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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

パートスタッフへの不満の出ない役職手当の考え方

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2019.07.03 執筆者:和仁 達也

「リーダーにしたいスタッフは、正社員でなければいけないか?」

パートスタッフに社員よりもチーフに適した人材がいて、そスタッフに社員で適性者が現れるまで、チーフを頼みたい!

と考える会社もあると思います。

その際に、悩むのが報酬ですよね?

パートさんに役職をつける時に、時給をアップしても社員に適任者が現れたらパートさんの時給を下げてしまうことになると不満が出てしまうのではないか?など報酬に対して慎重になってしまうと思います。

そこで、この記事ではパートスタッフの時給を変えずに報酬アップする方法を解説しています。

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ホワイト歯科では、数年前にスタッフの入れ替わりが重なったが、ようやくこの1年ほどで定着し、それぞれの役割も見え始めてきた。そこで、そろそろ衛生士や助手をとりまとめるチーフを任命したいと加藤院長は考えていた。

ただ、1つひっかかることがあった。それは、チーフ候補にふさわしいスタッフが、常勤の正社員ではなく、週4日勤務のパートスタッフである点だ。

院長室のチェアにどかっと腰を下ろし、しばらく天井を見上げながら考えていると、ドアをノックする音が。定期面談の約束をしていたキャッシュフローコーチの和仁が顔を出した。

加藤院長はチーフ任命についての事情を話すと、キャッシュフローコーチは話を整理し始めた。

「なるほど、院長の評価としては、パートスタッフの鈴木さんがチーフ候補にぴったりなんですね。ただ、診療日の土曜日は休みで不在なので、その日の患者さんの管理ができない点が気にかかる、と」

加藤院長はうなずきながら、付け加えた。

「そうなんです。彼女はスタッフからの信頼も厚いし、患者さんの評判もいいんです。だから、正社員ではなくてもチーフとして務まると思うんですよね。ただ、以前にそれとなく『まとめ役をやる気はないか?』と尋ねたら、『そう言っていただけるのはありがたいのですが、そういう役割は、正社員のほうがいいのではないでしょうか』と言っていました。

理由を尋ねると、彼女が不在の診療日の連絡や情報が行き渡らないことで、他のスタッフや患者さんに迷惑をかけるのが不安なんだそうです」

キャッシュフローコーチは彼女の意欲について質問を投げかけた。

「鈴木さんは小さなお子さんがいるので、土曜日は仕事ができない、ということでしたね。でも手がかからなくなれば、近い将来、フルタイムで働く気はあるのでしょうか?
また、チーフに就任することで報酬が上がるとしたら、それを望んでいる感じはありますか?」

「はい、本人もできればフルタイムで働きたいようですし、扶養家族内でお小遣い稼ぎ、というのではなく、できることなら収入を増やしていきたい、ということは言っていました。ただ、、、」

「ただ?」

キャッシュフローコーチが問い返すと、院長は漠然と抱えていた不安を口にした。

「チーフをやってもらう条件で、時給をアップさせようか、とも思ったのですが、彼女が常勤になる時期が確定できないので、それを待っている間に他にチーフにふさわしい正社員のスタッフが現れたら、鈴木さんをチーフを外して、同時に時給も下げることになりますよね。

チーフを外すことは納得してくれるとして、一度あげた時給を下げるのは、モチベーションが下がるんじゃないかと心配で」

「なるほど、よくわかりますよ。一度上がった給料は既得権みたいなもので、今後もそれを維持できる、という感じになりがちですからね。ところで、ちょっと確認させてください」

キャッシュフローコーチは院長の真意を察すると、紙を取り出し、現状の給料と院長の考えかたについていくつか質問を続けた。

● 鈴木さんの時給は現状、1,100円。
よって月給は、現状、1,100円×1日8時間×月16日=月140,800円。

●時給はチーフをやってくれるなら、1,350円まで時給を引き上げても良い気持ちが
院長にはある。ただ、あげた後に下げることがひっかかる。かと言って、チーフから外れて
からも1,350円を払い続けるのも抵抗がある。

しばらく沈黙があった後、キャッシュフローコーチが口火を切った。

「時給アップの幅は250円ということですね。鈴木さんは1日8時間働いているわけですよね。ということは、チーフをやってくれるなら、1日あたり250円×8時間=2,000円の報酬アップをしても良いということになります。
だったら、この2,000円をチーフ手当として日当を払うというのはどうでしょうか?」

加藤院長は、ハッとした顔で大きくうなずいた。

「なるほど、時給アップじゃなくて、チーフ手当を日当でつける、ですか。それならチーフを外れたときに、”時給が下がる”わけじゃなくて、”チーフ手当が外れる”、という明快な形になるので、報酬が下がっても納得しやすくなりそうです」

「もちろん、先に説明しておく必要はありますけどね。『将来的にチーフを他のスタッフに任せることがあったら、チーフの責任と役割は減る代わりに、チーフ手当もその人に移ることになるよ』と」

加藤院長はさらに続けた。

「たしかに。あと本音で言えば、鈴木さんには早く土曜日も出勤してもらい、できればフルタイムの正社員になってもらいたいんです。その点、このやり方なら、土曜日も出勤する動機が生まれますね。なにしろ、月4回多く出勤することで、通常の給料以外に2,000円×4日=8,000円のチーフ手当がもらえるわけですから」

キャッシュフローコーチはうなずきながら答えた。

「そういう副次効果もありますね。あとは念のために、このやり方で問題がないか、社会保険労務士のチェックは受けてからスタートしてくださいね。あと、土曜日の不在時のフォローは、新人スタッフの伊藤さんにサポートさせてはどうでしょうか?」

「それはいいですね。伊藤は鈴木のことを尊敬しているし、『チーフと接触頻度を増やして、人として衛生士として学びなさい』と伝えておきます」

30分前のモヤモヤがきれいに晴れ渡った院長は、さっそく鈴木を院長室に呼びいれた。

 

【今回のレッスン】

◎ 役割を追加して報酬をアップするときは、時給や基本給をアップするのではなく、その役割に対しての手当を追加する方法もある。

◎ 場合によっては、それにより、既得権を避けられると同時に、出勤日数を増やす方向に力学が働く効果も得られる。

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎週3勤務のパート・スタッフが常勤化するには?スタッフが増員しても医院の利益を圧迫しないシナリオづくり

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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