社会人になる前に必要なお金の勉強は、①お金の収支構造、②借金の考え方、③モトを取る発想、の3つ。
2026.05.15 執筆者:和仁 達也
キャッシュフローコーチキャッシュフロー経営投資シミュレーション着眼点資金繰り
経営者になると、お金の知識を実践で学ぶ機会に直面しますが、
本来は社会人になる前に学んでおきたいことがあります。
今回は、経営者が社会人1年目の息子との対話で危機感を感じた
事例ストーリーです。
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経営者であればお金の知識は必要不可欠。
それは民間企業に限らず、歯科医院などの医療機関においても
経営をするのであれば同じこと。
ホワイト歯科の加藤院長はそのことを自身の経営を通して実感していた。
そんな中、
「お金の勉強は、経営者になってからではなく、
会社に勤めている人にも必要。さらに言えば、
社会人になる前に学んでおく必要がある」
と感じる出来事があった。
それは社会人1年目になる、息子の和也の出来事だった。
和也は新卒で会社に勤めて半年が経過していた。
車に対する興味が強く、かねてから欲しいと思っていた車を、
中古で300万円を10年ローンで契約して帰ってきた。
そんな高額な買い物をあっさり決めてくる、息子の姿勢が気になった加藤院長。
話を聞くと、「とても良心的な店員さんで、いろいろ親身に
相談に乗ってくれた」とのこと。
社会人1年目で300万円は大金であり、念のため
契約書の明細を確認しようと、加藤院長は見せるように言った。
和也がダイニングテーブルに置いた契約書に目を通すと、
加藤院長の表情はみるみる険しくなった。
まず総額が470万円とある。300万円の車を10年ローンで
契約して総額470万円と言うのはあまりにも高過ぎる。
よく調べたら金利10%のローン設定であった。加藤院長は、
今の世間相場的にあり得ない高金利に、驚きと怒りを感じながら和也に尋ねた。
「10年で470万円を支払うことになっているんだけど、わかっているのかな?」
和也は答えた。
「いや月4万円程度であれば、他のことを贅沢しなければ
何とか支払えると思って決めたんだ。
あと、店の人が、後で買い換える時にも相談に乗ってくれると言っていたし」
予想通り、和也は金利の相場感も仕組みも理解していなかった。父は尋ねた。
「ちょっと待った。和也はこの車に何年乗ろうと思っているの?」
和也は答えた。
「特に決めてないけど、5年乗ったらこれを下取りに出して、
新しい車に変えたいと思っているよ」
加藤院長はため息をついて話を続けた。
「5年経ったときのこの車の下取り価格は計算した?
おそらくこの車種だと大した金額はつかないはずだ。
すると10年返済の借金の半分が残ったまま、
新しい車の支払いを始めることになるんだけど、そこはわかってる?」
和也は黙った。加藤院長は続けた。
「店員が親切だったと言うけど、本当にそうなのか?
5年後に買い替える意向を伝えても、借金が重複するリスクに
触れないと言うのは、誠実さを感じないな。
とにかく売れれば良いと言うスタンスがミエミエなんだが、どうだろう?
もし5年後に同じ要領で同額の借金をしたら、そこから5年間は
2倍の月8万円もの借金返済をすることになるわけだけど、そこはどう思ってる?」
和也は愕然とした表情で答えた。
「そんなに支払ったら、家賃と車の支払いだけで給料の大半が
吹っ飛んでしまうよ。どうしよう?」
加藤院長はため息をついて言った。
「ひとまず明日、このお店に行って契約をキャンセルしてもらうんだな。
パパの知人のルートでこのクラスの車をもっと良い条件で
買えるアテがないか打診してみるから。
それから今後は、大きな金額の買い物をするときは、
契約する前に一言相談してほしい。頭ごなしに止める事はしないから。
今回のように君が後で大変な思いをすることがないように忠告できると思うからね」
和也は悔しさと無念が入り混じった表情でうなずき、自分の部屋に戻った。
翌日、加藤院長が知人のルートで確認したところ、
金利1.9%のローンで同等クラスの車を購入できることが判明。
しかも、車種的に下取りでそれなりの高額で買ってもらえる見込みも得られた。
お金の勉強をしている加藤院長は、自身はお金の失敗はしないものの、
身近な家族が危うく過大な借金を背負う羽目に陥りそうになった。
その出来事に衝撃を受けた加藤院長は、
キャッシュフローコーチの和仁とそこからの教訓について意見交換をした。
キャッシュフローコーチは一通りの話を聞くと言葉を発した。
「それは早めに気がついてよかったですね。今回の出来事の本質は、
和也さんがお金の知識を持たないまま、店員の提案を鵜呑みにして、
高額な買い物をしようとした点にありますね。
お金の知識とは、
『収入に対して、何にいくらまでの支出をして良いか』
『お金の出入りを10年スパンで見通せているか』
『借金はいくらまでして良いか』
などなど。具体的には、
①お金の収支構造
②借金の考え方
③モトを取る発想
の3つの知識が必要です。
でも考えようによっては、和也さんは今回のことで、
『社会人としてのお金の勉強の大切さ』を実感できたチャンスなのかもしれません。
お金の勉強は、経営者だけでなく、社会人になりたての人も
学んでおく必要があると、わたしはかねてから思っています。
よかったら、わたしから和也さんに大切な3つのお金の授業を
させていただきましょうか?」
加藤院長は即答した。
「ぜひお願いします。父親だと距離感の近さから感情的になりがちで、
伝えたいことを冷静に伝えられないことがありますから。
専門家の立場から話していただけると、息子も素直に聞けると思います」
大切なことを伝える際には、「何を言うか」の前に「誰が言うか」が重要である。
加藤院長はそれを実感してキャッシュフローコーチに依頼した。
【今回のレッスン】
◎社会人になったら、①お金の収支構造、②借金の考え方、③モトを取る発想、の
3つの知識が必要。自分だけでなく、家族にそれを教育することも視野に入れたい。
◎大切なことを伝える際には、「何を言うか」の前に「誰が言うか」が重要である。











































