キャンセル客は医院の採算を食いつぶす?キャンセル数をどう減らすか?
2019.05.03 執筆者:和仁 達也キャッシュフロー経営売上アップ歯科医院
歯科経営など、医院の経営にはキャンセルはつきものではありますが、キャンセルが増えてきても、毎日の忙しさから、気にはしつつも具体的な対策を講じない歯科医院さんは非常に多いように感じます。
キャンセルを少しでも減らすことができればそれだけでも利益は上がります。
もし、あなたが、患者さんのキャンセルを減らしたい!と考えているのなら、まずは数字をしっかり見るということから始めてください。
そうすれば、どの程度のキャンセル率で利益を失っているのか、そして、具体的な数値目標も見えてきます。
この記事では、数字の見方以外に、キャンセルの減らし方についても公開しています。
:*****************************************
「院長、メンテナンスの予約だった木村さん、急用でキャンセルとのことです」
スタッフから連絡を受けた加藤院長は、来院数とキャンセル数のデータを眺めてつぶやいた。
「このところ、キャンセルが多いなあ・・・」
平均値を出してみると、来院数の14%がキャンセルしていることがわかった。
そもそもこの数字が悪いのかどうかもよくわからないが、医院の経営を圧迫していることは間違いない。そこで、翌週のキャッシュフローコーチとの経営会議のテーマに「キャンセル数の改善」をあげることにした。
*****************************************
「今まで、新規の患者数やリコール率を中心に数字を追いかけてきましたが、そろそろ守りも固める時期かなと思いまして」
加藤院長が口火を切ると、キャッシュフローコーチの和仁は質問を投げかけた。
「キャンセルを一定の比率以内に抑えることはとても大切ですね。
ところでキャンセル率の目標は何%ぐらいを考えていますか?」
「いや〜、何%を目指せばいいのでしょう?」
加藤院長は答えあぐねた。キャッシュフローコーチはうなずき、続けた。
「わかりました。まずは、現状のキャンセル状況が、医院の利益をどのくらい圧迫しているか、を計算してみましょう」
今、保険診療で来院する患者数が1日平均で50人で、キャンセル率14%。
つまり、50人×14%で=1日7人のキャンセルがある。
保険患者の単価が、@5千円として、キャンセルによって1日で3万5千円の売上が消えている計算になる。
・@5千円×7人=3万5千円
1ヶ月なら、診療日数が20日として70万円の売上、粗利率80%なので、1ヶ月に56万円の利益がキャンセルによって消えている。
・3万5千円×20日=1ヶ月で70万円の売上の減少
・70万円×80%=1ヶ月で56万円の利益の減少
「うわ〜っ、キャンセルでこんなに利益を圧迫していたんですね!漠然とはわかっていましたが、具体的な数字を出されると怖くなります」
加藤院長は、思わず声をあげた。
「そうですよね。それで今、ホワイト歯科は標準値10%を上回っているので、まずは『10%以下の達成』を中間目標としましょう。そして、その次の段階としてさらに良い水準を目指すのです」
仮にキャンセル率が14%(=1日7人のキャンセル)から10%(=1日5人のキャンセル)にダウンしたら、どうなるか?1日2人のキャンセル患者が減ると、
・@5千円×2人×20日=1ヶ月で20万円の売上の回復(増加)
・20万円×80%=1ヶ月で16万円の利益の回復(増加)
つまり、キャンセル率が14%から10%に下がると、月に20万円の売上アップ、16万円の利益アップとなる。
「急病とか仕事の急用など、こちらではなんともならない患者さん側の事情もあるので、さすがに0%というのは難しいとしても、目安として7〜8%までなら改善の積み重ねで可能です。
したがって、仮にキャンセル率が14%(1日7人)から8%(1日4人)に改善できたら、こうなります」
1日3人のキャンセルが減ると、
・ @5千円×3人×20日=1ヶ月で30万円の売上の回復(増加)
・ 30万円×80%=1ヶ月で24万円の利益の回復(増加)
つまり、月30万円の売上アップ、24万円の利益アップとなる。
さすがに、これには加藤院長も驚いた。
「ということは、キャンセル率の改善だけで、スタッフ一人分の給料が生まれるということですか!?これは今すぐ手を打たなくては!具体的には何からやりましょうか?」
キャッシュフローコーチは話を続けた。
「キャンセル率を改善するためにこれから取り組みたいことは、大きく次の3つです。
1)中間目標を決める(今回はキャンセル率10%)
2)スタッフミーティングでドクター、受付、衛生士、助手がそれぞれやれることを考えさせる。
3)毎週進捗報告をして朝礼で共有する
そして、今すぐにできる具体策としては、4つありますね。
①3ヶ月先であっても次回の仮のアポイントを受付でとっておく
②キャンセルがあった患者さんはリスト化し、アポを忘れないよう、本人の了解を得て次回から
事前予告の電話を入れる(またはハガキを送る)
③時間の融通がきいて「前倒しで診療を受けてもいい」患者さんをリスト化して、急なキャンセ
ルが発生したときに電話をかけて来ていただく
④メンテナンス予告のハガキの文面に、「来院時に具体的にどんなことをするのか」また「それ
をする患者のメリットは何か」を明記して来院動機を高める
これらをヒントに、スタッフに考えてもらうと良いと思いますよ。
院長から具体策を指示するより、スタッフから発案があって取り組むような流れにしたほうが、やりがいも増すでしょうからね」
加藤院長は、うなずきながら次回のスタッフミーティングの予定日が書かれたカレンダーに目をやった。
【今回のレッスン】
◎ キャンセルは宝の山。今月キャンセルだった患者さんが、もし全員来院していたら、いくらの売上、利益になっていたかを計算してみよう。放っておく気にはならないはず。
◎ キャンセル率の改善は、スタッフのアクションにかかってくる。よって、スタッフ自身にどんな手が打てるかを考える機会を持とう。
「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」
▶︎歯科医院の無断キャンセル常習者対策!3段構えのアプローチで患者さんに選択させることで3方よしのコミュニケーションが可能になる。