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精鋭CFコーチの 実践コンサルティング・レポート

キャッシュフローを理解して経営の不安を解消する事で社長が変われば社員も変わる!

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2018.07.25 執筆者:鈴木 智統

「もし僕が会社を継いだら社員にもっと厳しくすると思うので辞める人もいるでしょうし、社風もガラッと変わってしまうかもしれませんね」

と冷たく言い放ったA社長(当時専務)がまさかこんなにも変わるとは当時の私には想像できませんでした。

Y社は創業30年を越える製造業。確かな技術を持ち堅実な経営を行ってきた中小企業です。創業者のB会長は、親分肌で熱い性格。現場に入って社員を鼓舞しながら営業や納品までこなす典型的な中小企業の社長でした。それに対してA社長はマジメで冷静な完璧主義タイプ。パソコンに詳しくデータ分析が得意な方です。

そんなY社に最初に影を落としたのがリーマンショック。多くの中小企業と同じくY社もその影響を受け、業績は著しく悪化します。売上はピーク時の3割まで落ち込み、資金も少なくなりまさに火の車。
更には東日本大震災の影響も受け、会社を存続させるために銀行に条件変更(リスケジュール)をお願いし、返済額を減らして何とかしのぐ日々の連続。

数年が経ってもY社の業績は上向きませんでした。会社は債務超過に陥り、予断を許さない状況が続いていました。A社長が会社を継ぐことになったのは、まさにこのタイミングでした。

冒頭のセリフは私がY社との契約直後、社長就任目前のA社長と初めて面談した際のものです。
A社長は、マジメで優秀ですが現場経験しかないため財務や経営に関する知識はありません。当然ながら会社を継ぐことに漠然とした不安を感じていました。

A社長が不安に感じていることを分解すると、①会社のお金の流れについて何もわからないのに銀行と交渉しなければならない不安、②今まで会社を率いていたB社長とはタイプが違うため古参の社員たちが自分についてきてくれるか不安、③それらを相談できる人がいない不安、を感じていることが判明しました。
当然そんな状況ですから目の前にある資金繰りや人の問題に手一杯で、自分が描きたいビジョンを考える余裕もありませんでした。

「キャッシュフローを理解するためには、まずは現状把握からしましょう」

私が最初にA社長と行ったのは、会社の収支構造の大枠を理解してもらうことでした。
お金のブロックパズルに毎月の試算表の数字を社長自ら書き入れてもらい、自社の収支構造をブロックパズルに落し込み理解してもらう、それだけです。

これを数か月繰り返していくと今まで会社の数字のどこを見ればよいのかわからなかったA社長が数字を使った会話を私とするようになり始めました。
例えばこんな風に。

鈴 木:「社長、今月は先月よりも売上が300万円増えていますが、粗利益はわずか15万円の増加でした。粗利率でいうと5.5%悪化しています。その理由は何ですか?」

A社長:「それはですね、大口の受注があったのですが納期までに当社ですべて生産できる自信がなかったので同業者に外注をお願いしたんです。だから売上は増えているのにそれほど利益が出なかったんですよ」
数字だけを伝えるのではなく、その数字の理由を社長に聞くことで社長の頭の中にある実務(原因)と数字(結果)がリンクされて生きた情報となりました。

鈴 木:「社長、もし御社でその仕事をすべて生産できることができたら粗利益はどれくらい出ます?計算してみましょう」

A社長:「え~と、粗利率65%だとすると(電卓を叩きながら)195万円かな。・・・なんか外注にお願いするのはもったいないですよね」

鈴 木:「社長、じゃあ外注に出さずに御社で生産することにした場合、社長がボトルネックになると考えていることは何ですか?」

A社長:「う~ん。うちの会社は生産計画の精度が悪いからいつも納期に間に合うか不安なんです。だから安全策をとって外注に出しちゃうんですよ。・・・(しばらく沈黙)やっぱり生産計画の精度を上げる必要がありますね。担当課長と対策を練りますよ」

 

 

お金のブロックパズルを使うことで徐々に経営数字の勘所がわかるようになってきたA社長。「どれくらい粗利益を稼げば固定費と借入返済額を賄えるのか」が理解できるようになり、数字をヒントに改善を重ねることで業績は徐々に上向いていきました。次の課題は銀行取引の正常化です。

鈴木:「社長、御社の月額返済額は40万円です。もしリスケジュールを解消して銀行取引を正常化すると返済額は100万円になります。その場合、逆算するとあと50万円の粗利益が必要になります。仮に売上だけでその粗利益をカバーしようとすると、毎月77万円の売上アップが必要ですが、どこに手を打てばよいと思いますか?いくつか選択肢はあると思うんですがどんなことが考えられますか?例えば売上なら・・・、変動費を下げるなら・・・、固定費を下げるなら・・・などが考えられますが」

A社長:「売上でカバーできればいいが、毎月は厳しいですね。それよりも最近は不良率が高くなってしまっているのでその改善をしたいと思っているんですよ。」

鈴 木:「そうですか。御社で不良率を改善する方法ってどんなことできそうですか?」

A社長:「そうですね。まずは〇〇と〇〇がありますね」

鈴 木:「他にもありますか?」

A社長:「う~んと・・・〇〇って方法もありますね。あっ!でも○○するのは一番ですね」

鈴 木:「なるほど!〇〇ですね。それをするためにキーパーソンとなる人は誰ですか?」

A社長:「〇〇部長ですね。それと○○主任かな」

鈴 木:「その話し合いをするとしたらいつします?」

A社長:「え~と、来週に会議があるからそこでしてみます」

その後A社長は、中堅社員を巻き込み、不良率改善プロジェクトや品質会議の週1回の実施,在庫管理の徹底による材料仕入の圧縮など変動費の削減を見事に実現しました。その結果、粗利率は65%から70%まで改善され、銀行取引を正常化しても会社にお金が残る収支構造に変革しました。

 

 

数字に対する漠然としていた不安がなくなることで、次第にA社長の頭の中に余裕ができ、自分のやりたいことを整理する時間を持つことができるようになりました。

また社長就任後、今まで社員に頼らずすべて一人でやろうとしていた社長が一人では限界があることに気づき、社員に頼ろうと考え始めたのもこの時期からでした。

斜に構えていたA社長はもういません。
今では中堅社員にどんどん仕事を任せ、社員から「社長!今のうちの会社、ドリームチームですね!」っと言われるまでの会社になりました。最初は社長と距離を取っていたベテラン社員も中堅社員がイキイキしているのを見て徐々に変わりつつあります。

そしてこの数か月後に社長と初めて10年後のビジョンを一緒につくりました。A社長が打ち出したビジョンは、「社員と共に生きる」。そこには何よりも社員を第一に考える社長がいました。

お金のブロックパズルを使って全体を把握し、「いくら利益を稼がなければならないのか」を数字で把握できたことが、A社長が変わった第一歩でした。

次にお金のブロックパズルでシミュレーションをして意思決定をする。そしてアクションプランを愚直に実践したからこそ、今のY社のV字回復があります。

私がしたことは、①お金のブロックパズルを社長自ら書いてもらうことで会社の収支構造を理解してもらった、②ブロックパズルを使い、社長と一緒にシミュレーションをした、③社長が意思決定する際に、私が質問をすることで社長の思考パターンとは違うところに焦点が当たり、新たなアイデアが社長の頭の中に生まれる環境を作った、④社長に寄り添い、応援して背中を押した、以上のたった4つだけです。

資金繰りの不安が解消したことで、近視眼的になっていた社長が変わり、その社長を見て中堅社員が変わり、今ではイキイキとした中堅社員をみてベテラン社員までもが変わりつつあります。今のA社長はとても楽しそうです。

今でも月に一度当社を訪問して楽しそうにビジョンを語るA社長がいます。

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▶︎社員の危機意識を高める為に社長の危機感を伝えるには?

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  • 鈴木 智統

    営業マン,司法書士事務所を経てコンサル会社就職。数字は学生時代から苦手で四苦八苦しながら経営数字の読み方を学び「過去」ではなく「未来」を紡ぐ数字の使い方を覚える。
    その後、志を同じとするパートナーと㈱skyマネジメントコンサルティングを設立。ミッションは「お客様の『ワクワクするビジョン』と『本質的な成長』と『社員の幸せ』を実現する」。

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