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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

突然の入社希望、実力のある非常勤ドクターを採用するか否か?お互いが納得の上で決断するために、前提条件を整えよう!

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2025.06.15 執筆者:和仁 達也

 

人の採用はタイミングが重要。
人不足の時には応募がなく、人が足りている時に限って
応募が来たりする。人不足に備えて採用したいが、
「人件費負担をどう考えるか?」がひっかかる。

今日はそんな時の考え方を歯科医院の事例で紹介します。

********************************

ホワイト歯科に「非常勤で雇ってほしい」という若手のドクターが現れた。
加藤院長はそのドクターを採用するかどうかで迷っていた。

今現在はスタッフの体制は整っており、急いで補充する必要は無い。
ただ、半年後に勤務医の独立を控え、人の入れ替わりや
その教育でしばらくはバタバタするだろうことは気にかかっていた。

そんな矢先の入社希望とあり、
「いなくても大丈夫だが、いてくれたら助かるかも知れない」
という微妙なところだった。

その非常勤希望のドクターは30歳で、
今は別のクリニックで主力として活躍する即戦力。

5年後をめどに独立を考えているが、今はまだ
ドクターとしての経験と実力をつけていきたい時期で、
歯周病に強い当院のノウハウを学びたいので、
週1〜2日で働きたいとのこと。

人が足りない時だったら即決で採用したであろう、優秀な人材だ。
しかし、今勤務しているクリニックで受け取っているほどの
給料を当院が支払う理由はなく、それどころか
仮に採用しても、当面は人がダブついて遊ばせてしまうのでは
ないかと言う不安もあった。

それは、当院としても人件費負担となるし、彼にとっても
「経験が積めると思ったのにヒマ過ぎて、思っていたのと違う!」
と落胆することになるかも知れない。

 

「今雇うとしたら、週1〜2日で木曜日か土曜日に勤務してもらい、
お試し期間は日給2万円。
通常勤務になったら日給3万円までだろうな。

でもそれだと今彼が受け取っている給料と比べて
かなり時給は下がるはず。それでも彼がウチで経験を積み
専門技術を身につけたいというならアリな気がする。

当院としても彼が独立するまでの5年間は何かと戦力として心強い。
でも、当面は人余りでやりがいを提供できないかも知れないし、、、。」

そんな葛藤をしている旨をキャッシュフローコーチの和仁に
相談すると、さっそく思考整理のセッションが始まった。

「加藤院長の葛藤を整理すると、こんな感じでしょうか?」

 

*******************************

・他の医院で実力もあり意欲もある非常勤ドクターが入社を希望している。

・当院設定の日給、指定曜日の出勤でOKなら採用したい。

・気がかりは「当面は人は揃っているので、遊ばせてしまう不安」があり、
日給も低めになること。報酬の面、やりがいの面でモチベーションは大丈夫か?

*******************************

 

ホワイトボードに書き出すと、キャッシュフローコーチは院長に尋ねた。

「これら以外に気がかりなことはいかがですか?」

しばらくホワイトボードを眺めると、
加藤院長はふと思いついたことを口にした。

「ゼロベースで当院の理想考えると、素直な新卒で、
ウチ色に染まってくれるドクターを採用したいんですよね。

もし今、ここで彼を採用した場合、近い将来
その人が現れた時に、それこそ人余りで雇えないという
”機会損失”が起きるんじゃないか?

と言うのも大きなひっかかりでして。
もちろん、そんな人が現れる保証は無いので、杞憂かも知れませんが」

さらに、話を続けた。

「とは言え、今いるドクターの中で突然退職する人が出ないとも限らない。

今までも突然の退職でバタバタした経験は何度もあり、その度に
『常に余裕のある体制を整えておかなくては』
と思ってきたんですよね。

”喉元過ぎれば熱さ忘れる”にならないよう、
ここは人手を厚くする機会なのかも知れません」

その院長の言葉を受けて、キャッシュフローコーチは1つ問いかけた。

「加藤院長、非常勤ドクターの日給についてご確認したいのですが、先ほど
『お試し期間は日給2万円、通常勤務になったら日給3万円まで』
とおっしゃいましたね。

これは前提が
『当院が元々、十分な人手がある状態(=新たな収入を生まない)』
だと思います。

これが、もし院長が危惧される様に、突然の退職や
出産などによる長期の休業などで
『人手が足りない状態(=新たな収入を生む)』
だったら、日給はいくらまで支払えますか?」

加藤院長はハッとした表情で答えた。

「それなら日給4万円は支払えます。なるほど、

『A.お試し期間は2万円、B.通常勤務は3万円、C.人手が必要な状況は4万円』

と3段階あることを予め伝えた上で、
当面はAとBまでを想定している旨を伝えれば、
より正しくこちらの意図が伝わりそうです。

あと、今思い出しましたが、
来年の春に新しいドクターの採用を予定しているので、
彼がわたしの代わりに診療に入ってくれれば、
わたしが新人の教育に時間をかけられます。

院長の代わりの診療をするとなればそれなりの貢献になるので、
その時はやりがい的にも報酬的にも相応のものが与えられそうです」

キャッシュフローコーチは笑顔で答えた。

「たしかにそうですね。つまり、

仮に実力のあるスタッフを雇うにしても、
受け入れ側の医院の状態によって、その価値は変動するし、
支払える報酬の予算も変動する

ということですね。それをちゃんと予め共有した上で、
それでも本人が『専門分野の経験と実力をつけるために、
その条件で働きたい』と言うのであれば、お互いに納得の上で決断でき、
よい関係性を築けるでしょう」

加藤院長はさっそく考えを整理して、本人に伝える準備にとりかかった。

 

【今回のレッスン】

◎スタッフを採用する際には、スタッフ側の目的や背景、
および医院側の前提条件の双方を予め整理しておく。
◎仮に実力のあるスタッフを雇うにしても、受け入れ側の医院の状態によって、
その価値は変動するし、支払える報酬の予算も変動することがある。

 

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎ドクターを雇っても、医院の資金繰りを圧迫しないためには?事前に計算しておきたい、たった1つのこと

 

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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