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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

目標達成の肝は、“成功要因”と“阻害要因”の両方を明らかにすること。

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2023.01.15 執筆者:和仁 達也

目標達成を考えるときは、まずは達成のための“成功要因”と
それを邪魔する“阻害要因”の両方をあきらかにすることが必要です。

時に、“阻害要因”を取り除くだけで目標を達成できることもあります。

だからこそ、具体策を掘り下げる前に、全体像を俯瞰で
観察するようにしたいものです。

それによって、“見落としている盲点”に気づけることがあります。

そんなことに気づかされる、歯科医院の事例をご紹介します。

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ホワイト歯科の新年度初の院内ミーティングを明日に控えて、
加藤院長は、朝から悩んでいた。

今年の抱負やアクションプラン、キャッシュフロー計画表も完成し、
あとはその概要をスタッフと共有するだけなのだが、
加藤院長は1つ、気にかかることがあった。

それは、「スタッフにどう伝えれば、
“やらされ感”ではなく、ポジティブに
数値目標を受け取ってくれるか?」だ。

今のホワイト歯科の収支構造は、そこそこの黒字ではあるが、
納税と借入金の返済をするとちょうどゼロ、つまり
キャッシュフローベースで収支トントンの状況。

もし一定の設備投資をしようものなら、その分は
マイナスになるため、新たな借入を必要とするレベルだった。

自費診療や物販収入の割合も年々増えてきており、
全体としては着実に成長している。

ただ、それにあわせてスタッフも増員しているため、
新年度は相応に“基準の引き上げ”が必要になる。

具体的には、「1日の来院患者数が60人以上をクリアすること」が、
新年度の目標数値だった。

ちなみに前年度は、1日平均56人。つまり、
「新年度は1日平均4人増が必達目標」となる。

この「1日60人の達成」が根拠ある数値目標であることを伝え、
そしてそれを「達成しよう!」という気持ちになってもらうために、
どう伝えればいいか、に考えあぐねていた。

「このまま一人で考えていても、堂々巡りだな」とつぶやき、
その晩に予定していたキャッシュフローコーチの和仁との
コンサルティングで相談することにした。

午後の診療が終わり、キャッシュフローコーチが院長室にやってきた。

キャッシュフローコーチはさっそく状況を確認すると、
いくつかの質問を加藤院長に投げかけた。

Q1、1日60人の目標達成のために、どんな条件が整っている必要がありますか?

Q2、その目標達成を阻害する要因があるとしたら、それは何ですか?

Q3、その阻害要因を取り除くために、医院として何ができて、スタッフに何をして欲しいですか?

Q4、目標達成に向けて、スタッフたちが見落としている盲点があるとしたら、何ですか?

Q5、この目標を達成すると、スタッフや医院にとって、どんなすばらしいことが待っていますか?

明日に院内ミーティングが控えている加藤院長は、
この質問1つ1つを真剣に考え、答えを出していった。

Q1、1日60人の目標達成のために、どんな条件が整っている必要がありますか?

「もともとできる限りのマーケティング策はやってきました。
新しい取り組みとしては、新規の患者さんが今で月間10人程度だが、
これを1.5倍に引き上げることが必要です。

そのために、スマホで検索して当院にたどり着く動線を、
専門家の協力を得て研究しています。

あとは、受付のアポイントの取り方が余裕があり過ぎるので、
受付と衛生士の連携をうまくやって、空きのないアポの入れ方が
できれば、1日60人は決して無理な数字ではないと思います」

Q2、その目標達成を阻害する要因があるとしたら、それは何ですか?

「問題はそこですよね。結局のところ、アポの入れ方の
鍵を握るのが衛生士長の佐藤なのですが、彼女が
『これ以上タイトなアポの入れ方をすると、患者さんを待たせてしまう』
と思い込み、ゆるいアポの入れ方を受付スタッフに指示しているのです。

その理由は2つ。

『患者さんを待たせてクレームになるのを避けるため』という、“
医院の利益を損ねないため”が1つ。そしてもう1つは
『アポをギュウギュウに入れて忙しくなると、スタッフから
文句を言われるのが嫌だから』という“自分を守りたいため”です」

Q3、その阻害要因を取り除くために、医院として何ができて、スタッフに何をして欲しいですか?

「新たなスタッフを採用して増員すれば、
アポの入れ方は解決するんです。

ただ、採用の募集活動は積極的にやってはいますが、
なかなか理想のスタッフが見つからない。

また正直なところ、そもそも今いるメンバーの仕事の仕方に
無駄が多く、まだまだやれる余地があるので、
安易に人を増やすことで対処するのはちょっと違う気がするんです。

もっと生産性の高い仕事の仕方を身につけて、
筋肉体質な状態にしてから増員した方が、利益を生み、
それをスタッフたちにもボーナスや休暇として還元できるのですから。

なので、衛生士長がスタッフから文句を言われることが
ないよう、『新年度、この数値目標を目指す理由』を
院長の私がスタッフにちゃんと伝えると共に、
『みんなで衛生士長を盛り当てながら、生産性アップを
目指して欲しい』旨を伝えることが大切ですね」

Q4、目標達成に向けて、スタッフたちが見落としている盲点があるとしたら、何ですか?

「これは、他の歯科医院の話を聞いていて気がついたのですが、
他所では診療時間が終わっても残務整理などで
1−2時間の残業が当たり前にあったり、有給をちゃんと
消化できない中、当院は残業は一切ないし、休みも積極的に確保している。

それができるのは、他所の医院よりも多めにスタッフを
雇用しているからであり、『生産性の高い診療』を
追求しているからこそです。

もちろん医療人として、丁寧な診療は大切なことだが、
『丁寧だから、スピードが遅くていい』訳じゃない。

もしこれを諦めるなら、日曜日や祝日もシフトを組んで
交代で出勤することになる。

しかし、休日は家族と過ごしたい彼女たちは、
それはやりたくないと言うでしょう。

当院が、そういうことがなくてもやっていけるのは、
『生産性の高い診療』を目指すからです。
そのことに気づいてもらいたい」

Q5、この目標を達成すると、スタッフや医院にとって、どんなすばらしいことが待っていますか?

「スタッフの増員をせずに、1日60人を達成できれば、
利益の余裕が生まれ、スタッフのボーナスや休日の取得も
さらに融通が利くようになります。

他のスタッフに対して罪悪感なく、連休をとって
旅行に行くこともできるでしょう。

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「そうか!スタッフが望む状態を手に入れたければ、
自分たちでつかみとることが必要で、その条件が
“1日60人の達成”であることを、この流れで
伝えてあげればいいんですね!」

ここまでのやりとりを経て、加藤院長は、
スタッフに伝えることの骨格が見えてきた気がして、
晴れやかな表情になった。

 

【今回のレッスン】

◎目標達成を考えるときは、達成のための“成功要因”と
それを邪魔する“阻害要因”をあきらかにすることが必要。

◎時に、“阻害要因”を取り除くだけで目標を達成できることもある。
だからこそ、具体策を掘り下げる前に、全体像を
俯瞰で観察するようにしたい。それによって、
“見落としている盲点”に気づけることがある。

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎大きすぎる目標を設定して動き出せない時には目標を細分化して、日常になじませることが必要

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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