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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

スタッフの給料アップの際に考えておくべきこと 「納得の報酬」を気持ちよく払うには?

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2020.02.03 執筆者:和仁 達也

 
ホワイト歯科は、開業4年目を向かえ、毎年順調に業績を伸ばしてきた。

来院数が増えるのに合わせて、チェアを増設し、スタッフも増員してきた。

向上心の高い加藤院長の考え方を反映して、
医院には成長欲求の高いスタッフが集まり、
それが院内をポジティブなムードにしていたことも、当院のウリの1つだった。

ところがここに来て、
新規のスタッフ募集をしても、まったく反応がなくなった。

スタッフの出産退職を控え、前倒しで新たに1、2名の採用をしようと
早めの募集広告をハローワークや求人サイトに出したにも関わらず、
ここ2ヶ月、音沙汰がない。

昨年まではこんなことはなかっただけに、加藤院長は不安を覚えた。

そしてある日、求人サイトの担当者に相談したところ、
思いがけない意見をもらうことになる。

「院長、ちょっと申し上げにくいのですが、
貴院の給料がですねぇ、この地域の相場と比べて、
ちょっと低いのが問題ではないかと」

「え?そうなんですか。
確かに、他所の医院がどれだけ払っているか知らないのですが、
どのくらい差がついているんですか?」

求人サイトの担当者は資料を見ながら答えた。

「そうですね、昨年あたりからこの地域の歯科衛生士の
給料水準がグンと上がっていましてね。

昨年までならほとんど差がなかったと思いますが、
今ではホワイト歯科さんより平均して基本給で1万円、
中には2万円くらい多い医院もあります」

加藤院長は、衝撃を受けた。
しばらく新規採用をせずにきたこの1年ほどの間に、
そんなに相場が違っていたとは。

そして給料水準が新規のスタッフ採用の足かせになって
いるのであれば、金額を見直しをしないわけにはいかないだろう。

でも、今のスタッフにはどう説明する?

新しいスタッフだけ基本給を引き上げて、
今のスタッフは据え置き、というわけにはいかないだろう。

また、それだけじゃない。
実際には他所の医院と比べて1万円以上低い給料だったことに
気づいているスタッフもいるかも知れない。

そういえば、スタッフ面談のときに衛生士の1人が
「他所の医院で勤めているスタッフと給料や
ボーナスの話をすることがある」と言っていた。

ということは、ウチがこの地域の相場より低いことは
感じ取っていたのだろう。

それでも、「ウチは学べる環境があり、
良質な患者さんに恵まれ、院内の雰囲気もよい」ことが
給料の低さをカバーしていたのかもしれない。

しかし、これから新たなスタッフを採用することが不可欠な今、
根本的に対策を打たなくては。

加藤院長は、そう考えるとすぐに電話を手に、
経営キャッシュフローコーチの和仁に連絡を入れた。

「こんな事情で、スタッフの基本給を1万円ずつ引き上げ、
またちょうど今期は利益が十分に出る見込みなので、
今のスタッフに対して、1人1万円×12ヶ月分を
通常のボーナスに上乗せして払ってあげようと思うのですが、
漠然と不安もあります。どうでしょうか?」

経営キャッシュフローコーチは話を聞くと、
いくつかのポイントを指摘した。

「基本給の引き上げによる今期1年間の人件費アップ額と、
ボーナスで一時的に支払う上乗せ額はトータルで
いくらになりますか?

そして、それを差し引いたときに、医院として
資金繰りを圧迫することなく、必要な利益は確保できそうですか?」

これに関しては、全スタッフが対象というわけではなく、
バイトスタッフは対象外だし、新卒でまだ戦力とはいえない新人は
除外して具体的に数字を出して試算すると、たいした問題はないとわかった。

「次に、ここで基本給をひきあげることは、
来年以降の人件費もそのまま引き上がりますが、
来年度、トータルしていくらの固定費アップにつながりますか?

また、それを差し引いたときに、
医院として資金繰りを圧迫することなく、
必要な利益は確保できそうですか?」

これも試算すると、問題はなかった。
来年度は今年ほどの利益は見込めないにしても、
返済をし、将来に備えていくらか蓄えておくだけの利益は
十分に確保できそうだ。

ここまで業績面、資金繰り面の確認をすると、
キャッシュフローコーチは別の角度から気をつけるべきことを指摘した。

「収支的には問題なさそうですね。
であれば、あと気をつけておきたいことは1点です。

今のスタッフに給料が低かった分をボーナス時に
上乗せして支払うときの払い方です。

『この金額分はあくまで一時的な支出である』旨を
きちんと強調しておきましょうね。

もちろん院長はちゃんと説明されると思いますが、
中にはその意味をちゃんと理解せずに、
聞き流してしまう人がいたりします。

たとえば通常のボーナスが20万円で上乗せ分が10万円だとすると、
『今年は30万円のボーナスをもらえた』という記憶だけが残るわけです。

で、翌年に通常の20万円を支払うと、
『昨年より減っている』印象だけが残り、
それが『わたしへの評価が下がった』と誤解を生じて
関係がぎくしゃくする、なんて例が実際にありますからね。

その医院は、院長があまり恩着せがましく言いたくない、
という遠慮から、言葉足らずだったようで、
その意図がスタッフにはちゃんと伝わらなかったようです。

でも、院長自身は『わたしはちゃんと説明した』という認識なんです。
予め伝わっていれば問題がないことも、
後で言うと言い訳じみて聞こえることってありますから。

また、一般的に一度もらえたものが来年以降ももらえるという思い込み、
これを既得権と言います。

人は無意識にそういう既得権を持ち始めることがあります。
それが得られないときに医院への不満要因となることがあるので、
そこは予め予防しておきたいですね」

そこまで確認した上で、キャッシュフローコーチは
院長への期待を込めて次の言葉で締めくくった。

「以上を踏まえた上であれば、院長がスタッフの給料を
アップさせることに、わたしは賛成です。

ホワイト歯科は適切な診療でもって十分な利益を生み出しているし、
まさに歯科医院のお手本となるべき存在です。
そんな医院が歯科業界の給料水準を牽引していかなければ、
誰がそれをやるのか、とわたし個人的には感じるからです。

他所の医院で働いている優秀なスタッフが、

『期待される水準は高いけど、やりがいもあって給料も高い
ホワイト歯科で働いてみたい』

とあこがれるような存在を目指してはいかがでしょうか。

最終的に、歯科業界の給料水準を引き上げ、
職業として魅力的な業界に牽引するのは、
加藤院長のようなリーダーだと思いますからね!」

 

【今回のレッスン】

◎ 医院の給料水準が世間相場と比べてどのあたりにあるか、は定期的にチェックしよう。
◎ 「先に言えば説明、後で言えば言い訳」である。

 

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書多数。