スタッフが10人を超えた頃から表面化する課題。 給料と評価は連動すべきか?
2026.03.15 執筆者:和仁 達也
キャッシュフローコーチキャッシュフロー経営人件費着眼点
会社を立ち上げてしばらくの間、社員が数人の頃は、
社長の目が全体に行き渡り、接触頻度も評価も最適にできていた。
ところが10人を超えたあたりから、社員との接触頻度は減り、
業務も多岐に渡り、適正な評価が難しくなる。すると、
「成果を出しても評価されていない」という不満が表面化し、
「頑張っても頑張らなくても、報酬が変わらない」というネガティブな
ムードになることがあります。
そんな時に、「どう考え、何から取り組むか」について
歯科医院の事例でお伝えします。
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ホワイト歯科は当初チェア3台、スタッフ4人でスタートし、
患者数の増加から順調に規模を拡大してきた。
今ではスタッフは10人を超え、中にはチーフや歯科衛生士長など
リーダーの役割を担う人も出てきた。
そんな中、加藤院長にとって今の課題は
「やる気を引き出すスタッフの評価の仕方」だった。
今までは院長の判断で個別にスタッフの評価をしてきた。
スタッフが数人のうちは全員に目が行き届いていたことから、
その評価も妥当性があったし、
「自分がちゃんと評価されているのか?」
という問題そのものが顕在化していなかった。
ところが、10人を超えたあたりから
院長とスタッフの距離感が徐々に広がっていった。
一部のスタッフからは「自分はきちんと評価されているのか?」
と疑問に感じている気配もある。
他の医院では、
「スタッフの仕事の中身や勤務姿勢などを評価し、
それを給料やボーナスと連動させている」ところもあると聞く。
当院でも、そろそろスタッフの評価の仕組みを作り、
それに応じた給料やボーナスを支払う必要があるのではないかと考え始めていた。
一方で、加藤院長には不安があった。
どこまでいっても、人の評価に絶対的な正解はない。
ある側面から見れば正解でも、逆の側面から見れば
不正解ということもあり得る。
例えば、「患者様にとって良かれと思って、
長い時間をかけてゆっくり丁寧に説明すること」が、
一方では「医院の生産性を落として業績を押し下げる」というように。
そう考えた時に、「スタッフを客観的な視点で、
納得感のある評価をすることは大切だが、それによって
生活に直結する給料やボーナスがアップダウンすることが、
果たして本当に良いことなのか?」との疑問を払拭できなかった。
そこで、今月のキャッシュフローコーチの和仁との定例ミーティングは、
この点について考えを整理することにした。
ことの経緯を聞くと、キャッシュフローコーチは加藤院長に尋ねた。
「確かに、成果連動型の給与制度にしたときに、かえって
ギクシャクして院内に不満が噴出して元に戻した、という事例は聞きますね。
納得感のある評価ができれば良いのですが、そこに問題があった場合、
そこを不満に感じたスタッフのモチベーションが下がると言うことです。
また、
「院長にどう評価されているのか」にばかり
フォーカスが向き過ぎて、自分の成果
(例えば、診療人数)優先で個人プレイに走ってしまう
ケースもあります。
すると、仲間を陰で支えることがおざなりになり、
チームとしての連携が取れず、結果として患者さんへの対応が
雑になったり、スタッフの雰囲気が悪くなったりするのも懸念するところです。
そこではじめの一歩として、
『ひとまずお金と評価を分ける』ところから、手をつけてみるのはどうでしょうか」
加藤院長は尋ね返した。
「お金と評価を分けるとはどういう意味ですか?」
キャッシュフローコーチは続けた。
「納得感のある評価の基準づくりに着手するのですが、
それを給料やボーナスに連動させるのではなく、あくまで
『スタッフの望ましい成長のためにどんな視点が大事かを言語化する』
に、一旦とどめておく、と言うことです。
それが出来上がった際に、その評価基準をもとに定期的な面談をして、
本人の自己評価と上司の客観評価のすり合わせをして成長を促進します。
そのような面談の場は持ちながらも、
『その評価の中身は給料やボーナスとは、当面は連動させない』
ことを明言しておくのです。
将来的には連動することもあり得ますが、
当面は別のこととして取り組むのです。
これによって、医院が大切にしている視点をスタッフの頭に定着させ、
それに沿った動きを促すことが狙いです。
そして、その評価の仕組みを給料やボーナスに連動することに対する
抵抗感がなくなったタイミングを見計らって、
”段階的に”給料やボーナスと連動させることを考える、と言うことです」
「”段階的に”とはどういう意味ですか?」
キャッシュフローコーチは答えた。
「例えば評価の結果を、100%完全連動型で給料やボーナスに
反映すると言うのは、金額のアップダウンが大きくなりすぎて、
スタッフの動揺が心配ですよね。
そこではじめはさほど生活に支障がない程度、例えば
『ボーナス支給額の10%分だけ、評価を反映させる』
と言うイメージです。そもそもボーナスは医院の業績配分であり、
月々の給料よりは生活を支えるウェイトが軽いでしょう。
そのボーナスの10%程度であれば、それがすぐに生活を
脅かすほどではない。とは言え、無視できる金額でもないので、
評価基準に気が向くと言う狙いです」
加藤院長は言葉を挟んだ。
「なるほど、一足飛びに報酬制度を変えなくても、
段階的に変えていく道もある、ということですね。
その方が安心してとりかかれそうです。
ちなみに、10%くらいから始めるのが良いですか?」
「その割合が10%が良いか20%が良いか、は
医院やスタッフの成熟度合いにもよるので、一概には言えませんが、
いずれにせよ大切な事はその評価基準を医院が重視している
と言うことをスタッフと共有し、行動に移す仕組みを定着させることです」
加藤院長は、ひとまず「お金と評価を分ける」と言う視点で考え始めた。
成果や努力は認めて評価することが大切だが、その手段は
お金で評価することが全てではないと言うところが盲点である。
【今回のレッスン】
◎人の評価に絶対的な正解はない。ある側面から見れば正解でも、
逆の側面から見れば不正解ということもあり得る。
◎成果や努力は認めて評価することが大切だが、
その手段はお金で評価することが全てではない。











































