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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

お客様とのコミュニケーションは先に言えば説明、後で言えば言い訳。患者さんに予め伝えてておくべきこと

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2019.10.03 執筆者:和仁 達也

お客様との距離感はどのように作るといいでしょうか。

特に、お客様にオススメするものがある場合は、相手の感じている価値と、売り手側が感じている価値に違いがあります。

そこをお客様に確認せずに、売り手側が感じている価値をお客様にも必要だと勝手に判断してしまうとお客様のクレームに繋がる場合があります。

この記事では、「先に言えば説明、後で言えば言い訳」とはどのようなことを具体例をもとに解説しています。

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今日は、加藤院長と経営キャッシュフローコーチの和仁の毎月定例のミーティングの日。

いつになく元気のない院長の様子が気になり、「何かありましたか?」と尋ねると、つい今朝スタッフから報告されたことを話し始めた。

「今朝、入社半年で中途入社のスタッフから『院長のやり方についていけません』と言われちゃったんです。どうもコミュニケーションがかみ合っていないようで・・・」

詳しく事情を聞くと、次の通りだった。

ホワイト歯科を支持して、ここ3年間、欠かさず定期的に通っている63歳の製造業社長の木村さんは、加藤院長を人柄的にも治療の腕にも絶大な信頼を寄せていた。

そんなある日、10年前に他院で治療した奥歯が欠け、「ここは根本的に最適な治療を施しましょう」ということになり、「治療方針は院長にお任せします」と言われた。

耐久性、身体への安全性を考えると、保険治療よりも自費治療のほうがよいと判断した加藤院長は、2つのプランを用意した。プランAは70万円、プランBは40万円だった。

材質も最高で一流の技工士に依頼することもあり、これは東京なら100万円以上はする治療。ただ、地方で家賃が低く抑えられている立地の優位性を生かし、リーズナブルな価格に抑えている点もホワイト歯科のウリだった。加藤院長の中で、提案するプランは明確だった。

さて一通りその治療プランの説明をうなずきながら聞いていた木村さんだが、最後に価格を聞くと、その表情は一変、固くなった気がした。そこが気になり「質問はありますか?」と尋ねるも、特にないとのことだったので、その場は「では、ご検討くださいね」と送り出した。

すると、その後木村さんは会計のときに受付スタッフに「ちょっと理解できない!」と言い残して、怒りを押し殺した表情で帰っていったそうだ。
ふだんは紳士的な木村さんの意外な対応に、受付スタッフは驚き、事情を飲み込めないまま、その場をとりつくろうように頭を何度も下げながら、玄関まで送り出したとのこと。

「実はこのようなことは、これが初めてではないんです」と加藤院長。

似たことの繰り返しで、ストレスで辞めていくスタッフが過去にも何人かいたというのだ。

キャッシュフローコーチは、1つ質問をした。

「加藤院長、木村さんに自費の2つのプランをお話しするとき、事前にだいたいどのくらいの価格になりそうか、予告はされましたか?」

加藤院長は首を振りながら答えた。

「いえ、治療内容とその価値をちゃんと伝えてから価格を言わないと、相手が引いてしまうので、いつも価格は一番最後に伝えることにしているんです」

キャッシュフローコーチはなるほどとうなずきつつ、話を続けた。

「なんとなく状況がつかめてきました。人は何かを買う時、およその“相場感”を持っているんです。たとえば、『美容院でカットパーマをしたら1回1万円くらい』とか『税理士を依頼すると月額3〜5万円くらい』とかですね。で、木村さんは、今回の治療について、いくらくらいの“相場感”を持って院長の話を聞いていたと思いますか?」

加藤院長は考え込んだ。
「いや〜、どうなんでしょうね。。。」

「では、木村さんは以前にその箇所の治療をしたときは、いくら支払ったんでしょうね?」

今度はすぐに答えた。
「10年以上前に、別の医院で治療をしたことなので正確にはわかりませんが、まあ保険治療ですし、トータルでも1~2万円程度でしょうね」

キャッシュフローコーチはすかさず聞き直した。

「ということは、木村さんの今回の治療に対する“相場感”はその過去の治療がベースになっていたりしませんか?もちろん、この3年間、ホワイト歯科に通いながら当院のスタンスや自費診療には一定のお金がかかることは理解していたとは思いますが、『せいぜい5万円から、いっても10万円くらいだろう』と予想していたとは考えられませんか。
もしそうだとしたら、その事前期待をしている人が、『70万円か40万円』という選択肢を見せられたときに、どう感じるでしょうね?」

加藤院長は、はっとした表情でキャッシュフローコーチを見た。そして、木村さんとのやりとりを思い出しながら、「しまった・・・」とつぶやいた。

「そういえば、息子さんが来月から歯科大学に通うということで、大きな出費が重なる時期だったことも影響しているかも知れません」

そもそも大体どのくらいかかるのか、の相場感を持たず、家計としても出費が重なる時期だった。その状態で、信頼していた院長の口から出た、想定を大きく超える金額の提示。

「治療方針は院長にお任せします」と言っている手前、院長に面と向かって不満を言うこともできず、おいつめられた患者さんは、その感情の持って行き場を失い、受付スタッフにそれをぶつけたのだった。

その対応を迫られたスタッフは、その感情のエネルギーを院長や医院にぶつけて、結果的に退職していった。

その一連の流れが、加藤院長の頭の中で線としてつながった。

少々テンションが下がり気味の院長に、キャッシュフローコーチは優しく声をかけた。

「加藤院長、価値を伝えた上で価格を言うことは悪いことではありません。ただ、『だいたい、どれくらいかかりそうか』という相場を、予め資料を見せておくとか会話の中でさらっと触れておくなどして、間違った相場感をもたれない工夫は今後はしておきたいですね。
『先に言えば説明、後で言えば言い訳』ですから」

 

【今回のレッスン】

先に言えば説明、後で言えば言い訳、である。予め道の先を伝えておくで、相手は「道の先を知る人」と信頼を寄せる。

◎ また、金額の話をするときは、間違った相場感を持たせることを予防でき、感情のしこりを持たせることなく、提案ができる。

 

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

 

▶︎価値を相手にちゃんと伝える秘訣とは。治療内容の説明が先か、価格の説明が先か?先に言えば説明、後で言えば言い訳。

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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