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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

週3勤務のパート・スタッフが常勤化するには?スタッフが増員しても医院の利益を圧迫しないシナリオづくり

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2019.04.16 執筆者:和仁 達也

最低賃金が上昇し、人手不足も重なって、人件費の問題は、中小企業なども含めて頭を悩ます問題です。

人を入れるには、給料をアップしないといけない。

今は、そのように考えないと、なかなか人は集まりません。

スタッフを増員し、さらに、常勤化させると利益を圧迫してしまうのではないか?
と不安になることもありますよね。

そんな経営者の方に知ってほしい、「スタッフが増員しても医院の利益を圧迫しないシナリオづくり」を今日はお伝えいたします。

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先日、パート・スタッフの出産退社に伴い、新たに1名の採用を決定した。
ホワイト歯科としては週2.5日勤務のパートを募集していたのだが、そのスタッフ、清水は常勤を希望していた。
医院の考え方や診療スタンス、雰囲気がまさに理想と一致していて、ぜひ本格的に働きたいとのことだった。

そこで、初めは「週2.5日でのパート勤務」で始めて、お互いに様子を見ることにした。
1か月が経ち、清水の熱心で的確な働きぶりをみて、加藤院長も考えが変わってきた。

そこで、毎月の定例ミーティングの場で、キャッシュフローコーチの和仁に相談を持ちかけることにした。

「今、週2.5日のパートで働いている新人スタッフですが、本人は常勤を希望しているんです。
わたしとしても、できたら正社員として迎え入れたいのですが、ウチの収支的に大丈夫でしょうか?また、正社員化するとしても、何らかの条件を提示してそれをクリアしたら常勤で、というふうに話をしたいのですが」

ホワイト歯科の現状は次の通りであった。

開業して10年目。来院患者は1日35人(昨年は30人)自費率は35%(昨年は30%)と上昇傾向にある。また、チェアは最近1台を導入して、4台。うち1台は空いている時間が多く、あと1日10人以上は患者が増えても対応できるキャパシティがある。

一通りの話を聞くと、キャッシュフローコーチはホワイトボードのペンのキャップを外しながら話し始めた。

「まず、正社員化するとした場合、それに伴うコストアップがいくらかを把握する必要がありますね。そして、それを補う売上アップを図れるかどうか。その見極めが必要です。
そこで、2つの観点でシミュレーションしてみましょう。

1つは、チェアなどの追加投資なしでいける物理的な売上アップの上限はいくらか?
もう1つは、正社員化に伴うコストアップ分を補うために必要な売上アップの額はいくらか?
そこを考えてみましょう」

そう言うや否や、電卓を叩き始めた。そして、計算式をホワイトボードに書き出した。

1)チェアなどの追加投資なしでいける物理的な売上アップの上限はいくらか?

保険診療の患者単価が@5千円だとして、1日あと10人までなら今の設備でいけるとすると、

●@5千円×10人×22日(月の診療日数)=110万円

つまり、月110万円までの売上アップは、受け入れ体制的には可能となる。

2)正社員化に伴うコストアップ分を補うために必要な売上アップの額はいくらか?

週2.5日働くパート契約では、月10万円の給料だが、これがフルタイムの正社員となると、ボーナスも合わせて月28万円。つまり、月18万円の固定費アップとなる。常勤化に伴う諸経費もあわせると、月20万円は今よりも増えることに。
今の利益を目減りさせることなく、この20万円を新たにねん出するには、粗利で20万円アップ、売上で25万円のアップ(粗利率80%の場合)が必要となる。

●粗利20万円÷0.8=売上25万円

これは、保険診療の患者単価が@5千円とすると、

●売上25万円÷@5千円=50人

つまり、月50人、1日あたり2.3人の新規の保険診療の患者を増やすことができるかどうか、という判断となる。

ホワイトボードを眺めながら、加藤院長はつぶやいた。

「なるほど、1日2.3人以上の患者数アップができるなら、常勤化してもお金はまわるわけですね。これなら、十分イメージできる範囲です。しかも、常勤で働いてくれれば、スタッフ数も余裕が生まれるので、キャンセル先に電話を入れたり、患者さんへの情報を伝える資料づくりなども任せられそうです」

加藤院長の迷いは消えたようだった。その瞬間、別の疑問が頭をよぎった。

「今、ふと思ったのですが、新たにもう1人パート・スタッフを入れて2人のパート・スタッフを雇う場合と、週5日の正社員を雇う場合とでは、どちらが投資効果は高いんでしょうか?」

キャッシュフローコーチは答えた。

「なるほど、パート2人で正社員1人分の仕事をさせるのか、それとも正社員1人だけでさせるのかの違いですね。いろいろ見方はありますが、わたしは正社員を雇えるのであれば、そちらを優先することをお勧めします」

「でも、正社員だと、パートと違って社会保険やボーナスが発生する分、コストは上がるんじゃないですか?」

「たしかにそういう面はあります。しかし、『教育の手間が半分で済む』『情報の伝達がスムーズにいく』『患者さんに担当をつけやすくなる』その他の目に見えないメリットが大きいので、トータル的にはパート2人より正社員1人のほうが投資効果は高くなります。ましてやホワイト歯科は、それだけ期待が持てる清水さんという新人さんが入ったのだから、迷うことはありませんね」

加藤院長はうなずくと、清水の正社員化を心の中で決断した。

 

【今回のレッスン】

◎スタッフの新たな採用や、パートから正社員へのシフトなどで人件費がアップするのが不安
なときは、そのコストアップ分を補うだけの新たに粗利を稼げるかを試算する。

◎その際には、2つの視点で。
1)チェアなどの追加投資なしでいける物理的な売上アップの上限はいくらか?
2)正社員化に伴うコストアップ分を補うために必要な粗利&売上アップの額はいくらか?

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎スタッフのやる気を引き出すにはやりがい?それとも報酬?スタッフのモチベーションを上げるために確認しておくこと

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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