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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

丁寧だけどゆっくりすぎるスタッフの生産性を上げるには? やり方と意味づけは2つでセット。

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2025.07.15 執筆者:和仁 達也

 

会社や医院の業績向上において、生産性向上は重要です。

そこでスタッフに仕事の生産性を求めたくなりますが、
そこで「やり方の改善」を求める前に、伝えておくべき大切なことがある。

それを歯科医院の事例でお伝えします。

******************************

ホワイト歯科のスタッフは医院の理念に沿って診療に当たっており、
加藤院長はそれも心強く思いながら日々過ごしている。
そんな加藤院長にも悩みがあった。

それはスタッフによって診療スピードの差が大きいことだ。

とりわけ歯科衛生士の中でも中堅にあたる鈴木(仮名)は
患者のウケも良く丁寧な診療ができるのだが、
その分時間がかかりすぎる傾向があった。

その姿を見ている後輩もその影響を受け、やはり過剰に
時間をかける傾向がある。

加藤院長としてはもう少しスピードを上げるよう促したいところだが、
遠慮してそれを言えずにいた。

それは自身がかつて勤務医だった頃に、当時の院長が
スタッフの仕事の遅さを指摘してスピードを上げるよう求めたところ、
そのスタッフが「結局はお金儲けですか!?」と
過剰な反発をしている姿を見ていたからだ。

今回の鈴木も同じようなリアクションをするかもしれないと思うと、
気にはなっていてもなかなか指摘できずにいた。

そこで今月のキャッシュフローコーチの和仁とのセッションでは
その対策について扱うことにした。
キャッシュフローコーチは相談のお題を確認すると、話を整理した。

「加藤院長が懸念しているのは、

『診療のスピードアップを求めると、それで多くの患者さんを
診療できるのは良いが、質を下げてまで儲けようとしている、
との誤解を招くのではないか』

と言う不安ですね。
今回の相談内容のカギは、一言で言うとこれだと思います」

キャッシュフローコーチはホワイトボードに1文を書きとめた。

「やり方と意味づけは2つでセット」

キャッシュフローコーチは話を続けた。

「院長が鈴木さんに求めていることは経営者として
当然のことだと思います。医療の業界であれどの業界であれ、
プロは適切で丁寧な仕事を素早く行うことで適正な利益を生みます。

その利益は経営者が私腹を肥やすために追求するのではなく、
医院を永続的に発展させ雇用を守るために行っているとも言えるでしょう。

その点が抜け落ちて、目先のお金儲けに走っているとの
誤解を与えてしまうのは心外ですよね」

加藤院長は大きくうなずいた。キャッシュフローコーチは続けた。

「そこで今回、鈴木さんに限らずスタッフ全員と共有したいのは、
適切で丁寧な診療をしながらもスタッフの生産性を上げることが
もたらす”意味”です。

例えば次のような話をしたとしたらどうでしょうか。

『これから当院は、今までと同等以上に適切で丁寧な診療を
行っていきます。と同時に、医院が永続的に発展し
みなさんの雇用を守るためにも、生産性のアップも同時に
追求することが必要です。

その意味は何だかわかりますか?
(ここでスタッフのリアクションを確認したり、
何人かに問いかけても良いでしょう)

我々が生産性を上げる理由は、より多くの患者さんを救う
ことができるからですが、それはいくつかの意味をもたらします。

多くの患者さんを診ることができれば、
医院としては経営が安定し雇用を永続することができます。

またスタッフが家庭の事情などで急用があったり、
コロナ等のような不測の事態があっても、無理せず安心して
休みにするという判断もできるでしょう。

お金に余裕がなければ、収入を減らす決断は難しくなりますからね。

また生産性が向上すると、患者さんを待たせないというメリットももたらします。
今だと2〜3週間以上先でないとアポが取れないこともありますよね。

また、基本的に歯科医院に来られる方は、痛みを和らげたり
痛い思いをせずに済むために来られるわけですよね。
その望む結果が得られるのであれば、診療時間そのものは
短い方がうれしいでしょう。
空いた時間を仕事やプライベートに充てることができるわけですから。

さらに当院の今後の方針においても、生産性向上には大きな意味があります。
みなさんも承知の通り、当院は
“価格は安いが素材と診療技術に制約のある保険診療”よりも、
“相応の価格にはなるが納得の素材と診療技術を提供できる自費診療”
をお勧めしていますよね。

それが患者さんに伝わるには、説明に十分な時間を割く必要があります。
手際が良くなり時間にゆとりが生まれれば、
その説明に時間を割くこともできます。

それはすなわちスタッフのみなさんのやりがいにもつながるでしょう』

・・・と、このように生産性を上げる具体策の前に、
生産性を上げる”意味”を共有すると言うのはどうでしょうか?」

加藤院長は大きく頷きながら答えた。

「なるほど、そこですね。話を聞いていて気がついたのは、
私はいつも意味を伝えるのをおろそかにしていた気がします。

どのようにやるかを丁寧に伝えることにばかり気が向いて、
肝心な目的や意味は言わなくてもわかるだろうと思い込んでいました。

でも、人によって捉え方は様々なので、
ちゃんと言葉にして伝えることが大切なんですね」

キャッシュフローコーチは微笑みながら話を続けた。

「それは大きな気づきですね。スタッフに対して改善策や
やり方の話をする前にまず大切なことは、
意味を整えて共有することです。

その上ですぐに改善策ややり方の工夫に話を持って
いきたくなりますが、そこも注意が必要です。

なぜなら、現状の認識も人それぞれバラバラなことが多いからです。
よってまず、現状を正しく把握すること。
そして次に理想や目標を決める事が必要です。

そのためには現場を正しく捉えるための計測が必要ですね。
今回で言えば1人あたり何人の患者さんを診たか、
カウントして記録を残していくことでしょう。

次に理想を決めること。これは本人の意思と院長の方針を
すり合わせて決めたいところですね。

その上でまず自力でどうすれば良いかを考えさせます。
その上で求められた形でアドバイスをするのであれば良いでしょう」

加藤院長は納得した表情でうなずいた。

「なるほど、以前の私は現状を正しく把握することと
自力で考えさせることを飛ばして、いきなり上から
アドバイスをしていた気がします。

自分の中では答えがわかっていると思い込んでいたから、
つい先走っていたのですね。

ステップを踏むことで本人の納得感も高まり、
行動しようと言う意欲にもつながると思います」

 

【今回のレッスン】

◎人によってとらえ方は様々なので、ちゃんと言葉にして
 伝えることが大切。
◎やり方と意味づけは2つでセット。
 生産性を上げる具体策を語る前に、生産性を上げる意味を整えて、
 共有しよう。

 

 

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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