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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

ドクターを昇格させるときの考え方 技術の専門性をとるか、コミュニケーション力をとるか?

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2026.07.15 執筆者:和仁 達也

 

組織が大きくなり新たにリーダーを任命したいが、
「技術力」と「人のマネジメント力」を兼ね備えた人が見当たらない、
というケースはよく見かけます。
そんな時の発想法を歯科医院の事例で紹介します。

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ホワイト歯科は医院の発展とともにスタッフが育ち、
2人の勤務医がリーダー候補として成長してきた。

1人は男性の田中。34歳で技術力はあるが、実業家の親に
過保護に育てられた影響か、周りに気を使えず、
マイペースなところが気になるところ。

もう1人の勤務医は女性の伊藤。同じく34歳で、
技術力では田中に劣るが、スタッフとのコミュニケーションが
上手で院長とスタッフの架け橋にもなってくれているムードメーカーだ。

1年後に、この2人のどちらかに院長の次のポジションである
副院長を任命したいのだが、一長一短で決めきれずにいた。

そこでキャッシュフローコーチの和仁との定例ミーティングにて、
その議題を持ち上げた。キャッシュフローコーチは尋ねた。

「副院長に求める要件を、改めて言葉にするとどうなりますか?」

加藤院長は答えた。

「1つには勤務医への技術指導です。
これから新しいドクターも採用しますから、彼らの技術的な指導を
してもらいたいと思います。

それから、月1回の定例幹部会をやっていて、今は院長の私と
衛生士長と事務長で行っていますが、ここに副院長も
参加してもらいたいと考えています。
これは運営に関する話し合いです。

後は勤務医が増えてくるので、院長の意思を勤務医に
伝える役割もしてもらえたらと思っています」

キャッシュフローコーチはうなずきながら質問を続けた。

「なるほど。その上で加藤院長が気にかかっている点は、どんなことですか?」

加藤院長は答えた。

「田中の場合、独立開業を考えていないとの事なので、
安心して副院長を任せられるはずなのですが、なんというか、
おぼっちゃま気質というか、周りに気を配れないことが引っかかります。

技術力はあるので、それを勤務医に教える事は
できそうなのですが、マイペースでスピードが遅いので、
その点は任せきるわけにはいかないと思い、
私がサポートする必要がありそうです。

それから伊藤の場合、すでに結婚していて子供を産む予定がなく、
一生仕事をしたいと言っています。人当たりが良くて、
スタッフからの信頼も厚く、私も気兼ねなく話ができるので、
とても頼りになります。

ただ技術面においては田中には劣るのと、自分に自信がない
ところがあるのが気に掛かります。ただ、努力家で、
仕事が終わった後も貪欲に教えを求めてくる意欲があるので、
そこを高く評価しています」

つまり、田中と伊藤の良い点を掛け合わせれば理想の副院長に
なるのだが、今の時点ではそれぞれに良い点と課題があるとのことだった。

キャッシュフローコーチは話を整理しながら続けた。

「今の時点では、加藤院長が理想とする副院長には、
2人とも条件が達していないと言う印象を受けました。

今の段階で副院長を設ける必要が本当にあるのか、
をよく考えたいですね。もしこれから新たに入社する人が
副院長にふさわしかった時に、副院長をおろすことになるかもしれませんから」

加藤院長はうなずきながら答えた。

「そうなんですよね。そう考えると、今慌てて副院長を
任命するのはどうなのかなと言う気もします。

ただ、そのような人が入社する確約もない中で、
今の規模の当院を運営するには、やはり院長を補佐する立場が
いたほうが良いとは思うんです」

キャッシュフローコーチは2人のドクターの特徴を、ホワイトボードにメモしながら話を続けた。

「1つの案なんですが、副院長のひとつ前に、
別のポジションを設けると言うのはどうでしょうか。

歯科医院においてそのようなポジションはあまりないかも
しれませんが、参考まで聞いてくださいね。

まず、2人のドクターをリーダーとして任命します。
田中先生は、“エキスパートリーダー”、
伊藤先生は“マネジメントリーダー”にするのです。

エキスパートリーダーは主に技術面の専門的な指導をする役割です。
勤務医に対して高度な治療や知識を教えます。先程の話で、
スピードの遅さが気になると言うことなので、そこは院長が
当面はサポートする必要はあると思います。

そしてマネジメントリーダーは主に人のとりまとめや
運営面を担当する役割です。部署間の情報の橋渡しや
院長とスタッフの架け橋となり、
“安心安全ポジティブな場づくり”を担う存在です。

職場が安心安全ポジティブな場で笑顔にあふれる状況に
なれば、離職者も減り、スタッフの定着が増して生産性も上がるでしょう。
伊藤先生にはその立場から医院に貢献していただきます。

本来、副院長はこの両方の役割を担ってほしいところですが、
今回はそれが難しいと言うことなので、その2つを分けて、
それぞれに名前をつけると言う発想です」

加藤院長は大きく頷き答えた。

「なるほど!そのネーミングはいいですね。
両者の役割がはっきりして、それぞれに責任が明確になります。
そして今の段階ではどちらが上とも言いにくいので、
対等な立場でありながら役割が異なると言うのは実態に合っている気がします」

キャッシュフローコーチは続けた。

「毎月の幹部会にはマネジメントリーダーが参加すると良いでしょう。
診療中に幹部会を行っているとのことなので、
院長に加えて主力のドクターが2人共抜けるのは
医院の運営上難しいでしょうから、そこは
『マネジメントリーダーが幹部会に参加する』
という建て付けを予め明確にしておけば、エキスパートリーダーが
診療に専念する理由にもなると思います」

加藤院長はその点も同意だった。

「そうですよね。そこも気になっていました。
『幹部会に伊藤が呼ばれて自分が呼ばれないのはなぜか?』
と言う引っかかりも、先に説明しておけば大丈夫ですね」

強引に副院長を任命するよりも、当面はそこは空位にしておいて、
その前段階の役割を作り、目的に合わせた役職名を設ける。

今の医院の実態に合わせた体制の構想がまとまり、加藤院長はスッキリしていた。

 

【今回のレッスン】

◎副院長の要件として「技術力」と「コミュニケーション力」を求めることがある。
 その両方を満たす人がいない場合、それぞれの役割を分離して設ける道がある。
 それは「エクセレントリーダー」と「マネジメントリーダー」である。
◎それぞれの役割を明快に言語化することで、双方の納得感を得て、
 事前期待を整えることが重要。

 

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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