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精鋭CFコーチの 実践コンサルティング・レポート

踊り場で停滞していた業績が再浮上し、経常利益1億円を超えるV字回復を果たせ秘訣とは?

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2021.07.28 執筆者:石原 尚幸

このお話は、私が一番最初に請け負ったクライアントさんの話になります。

この会社はガソリンスタンドの特約店で、
売上高60億円、社員も50名を超え、
毎年、メーカーからは表彰を受ける優秀店。
はたから見れば、いわゆる「勝ち組」企業でした。

しかし、
この会社を父親から引き継いだばかりの社長は
一人孤独に悩んでいました。

周りからは「勝ち組」とみられてはいるものの、
過去3年間の利益を見てみると
収支トントンの状況で、
一生懸命頑張っても利益が残せない状態。

社長は半ば冗談でこれを「トントン経営」と呼ぶほどでした。
そんなトントン経営をなんとかしてほしいとのオファーを受け、
私は顧問として入ることになります。

社内の実情をじっくり観察していくと、
この会社が、あるスパイラルに入っていることがわかってきました。

競争に明け暮れる中で、
何のためのビジネスをしているのか、
目的意識を見失い、
結果、この先どうなりたいのか?
というビジョンを考えることができていませんでした。

ビジョンがないゆえに足元だけをみた小手先の戦術をうってしまい、
組織は価格競争やお願い営業に振り回されます。

そんな組織で働きたい社員が増えるわけもなく、人材は流出。

その結果、生産性は低いまま、
いつまでたっても思ったような利益を上げられず
次なるビジョンへの投資もできない。

つまり、
ビジョンの喪失
⇒目の前の売上アップ策へ終始
⇒価格競争&お願い営業
⇒社員のやる気低下
⇒人材の流出
⇒生産性の低迷
⇒利益残らず
という「低迷スパイラル」です

この低迷スパイラルを脱するべく、
10年後のありたい姿=ビジョン
をまずは一緒に考えようと社長に提言していきました。

ほとんど休みを取らない社長を温泉旅館に連れ出し、
ビジョン構築合宿を張りました。

足元の喧騒からいったん離れ、

「この会社はどこへ向かうべきなのか?」
「そのために何ができていて、何が足らないのか?」

酒を飲むこともなく深夜まで語り続け、
次の日も夕方までみっちりワークを行いました。
そのお陰で当社のビジョンが完成します。

一言で言えば、
収支トントンを脱し、1億円の経常利益を上げる。
そして、全従業員の幸せを実現する!

この会社が初めて、ビジョンを言語化した瞬間です。
まずは第一歩を踏み出せたと感じました。

ただ、
ビジョンをかかげてはみたものの、どうすればビジョンを実現できるのか?
正直わかりませんでした。

そのため、
低迷スパイラルを脱するために、
もう一段社内に入り込み、何を変えれば
個のスパイラルを脱することができるのか、考えに考え、
思いつくことは一通り実践してみました。

例えば

・チラシやウェブなど販促方法を見直す
・社員研修を行う
・値付けを見直す
・コスト削減

などなど、それまでの経営改善では常識とされる対策を行ってみました。
ところが、まったく成果は出ません・・・

ここに至り、どうやら
低迷スバイラルを脱するには
点で改善を行うのではなく、
『経営の流れ』
を作り直す必要があるのではないか
ということに気が付きます。

つまり、
販売力が弱い、人材が育っていない、資金が足りない
といった個々の事象が問題なのではなく、
経営の流れに目詰まりが起きていることではないかと考えたのです。

具体的には、

ビジョンから戦略への目詰まり:ビジョンを実現するための戦略が考え切れていない

戦略から組織への目詰まり:作った戦略が具体策にまで落とし込まれていない

組織からヒトへの目詰まり:落とし込んだ具体策を実行できるだけの人材育成ができていない

ヒトからカネへの目詰まり:みんなでがんばって稼いだお金を投資すべき部門や設備に配分できていない

というように
ビジョン、戦略、組織、ヒト、カネといった
大切な要素が連動していないことが真の問題点であると
再定義したのです。

私はこの
ビジョンの⇒戦略⇒組織⇒ヒト⇒カネという流れを
「五つ星経営フロー®」
と命名しました。

そして、
この経営の流れの目詰まりを取り除き、
五つ星経営フローをスムーズに回すべく、
全社を巻き込んでのプロジェクトを立ち上げ、
社長と一緒に推進していきました。

例えば、
ビジョンを実現するための戦略を再構築する
⇒ビジョン手帳の策定と浸透研修、拠点戦略の見直し&人員配置の最適化

戦略を「絵にかいた餅」にせず、現場に落とし込む
⇒行動具体化シートを全店へ導入し、策定

現場が実行したことを仮説検証できる仕組みを作る
⇒幹部との月次ヒアリングの開始

具体策を実行できるだけの風土と人材を育てる
⇒組織風土診断、サンキューカード導入、人事考課制度・キャリアプラン作り

ビジョン実現のための投資財源を捻出する
⇒資金繰り精査、自己資本比率目標の設定し借入計画を策定、中期投資戦略の策定

これらのプロジェクトをやり遂げた結果、
収支トントンだった利益は、
3千万円、7千万円と伸び続け、
ついに昨年度は
コロナ禍の影響を受けながらも
1億円を超える利益を叩き出しました。

見事な踊り場脱出劇であり、V字回復でした。

「1億円の計画なんて絶対組めないよ」
と泣き言を言っていた社長が、
今では、「次は2億円の利益を達成する」と
社員の前で公言しています。

因みにこのクライアント社長は
石原のことを
「経営者の鏡」のような存在
だと言ってくれています。

その意味は、

「会社の意思決定をするのはやはり経営者だと思う。

ただ、
その意思決定はすべてが正しいわけではない
正直、悩むときもある。

そんな時に
石原さんと作戦会議を重ねていくことで
自分の考えが世の中の流れにあっているのか?
社員たちに受け入れてもらえるのか?
その答え合わせを一緒にしてくれる存在
それが石原さんだと思っている」

とのこと。

「あり方」を共有化し、
「やり方」を共に実践してきたことで
キャッシュフローコーチという存在を、
単なる外部コンサルではなく、
共にビジョン実現を目指し、
頭も体もフル回転させる「参謀」
として捉えてくれているのだと思います。

責任もありますが、その分、やりがいもある。
そんな素晴らしい職業だと改めて感じます。

この事例を通じてわかったこと
それは、
業績が停滞している企業は、
経営の流れがどこかで目詰まりを起こしている
ということ。

ですので、この流れをスムーズにしてつなげてあさえあげれば、
経営は必ず良くなります。

ですが、
正直、このフロー、実践していくことがとても面倒ですし、
手間暇もかかります。

それでも、この経営フローの実践こそが、経営の王道であり、
閉塞感のある日本企業がその閉塞感を脱する道と私は信じています。

これからも、手間暇を惜しまず
逆境から逃げるどころから
逆境に進んで立ち向かい、
そしてその逆境を乗り越えていく
そんな強くたくましい会社をクライアントさんと一緒に
作り上げていきたいと考えています。

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  • 石原 尚幸

    株式会社プレジデンツビジョン代表取締役
    1973年、愛知県生まれ。コーヒー卸商「石原珈琲商会」の三男として育つ。「明日の売上がなかったら、お前の目の前のごはんは食べられないんだぞ」と言葉をかけられていたのが、自分の商売の原点。
    大手石油元売り会社にてGSのコンサルタントに従事。大赤字のGS特約店にて再構築プランによるV字回復を実現したことが評価され、31歳で出光初の社長賞を受賞。34歳で独立後は「売上に偶然はあるが、利益に偶然はない」という理念のもと、社外にいるものの、社長の傍らに寄り添う「社外参謀」としてクライアントのビジョン実現へ邁進している。

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