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精鋭CFコーチの 実践コンサルティング・レポート

「会社のお金の流れが漠然としている」状態からの脱出

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2018.08.29 執筆者:渡邊 剛徳

会社のお金の流れを実際にはよくわからないまま経営をしている!

という会社は結構あります。

特に中小企業は、社長が「売上高」のみに目がいきがちで、
利益が実際にどれくらいからを把握していない場合は多いです。

会社の借金も、社員の給与も、家賃などの固定費も本来は
「利益」から支払われるものです。

そこを「売上高」だけを見てしまい、実際のお金の流れを把握していないと
トンデモナイ自体に陥ってしまう場合もあります。

お金の流れを把握し成長した飲食業経営者との会話

「何かいい節税策ないかしらね~?」が社長の第一声でした。

友達からの紹介で、飲食業を経営している社長に一度会ってほしいということで、
お会いした時に最初に言われた言葉でした。社長は創業者で50代後半の女性です。

この時点では財務内容を知りませんでしたので、そうか、儲かっているんだなと思って、

渡邊:「社長、節税と言っても、お金のキャッシュアウトが伴う節税と、キャッシュアウトが伴わない節税とがあるのですか、ご存知ですか」

社長:「そうなんですか、どんな方法なの?」

渡邊:「お金のキャッシュアウトが伴わない節税は、
例えば、使っていない固定資産とかがあればそれを除却できたり、
お金のキャッシュアウトが伴う節税のなかでも、将来戻ってくる可能性があるものと、
払うだけのものとがあるんですよ。

個人的には、キャッシュアウトが伴わない節税策が何かないか、
または、キャッシュアウトしても将来戻ってくる可能性があるものを
先に考えてみられるといいと思います」というような会話をしました。

後日、社長から税務顧問をお願いしたいんだけど、という連絡がありました。
その前に一度決算書を見せていただきたいと依頼し、決算書を見たのですが、ビックリでした!
節税どころではなく、赤字でしかも債務超過の状態だったからです。

もしかして、僕が税理士としてどこまでできるのかを試した質問だったのかな?
などといろいろ考えながら、再度社長と話しました。

渡邊:「社長、決算書を見させていただきましたが、
節税の心配はなさそうですね。といいますか、
赤字でしかも債務超過なのはご存知ですか?」

社長:「あっそうなの?決算書みてもよくわからないし、
会計の数字は単なる数字だから」
と苦笑いしながら言われ、
債務超過については、ピンときていないようでした。
お金の流れについてお聞きしても、
かなり漠然とした感じで把握されていました。

そこで、最初に、おかねの流れと今の財務状況をきちんと見える化
することが大事だと思い、通常の損益計算書のブロックパズル(以下PLブロックパズル)に加えて、
貸借対照表のブロックパズル(以下BSブロックパズル)を作りました。

債務超過の状況を一目でわかってもらうには、BSブロックパズルも必要だと思ったからです。
BSブロックパズルは、PLブロックパズルのものを応用し、
同じように7つの数字で表示し、視覚的に一目でわかるようにしました。

今回は、預金・固定資産・その他の資産・銀行借入金・社長借入金・その他の負債・純資産の7つです。

数字上、少額な資産・負債はすべてその他の資産・負債に入れて、
ボリュームが大きくて大事な数字のところだけを7つピックアップしました。

債務超過になっている主な原因は、役員借入金が膨大な額になっていたことでした。
社長個人のお金を会社に注ぎ込み、役員報酬を未払にして、何とか会社を存続していました。
その金額をBSブロックパズルに落とし込んで、社長に報告しました。

渡邊:「社長、これまでどれくらいご自身のお金を会社に注ぎ込んできたか、
自分の給料の未払がどれだけ積み上げっているか、ご存知ですか?」

社長:「いや~、これまで前の税理士に任せっきりだったので、
全然わからないんですよ、どれくらいになっているの?」

とその金額をお見せした時に、唖然とした顔で、

社長:「えっ!こんなに・・?しかも、会社に貸したという意識がないのに、
会社にとっては借入金になってしまうの?会社で借りているという実感がないんだけれど・・」

これまでも決算書に、役員借入金としてずっと計上されていました。
しかし、社長は、これまでほとんど前の税理士に任せきりで、
決算書の数字自体に関心がなく、まったく気にも留めていなかったようです。

社長からの借入金は相続財産になってしまうこともご存知なかったので、
このまま膨らみ続けた場合、万が一のことがあった時のリスクをお伝えしました。

そこで、ようやく、ことの重大さに気づかれ、
まずは、役員借入金を減らしていくことで、方向性が決まりました。

こうして、PLブロックパズルで、赤字解消のために、
利益が出るキャッシュフローの構造づくりを社長と一緒に考え、
BSブロックパズルで、債務超過を解消していく方法を、
こちらは僕が考え社長に提案していくという形で、プロジェクトが始まりました。

社長と何度か話をするなかで、特に、売上アップと労働分配率の改善がテーマと感じました。
遊休化している店舗がいくつかありましたので、そこの活用次第では、
もっと売上が上がるように感じていました。

そこで、人を増やして遊休化している店舗を稼働していくのか、
それとも逆に、お店も減らして人も減らしていく方がいいのかを、
ブロックパズルを使って何度もシュミレーションしました。

また、労働分配率について話した時のことですが、

渡邊:「社長、御社の場合は60%を超えていて、
この業種から見ると少し高い状況にあります。実感としてはいかがでしょうか」

社長:「えっ、うちはそんなに高いの?一部の社員は給料が少ない少ないって言うのよね」

渡邊:「そうなんですか、他社の事例ですが、会社の財務状況を上手に伝えたら、
不満を言う人が少なくなったということがありましたが、
社員の方に少し伝えてみるというお考えはないですか」

社長:「うちの社員に話してもわからないと思うし、数字が一人歩きしてしまうことが怖いし」

渡邊:「社長が伝えたくないところは話さず、社員に知ってほしいところだけを伝えるやり方はできますよ」

社長:「いや、今はいいです・・・」

ということで、今は社員を巻き込むタイミングでないと感じましたので、
まずは目標として60%以下に抑えるように、毎月人件費と粗利のバランスを見ていくことにしました。

こういうクオリティータイムを、社長と毎月1回、3時間位持ちました。
社長は今まで、お金や数字ついて、誰かと話すという時間を持つことをしていませんでした。

クオリティータイムの中では、お金や数字以外にも、社長の悩みや、考えていることを、
90%は社長が話して、僕は質問を投げかけながら聞いていました。

社長は自分で話しながら、「あっそうか、そういうことだよね、そうすればよかったんだ」
と、自分で答えのようなものに気づいていくことがよくありました。
それが僕にとって一番嬉しい瞬間です。

PLとBSのブロックパズルを作るのと同時に、キャッシュフロー計画表を1年先まで作って説明しました。

今まで見えていなかった数字をどんどん見える化していくことで、
社長の頭の中が、漠然としたお金の悩みから解放され、
どうしたら利益が出るのかという構造づくりの方にシフトチェンジしていくのを感じました。

ある日、このまま例年どおりの数字で推移すると、
1年先に、もしかしたら会社のお金が無くなるかもしれないという
予測の数字を出したことがありました。

社長は食い入るように見て、「もう会社に注ぎ込むお金もギリギリなんだよね」と言い、
この時から、さらに社長の目の色が変わったことを覚えています。

お金が無くなるかもしれないということを実感したことで、
さらにシフトチェンジが加速していきました。

結論から言いますと、ここから1年で売上が約2倍になり、3年で債務超過が解消しました。

遊休化していた店舗を稼働させ、社員の構成を変え、
今までほとんどしていなかった広報活動にも力を入れたりと、
様々な要因が組み合わさった結果だと思います。

和仁さんが言われている
「社長の頭の中は、お金の流れが漠然としている不安が75%で、
残りの25%で本業をしているので、それを逆転して、
社長が本業に75%シフトできたら、売上は自然と上がる」
ということをまさに実感しました。この短期間で改善できたのは、
何よりも、社長自身が本気で取り組んだ結果であることは間違いありません。

単に決算書に数字として載っていても、
経営者はお金や数字について学ぶ機会はほとんどないので、
どこを見たらいいのかわからなかったり、その数字の意味がわからなかったりして、
興味がなくなってしまう、というのは仕方がないことだと思います。

今回、僕がしたことは、特別なことではなく、主に以下の3つに集約されます。

ブロックパズルでシンプルに視覚的に見える化したこと、
②これから将来、起こりうる可能性があるリスクを伝えたこと、
③社長と毎月、クオリティータイムを持って、数字や悩み事などの話をしたこと、です。

そのことで、社長自身に必要なこととして、気づいてもらうことができました。
もし、社長があのまま気づいていなければ、
さらに債務超過が膨らみ続け、
社長個人のお金も底をつき、会社が廻らなくなっていたかもしれません。

今では、僕が行くと、早くブロックパズルやキャッシュフロー計画表を見せて欲しいと言われます。

そして、社員には伝えたくないと言っていた財務内容についても、
一部の幹部社員には時々社長が伝えているそうです。

どんぶり勘定だった予算についても、
今、どれくらい予算に達しているのか、
あとどれくらいお金が使えるのかと、社長の方から聞いてきます。

社長のお金に対する意識と関心が変わり、
頭の中が本業に集中できるようになったことで、
将来を見据えた事業展望まで考えられるようになってきました。

社長とのクオリティータイムは、今は後継者の方も交えて、続いています。

まとめ

・ブロックパズルで、視覚的な大きさでわかるようにシンプルに見える化する
・数字の意味を伝え、考えられる可能性があるリスクを伝える
・ケースによっては、PLブロックパズルだけでなく、BSブロックパズルを使うと効果的
・社長とのクオリティータイムを月に1回行う
・キャッシュフロー計画表で、常に1年先までいつも見える化しておく
・お金がなくなるかも・・という本当の意味で自分事の危機感が感じた時に、社長の本気度が変わる

以上

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  • 渡邊 剛徳

    キャッシュフローコーチ、税理士、「こどものお金の学校」を運営
    ビジョンはあるけれど、数字が苦手な中小企業の経営者にキャッシュフローコーチを行うとともに、家族向けにアレンジして、家族のビジョンづくり・お金の構造づくりも行っている。また、こどもたちへのお金の教育が必要と考え、「好き」と「お金」を繋げて考えていく、こどものお金の学校を運営している。

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