育ちやすいです」
塾生
「やっぱり、そうですか」
和仁
「はい。ただし、そのままやると、先に受講したリーダーの方の中には“前と同じじゃないか”と思う方が出るかもしれません。そこには意味づけが必要です」
塾生
「意味づけ、ですか」
和仁
「はい。たとえば、こう伝えます。
『今日は社員の皆さんにも、リーダーと同じ内容を学んでいただきます。リーダーの皆さんは、すでに一度このテーマに触れておられるので、今日は単なる再受講ではなく、社員さんを支える先輩役・サポーター役として参加していただいています』
こう前置きしてあげるんです」
塾生
「なるほど。それなら同じ内容でも立場が変わりますね」
和仁
「そうなんです。“もう一度聞く側”ではなく、“支える側・育てる側”になる。すると、理解の深さが変わります。人は、教える前提になると、聞き方が深まりますからね」
塾生
「それ、すごくしっくりきます。リーダーの皆さんも、うかうかしていられなくなりますね」
和仁
「ええ。しかも、せっかく一度学んでいるので、今度は事例提供者になってもらうとさらにいいです」
塾生
「事例提供者、ですか?」
和仁
「たとえば、“モットーをどうつくったか”“なぜそのキーワードを選んだのか”を、リーダーのうち2人か3人に話してもらうんです。完成形だけではなく、そこに至るまでの考え方を語ってもらう。これが、初めて学ぶ社員さんにとって、ものすごく助けになります」
塾生
「実は前回、リーダー同士では発表してもらいました。だから次回の全体研修では、その内容を少し整理して、なぜそう考えたのかまで話してもらう形にしようかな、と考えていました」
和仁
「いいですね。それはぜひ事前に伝えておいてください。“何人かの方には、前回考えたことを発表していただく予定です”と前もって伝えるだけでも、準備の質が変わりますから」
“本人に気づいてもらう”設計にする
塾生
「もう一つ相談があります。個別面談も進めていて、経営者の方とも“この方は少し課題がありそうですね”という社員さんは見えているんです。わりと、自分の考えが正しいと思い込みやすいタイプの方で」
和仁
「ありますね」
塾生
「そういう方に、直接“あなたのことですよ”とは言えませんよね。なので、全体に向けた働きかけの中で、結果的に気づいてもらえたらと思っています。たとえば『言葉の定義がズレると、こんな誤解が起きる』という話を、事例を使って全体に伝えるとか」
和仁
「とてもいいと思います。いわば“全体に伝えながら、本人の耳にも届ける”やり方ですね」
塾生
「はい。今のところ、それが一番自然かなと感じています」
和仁
「その方向でいいと思います。加えて、個別で効くやり方もありますよ」
塾生
「ぜひ知りたいです」
和仁
「本の中から気になったキーワードを20個選んでもらったんですよね。
あれ、実はかなり使えます。なぜなら、あれは本人が自分で選んでいるからです。こちらが渡した言葉ではありません」
塾生
「たしかに。自分で選んだ言葉なら、語りやすいですよね」
和仁
「そうなんです。だから、その20個について『なぜこれを選んだんですか?』と聞いていく。すると、意外なくらい素直に、自分の課題や願いを語ってくれるんです」
塾生
「こちらから指摘したわけでもないのに、ですか」
和仁
「はい。たとえば、“決めつけない”を選んだ方がいたとします。そこで『なぜこれを選ばれたんですか?』と聞くと、『自分はつい、部下に対してこうしろああしろと言ってしまうところがあるので』と、ご本人の口から出てくることがあります」
塾生
「それは良いですね」
和仁
「はい、大事なのは、そこで責めないことです。『そうなんですね』『そこをより良くしたいと思っておられるんですね』と受け止める。すると、本人の内省が深まります」
塾生
「せっかく書いてもらったシートを、出しっぱなしで終わらせたらもったいないですね」
和仁
「その通りです。むしろ、そこからが本番です」
キーワードを“行動”に落とし込む
塾生
「そこから、どう展開するといいでしょうか」
和仁
「たとえば、翌月以降は次の流れが考えられます。
まず、20個のキーワードについて“なぜそれを選んだのか”を聞く。
その次に、“この1か月で、この中から自分が特に実践してみるものを1つ選んでください”と宿題にします」
塾生
「自分で1つ選ぶ、ですか」
和仁
「はい。“まずは相手の話を最後まで聞く”でもいいし、“言い方を少しやわらかくする”でもいい。“問題”ではなく“課題”という言葉を意識して使ってみる、でもいいんです。自分で決めて、自分でやってみる」
塾生
「そして次回、結果を共有してもらう」
和仁
「そうです。うまくいったことだけでなく、やってみたけどうまくいかなかったこと、やってみて初めて気づいたことも含めて話してもらう。これをやると、キーワードが“いい言葉でしたね”で終わらず、行動に落とし込まれていきます」
塾生
「なるほど。地に足がついていきますね」
和仁
「ええ。しかも、他の人の実践を聞くことで、“そんなやり方もあるのか”と視野も広がります。ときには“あの人がそれをやるんだ”という意外性が、周囲にいい刺激を与えることもありますよ」
塾生
「たしかに。社長やコンサルが“これをやってください”と言うより、自分で決めたほうが人は動きますよね」
和仁
「まさにそこです。自分で選ぶと、腹落ちしますからね」
言葉遣いと言葉選びを分けて考える
塾生
「今後は、行動指針が形になったら、その浸透にもつなげていきたいと思っています。ある会社では接客品質が重要ですし、別の会社では現場の指示伝達が課題です。どちらも結局、“言葉”が根っこにあるなと感じています」
和仁
「いい視点ですね。言葉って、“言葉遣い”と“言葉選び”の両方がありますからね」
塾生
「その違いを、もう少し詳しく教えていただけますか」
和仁
「もちろんです。たとえば、敬語や丁寧語、謙譲語のように、“どこまで丁寧な表現で話すか”が言葉遣いです。一方で、“目的に合わせてどんな単語を選ぶか”が言葉選びですね。どちらも大事です」
塾生
「なるほど」
和仁
「たとえば、“問題があります”と言うのか、“課題があります”と言うのか。同じように見えて、受け手の気持ちはずいぶん変わります。問題という言葉は、どうしてもマイナスの響きが強い。課題と言うと、“これから取り組めること”という前向きさが出やすいんです」
塾生
「たしかに、現場の空気まで変わりそうです」
和仁
「そうなんです。だから、“うちの会社らしい言葉選び”と“うちらしくない言葉選び”を話し合うのもいいですよ。よく使う言葉なのに、実は人によって意味がバラバラな言葉って、たいていありますから」
塾生
「たとえば、“任せる”みたいな言葉ですかね」
和仁
「まさにそれです。ある人にとっては“自由にやっていい”で、別の人にとっては“中間報告も含めて当然”だったりする。こういうズレが、誤解や不満を生むんです」
塾生
「言葉の定義をそろえる場をつくる価値は大きいですね」
和仁
「はい。ここまで来ると、単なるリーダー研修ではありません。組織のOSを整える取り組みです」
“やり方”と“意味づけ”はセットで伝える
塾生
「もう一社は、専門性の高い業界なんですが、ベテランと若手の知識量の差が大きいんです。すると、ベテラン側は“これくらいわかるでしょ”という前提で話してしまい、若手は意味がわからないまま動くことになってしまいます」
和仁
「ありますね。知っている人ほど、説明を省略してしまうんです」
塾生
「そうなんです。“こうしておいて”と指示は出る。けれど、なぜそうするのかという意味づけがない。だから、言われた側は、使われている感じになってしまう」
和仁
「それなら、“やり方と意味づけは2つでセット”という一点に絞って伝えるのが有効かもしれませんね」
塾生
「一点集中、ですか」
和仁
「はい。コミュニケーションギャップって、かなりの割合で“言葉足らず”から起きています。だから、“指示そのもの”ではなく、“相手の理解度を想像する力”を育てるんです」
塾生
「どうやって、そこに気づいてもらうといいでしょう」
和仁
「たとえば、ちょっとしたロールプレイやイメージワークです。『では今から、部下の立場に憑依したつもりで考えてみてください』と。上司が普段の言い方をそのまま口にしたあとで、『その情報量で、本当に相手は理解できますか?』と想像してもらうんです」
塾生
「それは効きそうですね」
和仁
「はい。こちらが“それでは伝わりませんよ”と指摘するより、自分で『あ、これでは伝わらないな』と気づいたほうが、納得感が強いです」
課題図書は“読む本”ではなく“共通言語を育てる道具”
塾生
「だいぶ整理できました。次回は、社員向け研修にリーダーにも参加してもらい、先輩役・サポーター役として意味づけをしたうえで、何人かには事例発表もお願いする。そして、キーワード20は個別面談や次回の実践課題につなげていく。そんな流れで進めてみます」
和仁
「いいですね。かなり筋が通ってきましたね」
塾生
「ありがとうございます。あとは工程表を出して、どのタイミングで何をやるかも見える化していこうと思います」
和仁
「それも大事です。先が見えると、参加する側も安心します。しかも“今はここをやっているんだ”と意味がわかると、取り組み方が変わります」
塾生
「はい。今回の本の活用も、単発で終わらせずに、行動指針の浸透や人材育成につなげていきたいです」
和仁
「ぜひそうしてください。課題図書って、本を読ませることが目的ではないんです。組織の中に、共通言語を育てるための“きっかけ”なんですよ」
塾生
「本を配って終わり、研修をして終わり、ではないということですね」
和仁
「その通りです。そこから対話を生み、言葉をそろえ、行動に落とし込んでいく。そこまでつながって、初めてクライアント企業への貢献になります」
塾生
「焦らず、一歩ずつですね」
和仁
「はい。むしろ、この“言葉をそろえる営み”そのものが、組織を整えていきますから」
塾生
「今回の進め方で、だいぶ見通しが立ちました。ありがとうございます」
和仁
「いいですね。今回の設計で特にいいのは、“正解を教える”のではなく、相手が自分で気づけるようにしているところです。人は、言われたことより、自分で気づいたことのほうが変わりますからね」
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本を使った研修というと、つい「何を教えるか」に意識が向きがちです。
けれど、本当に組織が変わるきっかけになるのは、
「どんな言葉で対話するか」
「その言葉を、どう日々の仕事に落とし込むか」
という部分なのだと思います。
共通言語が生まれると、すれ違いが減り、関係が変わる。
そして、関係が変わると、組織は動き出す。
課題図書を“読んで終わり”にしない。
本をきっかけに、対話を生み、言葉をそろえ、行動に落とし込む。
それが、キャッシュフローコーチがクライアント企業に貢献できる、ひとつの実践的な関わり方ではないでしょうか。
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