後継者に継承すると決まったときの定例ミーティングのやり方。 「何かあったらその都度やる」はNGな理由
2026.04.15 執筆者:和仁 達也
キャッシュフローコーチキャッシュフロー経営事業継承着眼点
経営者の高齢化に伴い、事業継承を視野に入れているが、
具体的な行動には移していないケースは少なくありません。
「はじめの一歩に、何から考えれば良いか?」
のヒントを歯科医院の事例ストーリーでお伝えします。
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ホワイト歯科では長男の和也に医院を継承することが予定されている。
加藤院長は現在60歳。
長男の和也は30歳で、早ければ3年後、遅くとも
5年後には院長の継承を予定している。
長男の和也は、ホワイト歯科で勤務して数年が経ち、
ドクターとして経験を重ねてきた。
具体的な継承の時期を決めたものの、加藤院長は
「何をどう進めていけば良いのか」、安心して引き継げるイメージを持てず、
漠然とした不安を抱えていた。
そこで今月のキャッシュフローコーチの和仁との定例ミーティングでは、
この医院継承のプランについて扱うことにした。
キャッシュフローコーチは一通りの話を聞くと、論点を整理した。
「なるほど、具体的に医院継承の時期が決まったので、
そこに向けてどう動けば良いかというご相談ですね。
今は何かミーティング等の情報伝達の場はありますか?」
加藤院長が答えた。
「今は定例ミーティングとして行っていることはなく、
息子から質問されれば、その都度話をするという程度です。
また話す内容は、主に診療内容についてのことが多くて、
医院経営や経営者としての考え方については、
まだほとんど話していないのが現状です」
つまり、ドクターとしての技術の継承は実践を通して行っているが、
医院経営に関してはほとんど継承らしきことをしていない状況だった。
一昔前なら「親の背中を見て学べ」と言うスタンスで、
本人の自主性に任せながら失敗を通して、やがて学んでいく
というスタイルもあったかもしれない。
しかし、今はそれでは歯科医院をとりまく経営環境の厳しさに
対応するのに間に合わない。
間違った設備投資で借金を抱え込み、資金繰りに苦労した人の話も聞く。
待っていれば患者さんが来てくれる時代ではないし、
今の院長を慕う高齢な患者さんが、継承後も世代の違いを超えて
通い続けていただくには、相応の工夫と努力が必要だろう。
また、新たな患者さんの開拓も必要。
保険診療だけでなく、自費診療を納得して選択していただく仕組みや、
予防管理型の取り組み、物販の推進も大切になる。
また、継承した時点では、新医院長よりキャリアの長い
ベテランスタッフがいる中で、世代間のギャップと向き合いながら
スタッフがきちんと意思疎通をはかって仕事をするしくみと
雰囲気づくりも重要となる。
歯科医院に求められる要素が以前と比べてさらに難易度が
高まっていく中、継承する前に一定の教育を行うことが大事であることを、
加藤院長は頭ではわかっていた。
そこで、キャッシュフローコーチは考える視点を提示した。
「わかりました。では、加藤院長、これから3年スパンで
ご子息に何を伝えていくかを整理してみましょう。
テーマとしては1、診療内容、2、運営、3、経営の3つの視点です。
まず診療内容については既に取り組んでいるので、今回は省略します。
考えるべきは2.運営と3.経営についてです。
運営においては、例えば
「スタッフとのコミュニケーション」
「患者さんに価値が伝わり、通い続けるしくみ」
「情報の管理」
「ルールの整備」
などを整えていく必要があるでしょう。
経営においては、
「ビジョンやミッションの策定」
「お金のマネジメント」
「人の採用や教育」
などがテーマとなります。
この枠組みを明確にした上で、3年後の継承に向けた
定例ミーティングを毎月行っていくと言うのはどうでしょうか。
ポイントは『何かあったら話をする』のではなく、
毎月の定例ミーティングとして位置付けることです。
なぜなら、継承の準備は緊急性がないため、
患者さんの対応や突然のハプニングなど緊急性の高いことに
置き換わってどんどん先送りされてしまうからです。
その結果、十分な準備のないまま医院の継承をして
大変な思いをするケースも少なくありません」
話をしながら加藤院長は感じた。
「確かに、『何かあったら話をする』のではなく、毎月、
強制的に定例ミーティングを行い、計画に沿って大切なことを
伝えていく場が必要ですね。
さっそく今月の第2月曜日の午後2時から行うことにします」
キャッシュフローコーチはうなずきながら答えた。
「まず3年後のゴールをどこに起き、1年後のゴールを
どこに置くかを具体化しましょう。
そしてその1年後のゴールに向けて12ヶ月をどのように
進めていくかのアクションプランを書き出して見たいところです」
キャッシュフローコーチと加藤院長は、定例ミーティングの骨格を整理した。
さきほどの運営と経営のテーマを並べた上で、
その具体的項目をリストアップ。
その現状と理想を言語化した上で、
「現在、何ができていて、何ができていないのか」を書き出した。
約2時間かけて、この12ヶ月間の「院長継承アクションプラン」
を策定したことで、1年後が今よりもステップアップしていること、
そしてその先にさらに取り組む課題があることが明らかになった。
「これだけやることがあるのに、その場しのぎの打ち合わせしか
してこなかったなんて、ビックリです。
今日、立ち止まって整理できてよかった」
加藤院長は、心を引き締めて、院長継承へのプランを見つめていた。
【今回のレッスン】
◎後継者への院長継承の準備で大切なのは、『何かあったら話をする』のではなく、
毎月の定例ミーティングとして位置付け、継続的かつ強制力を持って進めること。
◎扱うテーマは、運営面と経営面にわけて考える。運営においては、
例えば「スタッフとのコミュニケーション」「患者さんに価値が伝わり、通い続けるしくみ」
「情報の管理」「ルールの整備」など。
経営においては、「ビジョンやミッションの策定」「お金のマネジメント」
「人の採用や教育」などがある。
扱うテーマを先に明らかにすると、準備を進めやすくなる。











































