社員を巻き込みビジョンを実現する キャッシュフロー経営って?
社員に会社の経営数字を公開する前に、知っておくべき4つのこと
2018.10.01 執筆者:和仁 達也キャッシュフロー経営ドンブリ経営全員参加経営(オープンブック・マネジメント)
社員が自ら考えて動いてくれたら。
これはどの経営者も考えることです。
しかし、実際は、「言っても動かない」
または、
「言ったことしかしない」という場合が多いですよね。
「もっと、自分で考えて動いてくれたら。。。」
「自分が何人もいればいいのに!」
と考えたことはないですか?
ユニクロ会長の柳井さんは以前、
「全員が経営者になれ商売人になれ、リーダーになれ」
と言っていました。
社員自身が「経営者としての資質」をもって動いてくれると、もっと会社は成長する。
社長であるあなたは、そのように考えることもあるのではないでしょうか。
最近では、
「社員が受け身や依存ではなく、自律的に働くようになるためには、会社の中身をオープンにして、経営数字を公開した方が良いのではないか?」
と考える若い経営者は増えているようです。
「経営数字もデータもすべて全社員に共有してみたら、メリットしかなかった話」
という話もあるように、メリットを感じている企業は少なくありません。
その一方で、
「ただ、それをやるとなると、漠然と不安」
「周りに、それをやっている話もあまり聞かないし」
という声も多いようです。
このように、
「ビジョンや経営数字を社員にも公開して、社員を経営に参加させるやり方」を、オープンブック・マネジメント、あるいは全員参加経営といいます。
そこでこの記事では、わたしが20年に渡るコンサルティングの現場で、オープンブック・マネジメントを様々なレベルで実践した上での考察をお伝えします。
経営数字を公開することを考えている人はまずは次の4つについて知っておくと良いでしょう。
1・ほとんどの社長が決算書を公開しない9つの理由
2・オープンブック・マネジメントを実践するための5つの条件
3・オープンブック・マネジメントの3つのメリット
4・オープンブック・マネジメントの3つの留意点
総括まとめ
Contents
1・ほとんどの社長が決算書を公開しない9つの理由
①社長がドンブリなので、社員の質問に答えられずに恥をかくことに漠然とした不安がある。
②質問に答えられるよう、予め準備する作業がわずらわしい。
③社員が、他人(同僚や上司・部下)と比べて待遇の不満を訴えることにいちいち対応するのが面倒くさい。
(役員報酬や接待費等の大きさを指摘される、等)
④段階的な経営数字の教育がない中で、いきなり数字をオープンにしたら、知識のない社員の論点のズレた議論で炎上しそうな不安と、その対処法を知らない不安がある。
⑤そもそも、オープンにする発想がない。
周りにそんなことをする社長がいないので、そのメリットがイメージできない。
⑥疑問があったら質問してくれればいいが、腹に疑問(誤解)を抱えたまま、人間関係が悪化しそうな不安がある。
⑦数字が社外に出て、顧客や競合に渡ってしまうリスクへの不安がある。
⑧ビジョンがなく業績が悪い会社の場合、社員に見切られる不安がある。
⑨どの数字を、どの順番で、どのように公開すればいいのか、を知らない。(むやみやたらに裸になればいいわけじゃない)
2・オープンブック・マネジメントを実践するための5つの条件
①社員が大人(成熟している)であること。
つまり、他人との比較ではなく、自分の目標との比較で発想する、「成熟した自立した組織」であること。
②段階的な経営数字の教育をして、社員が感情論ではなく、客観的視点で数字を建設的に議論できること。
③数字だけでなく、ミッションや理念などのビジョナリープランがあること。
つまり社長が、「何のための数字か」を語れること。
④過去のしがらみがないこと。その点で、会社を新たに立ち上げる際には、過去のしがらみがないため、やりやすい。
⑤後述のメリットを受け取れる会社であること。
(例えば、かつての高度成長期で、トップの言う通りに動けば良かった時代は、わざわざ数字をオープンにする必要性が低かった)
3・オープンブック・マネジメントの3つのメリット
①社長の精神的負担が減る。
(何をしたら数字がどうなるか、を社員が把握していることで、自ら収支バランスの取れる道を考え動くので)
②どう頑張ればどう報われるか、が明快なので、やる気のある向上心の高い社員は、やりがいが増して、生産性が高まる。
③とりわけ業績が厳しい時は、「なぜ頑張っているのにボーナスがないのか」がわかり、社員の疑問や不満を避けられ、誤解(ウチは儲かっているのに待遇悪い、的な)による退職を予防できる。
4・オープンブック・マネジメントの3つの留意点
①まず先に、情報を適切に判断できるための社員教育をきちんと行う。
(ほとんどの会社はここがわからない)
②いきなりオープンにせず、目的をよく考えて、情報を段階的に公開する。
(ほとんどの会社はこのさじ加減がわからず、はじめの一歩を踏み出せない)
③「誰が何を言うか」の明確化。
社長が言うことと、第三者の専門家が言った方が良いことの棲み分けをして、理屈と感情の両面からアプローチする。
総括まとめ
人は漠然とした不安を抱えたまま、新たな挑戦をするのは難しいものです。
ならば、その不安の正体を明らかにすることで、具体的に手を打つことができる。
この記事を参考にして、自社がやれていることは何か、そして新たに着手すべきことは何か、について考えるきっかけになれば幸いです。
なお、このオープンブック・マネジメントの実践法について
和仁が行なったセミナーを収録したDVD教材はこちらです。