なぜ歯科医院は、歯ブラシを真剣に売ろうとしないのか!? 物販収入に力を入れる前に、気をつけるべき落とし穴とは?
2018.08.16 執筆者:和仁 達也キャッシュフロー経営売上アップ生産性向上
先月の経営会議で、「歯ブラシや歯磨きなどの【物販】に本腰で取り組もう!」と決断した加藤院長。あれから1か月が経ち、再びキャッシュフローコーチの和仁が院長室にやってきた。
「いや~、和仁さん。実はあれからまだ、物販に取り組むことに躊躇していて、何も手をつけていなかったんです…」
加藤院長は、少し後ろめたそうな表情で、正直に伝えた。
キャッシュフローコーチはソファに腰をおろし、うなずくと、意外な言葉を口にした。
「わかりますよ。多くの歯科医院で物販が進んでいないのには、ワケがあるんです」
そこには、おもに4つの理由があるという。そして、それを紙に書きだした。
「なるほど~、わたしはすべて当てはまるような気がします。だから、理屈ではやりたいと思っても、行動に移れなかったんですね」
加藤院長は納得した。キャッシュフローコーチは続けた。
「でも、実はここには、“院長の誤解”が潜んでいると、わたしは思っているんです」
そう言うと、先ほどのメモに、その理由を書き加えていった。
加藤院長は、メモをまじまじと眺めながら、つぶやいた。
「たしかに、もともとウチは物販収入はゼロに等しくて、収入源としてアテにしていなかったわけだから、仮に粗利の半分をスタッフに還元しても、医院は痛くもかゆくもないなぁ。むしろ、粗利の半分が医院の利益になる分、メリットが大きいというわけか」
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キャッシュフローコーチは言葉を加えた。
「そうです。さらに、販売を促すのはスタッフ自身ですから、粗利の一部を還元されることの納得感も高いですよね。院長、スタッフ双方にとって。ただ、院長、2つ気をつけなければならない落とし穴があるんです」
「落とし穴がある」と聞いて、院長は思わず顔を上げた。
「1つは、あくまで歯科医院はモノ売りではなく、“処方してあげて、必要なものを提供してあげる”が原則です。それを、スタッフを過剰に煽って、『とにかく、売りまくれ!その分、ボーナスをはずむから!』みたいにやっちゃうと、医院の信頼性に問題が出ます。そのあたりの意図をちゃんとスタッフに伝えて、共通の認識でスタートすることです。
そしてもう1つ。それは、在庫負担です。販売する商品アイテムが増えれば増えるほど、在庫が増えます。それは、お金が眠ることを意味するので、資金繰り面で支障をきたさないよう、はじめはアイテムと数量を必要最小限から始め、売れ始めてから徐々に増やしていく、というような段階的なアプローチが必要です。また、鮮度が必要なモノや流行りモノで陳腐化しやすいモノの場、賞味期限切れのリスクもあるので、在庫管理が必要です。
でもそれらを予めわかって取り組めば、低リスクで収益が見込め、患者さんにも喜んでもらえるんですから、やらない手はないと思いませんか?」
「たしかに!」
無意識に抱えていた漠然とした不安がすべて表面化したことで、加藤院長は迷いがふっきれたようだった。
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今回のレッスン
◎物販に力を入れるときは、スタッフにその意味合いをきちんと理解してもらい、モノ売りではなく処方してあげるという認識を共有しよう。
◎物販には、「在庫負担」が伴い、資金を眠らせることになる。したがって、いきなり多品種・大量仕入れをするのは避け、段階的に広げていこう。