上司と部下のコミュニケーションギャップを解消するコミュニケーション術
動かないスタッフを動かそうとするのではなくできない理由を具体的に聞くことで解決できる
2020.07.22 執筆者:和仁 達也コミュニケーション安心安全ポジティブな場づくり聞き方
ミーティングで決めたことなのに、スタッフがいつまで経っても
それが行動に移さない事実を目にしたとき、社長が
「自分で考えようとしない、やる気のないスタッフだ」
と判断してしまうことがあります。
しかし、よく話を聞くと、そういうケースの大半は、
単にそのスタッフは「筋道を立てて対策を見いだす考え方が
わからないだけで、やる気がないわけではない」ように思います。
先日セミナー会場で、ある流行っている歯科医院の院長から、
こんな相談を受けました。
「アポを1日50件以上入れるように受付に指示したのですが、
いつも3~4件足りないんです。
院長命令なのに、1か月たっても全然変わらないので、
彼女にはもっと厳しく言ってやらないといけないと思うのですが、
何かペナルティとか与えたほうが良いのでしょうか?」
そのような場合、ペナルティを与える前にやっておくべきことがあります。
それは、「できない理由を具体的に聞く」です。
たとえば、アポをきっちり埋めない理由として、
ある医院の受付スタッフが次のような事情を話してくれたことがありました。
「たとえば前回ずいぶん待たせて嫌な思いをさせてしまった
患者さんには、次は待たせずに診療に通してあげたいので、
わたしなりに考えてその直前の枠を空けて、
先の日程にアポを入れたりするんです」
待合室で患者さんから何度も
「あとどのくらい待ちますか?」
と聞かれたり、
「これ以上待てないから、今日はもう帰る」
と面と向かって言われるのは、院内で彼女だけです。
そんなとき、申し訳なさと医院の方針のはざまに
立たされているとのこと。
これは、現場で働く彼女の立場に立って考えたら、
その心情は理解できるところです。
院長がそんな心情を知らずに、アポを埋めることを強要すると、
上記のような本音をうまく自分で伝えられないスタッフは、
どう感じるでしょうか。
「院長は、収益ばかり優先して、何もわかってくれない。
言ってもわかってくれないから、適当に流しておこう」
と判断し、信頼関係が崩れてしまいかねません。
もしその部分は認めて、他にできる対策を一緒に探して
あげたとしたら、スタッフの腑に落ち方は違ってきます。
その人の行動には共感できないときも、
その人がおかれている状況や背景には
共感できることがあります。
実際、その医院ではアポ帳を一緒に見ながら考えたところ、
午後一番に急患枠として2枠空けてあったのですが、
1枠で十分と判明。
また、診療以外の会話は、患者さんにカウンセリングコーナーに
移ってもらうことで、1日3人のアポ増加は可能になることがわかりました。
できない理由探しを手伝うと、解決は早いかも知れませんね。
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