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社員を巻き込みビジョンを実現する キャッシュフロー経営って?

社員に還元しながら会社にお金を残すガラス張り経営3つの視点

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2022.11.30 執筆者:和仁 達也

 
ガラス張り経営の効果として、スタッフが当事者意識を
持ちやすくなり、モチベーションが高まる点があります。

そこには、成果に応じて報酬が還元される仕組みも必要です。

そこで、報酬面でスタッフにどのように還元されるのかの
考え方をご紹介します。

 
スタッフは粗利を生み出すことで、自らの給与やボーナスを
引き上げるチャンスを持てます。

その際に、【労働分配率】という指標を重要視します。

【労働分配率】とは字のごとく、労働に対して分配する比率で、
数式では「人件費÷粗利」です。

つまり会社が稼ぎ出した粗利に対して、
人件費をどれだけ分配しようかという目標値を年初に決めるのです。

 
その中には社長の報酬、社員の給料とボーナスなどが入っています。

社長の報酬と社員の給料は月々固定だとすると、
社員のボーナスを粗利と連動させるのです。
ちなみに、役員と社員の報酬の割合も予め決めておくのも手です。

 

 
● 労働分配率目標をキープできていれば、粗利が目標を超えるほどに、
 人件費の総額も増え、利益も増える。つまり、社員も会社も共にハッピーに。

 
年間を通して、【労働分配率】、すなわち粗利に対して人件費が
何パーセントかという目標を決めます。

仮に50%ならその範囲でボーナス原資が上下するわけです。
つまり粗利が目標通りいけばボーナス原資は予算通りもらえる。

もし粗利が目標を超えれば、人件費の枠も増えるので、
その分ボーナス原資は増える。

つまり社員にしてみれば、自分たちがもらえるボーナスの枠が増える。
粗利の目標達成状況が自分たちの収入に直結するということです。

 
実際のところ、多くの中小企業では、そのような成果と報酬の関係が
社員には公開されていません。

そのため、『頑張っても、頑張らなくても見返りはたいして変わらない』
というような発想になりがちです。

そこを変える鍵が、労働分配率をベースに
報酬を還元するという発想です。

 
【労働分配率】の計算の仕方はすごく重要なので、
もう一度ご説明します。

売上に対する人件費の割合ではなく、あくまでも
粗利に対して人件費が占める割合のことです。

 
粗利というのは簡単に言えば、売上から変動費を引いたものです。

変動費とは売上と連動していて、
売上が増えれば増え、減れば減る費用のことです。

例えば仕入代や材料代、外注費などです。
あと完全歩合制度の外注スタッフがいる場合、その人の報酬も含みます。

そして売上から変動費を引いて、会社に正味入ってくる
収入のことを粗利と言います。

よく社長同士の話で、「売上が上がった、下がった」という
会話は聞くのですが、「粗利が上がった、下がった」という会話は
あまり聞かないですよね。

だけど本当に大事なのは粗利なんです。
本当の意味で正味会社に入ってくる収入はいくらなのか。
ここについて議論する必要があります。

 

時々、
「(粗利ではなく)売上に対して人件費がいくらか、ではダメですか?」
という質問を受けるのですが、その見方はお勧めできません。

なぜなら、「売上に対して人件費はいくらか」という発想では
次のようなデメリットが生じるからです。

 

労働分配率を知らずに、安易にボーナスを出しつづけた会社の悲劇

例えば1年目で売上が1億円、粗利率が80%あったとします。
売上が翌年度にアップしたけれども、実はライバルとの競争も
あってものすごく値引きをしていた。

そうすると粗利は実はすごく減っているという場合もあります。

そういうときに、「売上に対して人件費がいくらか」という話
ばかりしていると、実は売上が上がっているから
人件費も上げていいような錯覚をしてしまうのです。

「売上が上がったからボーナスを多く出そう」と。

ところが粗利は下がっているので、
本当はボーナス原資すらも無いということもあります。

それに気づかずどんどん人を増やしたり報酬を引き上げていけば、
赤字になることは確実でしょう。

 

そこに気づかずに、目先の売上が上がったから
人件費も増やせるような気がしてしまう。

少なくとも社員はそう期待します。

特によくあるのは、

・「ここ数年、売上が下がっているから社員一丸となってがんばろう」
 と言って、がんばって、売上が上がった。

・営業マンは、売上を上げることばかりに気を取られ、値下げして受注していた。

・しかし、営業マンへの報酬が粗利ではなく売上に連動していて、
 結局は人件費が粗利額以上に伸びてしまった。

・その結果、気付いてみたら通帳にお金が残っていない!

 
なんて言うのは、伸び盛りの企業に本当によくある現象で、
人件費負担が急増するときの典型的なパターンです。

 

労働分配率目標の見つけ方

労働分配率の水準は業界によって異なります。

業界や規模によって違う場合がありますが、おおよその目安はあります。

業界別の標準値を詳しく知りたい方は、
全国の税理士事務所をネットワークしている
TKCのホームページ(https://www.tkc.co.jp/)で
業種別に公表されているので参考にするといいでしょう。

 
シンプルに考えるのであれば、まず50%を目安にします。

50%より多いのか、少ないのか。
あくまでおおざっぱな目安なので、別に50%でなければ
いけないわけではありません。

ただ40%以下だとすると、これはよっぽど生産性が高い
(つまり社員が相当稼いでいる)か、あるいは稼ぎの割に
社員に還元していないか、どちらかと言えるでしょう。

 
逆に60%を超えてしまっているとすると、
利益が出にくくなってきます。そうすると

「粗利に対して人が多過ぎるのではないか」

あるいは

「給料が粗利に見合わず高過ぎるんじゃないか」

という可能性も出てくるわけです。

もちろん、それを意図的にやっている場合もあります。
たとえば、

「うちの会社は借金がないので利益をそれほど出す必要がない。
利益を出して税金を払うぐらいなら社員に還元したほうがいい。
あるいは自分(社長)がもらったほうがいい」

というように。

そういう場合は、労働分配率は当然高くなりますが、
わかってやっているのであれば、特に問題はありません。

つまり、意図的にやっているのか、それとも構造的に
生産性が低い形になっているのか、を見極める必要はあるでしょう。

 
たとえば労働分配率が70%になると、人件費だけで
7割を占めるということになります。

一般的には、「その他の固定費」が人件費とほぼ同等か、
もしくは人件費の3分の2ぐらい掛かりますから、
そうなると、もう利益は出にくくなります。

利益が出ないと何がまずいかと言うと、
前にも触れた通り、将来の蓄えができず、
借金の返済が出来ないということです。

 
したがって、労働分配率の適正値は会社によって異なりますが、
ひとことで言うと、
必要な利益を確保でき、かつ社員にも
納得の報酬を払えているときの分配率が適正値です。

 

なぜ会社において、利益が必要なのか?

この話からもわかるように、利益をいくら確保するかによって、
人件費の枠が変わってきます

もし利益がゼロでもよければ、その分人件費の枠を追加できます。

つまり、予めいくらの利益が必要かを見極める必要があるということです。

それは利益を出した後に、お金がさらにいくら出ていくのかを知る
ことで解決します。

 
利益が出た後、税金を支払います。
税金を支払った残りから返済をしたり、設備投資をしたり、
場合によっては来年以降に積み立てていくためのお金を
残していくはずです。

ところが、「返済原資は、税引き後利益から出ている」
ということを理解していないケースも見受けられます。

それも社員ならまだしも、社長ですら、です。

仮に知識として知ってはいても、現実的に
腹に落とし込めていないようです。

 
例えば
「借金を月々50万円ずつ返していく必要がある」
という場合に、
「そうか、じゃあがんばって売上をあと50万円上げればいいんだな」
と短絡的に思う人もいるのですが、それは間違いです。

 
実際には50万円返済しようと思ったら、
税金を払うことを考えると、単純計算で
利益ベースで2倍の100万円は必要です。

利益がそれだけ必要ということは、当然
粗利ベースでもそれだけ必要なわけで、粗利率がもし
50%だとするとさらに2倍の売上がいるわけです。

そうすると200万円ぐらいは必要ということになります。

つまり、当初思っていた金額の3倍、4倍は
必要になってくることになります。

 
そこをなぜ見誤るかというと、
このような数字のメカニズムを把握しておらず、
全体像として捉えていないからです。

例えば、売上は売上だけ、人件費は人件費だけ、
返済は返済だけということで、ぶつ切りで把握している
経営者が多いようです。

そうすると売上のことを考えているときに、

「これだけ売上が増えると人件費にどれだけ分配できるのか?」

「返済をどれだけ進められるのか?」

「設備投資にどれだけ回せるのか?」

ということが連動して考えられていないということです。

 
よって、必達利益目標は、
「年間の返済額+設備投資額+来年以降会社に残したい金額+税金」
の合計で決まります

その金額については社長が自分で計算するよりも、
税金の計算も含めて顧問税理士に相談したほうが簡単です。

 

最終的にキャッシュがいくら残るのか?

「赤字にならなければそれでいい。税金を払うのは勿体無いし」
と考える社長がいますが、それは間違いです。

利益から税金を払ったあと、借金の返済や設備投資が
できるだけのお金がなければ、結局資金繰りが回りません。

さらに、在庫や売掛金の未回収などがふくれあがると、
「利益はあるのにお金がない」
ということで資金繰りに追われることになります。

売ることばかり熱心で、売掛金の回収や在庫の消化には無頓着な
社員がいたら、予めその社員にもきちんと教えておく必要があります。

たとえ目標を達成したとしても、

「売掛金が回収できず、貸倒れになった」

「商品在庫がさばききれず、不良在庫として残って損切りが必要になった」

ということでは、それは結局あとで会社の利益と資金繰りを圧迫します。

社長としても、そこに目をつぶったまま、社員に十分なボーナスを
還元できるはずがありません。

 
また、売掛金の回収期間よりも商品仕入や外注業者への
支払い期間のほうが短い条件だったりすると、
やはり資金繰りは苦しくなります。

この点も、社長としては必ず頭にいれておきたいことです。

 
よって結論として、数字を追いかける際には、次の3つの基軸を持ちましょう。

①売上、粗利、利益目標の達成を目指す

②労働分配率目標を定め、社員にもボーナスで
 還元される仕組みをつくる

③最終のキャッシュフローが黒字なら、
 安心してボーナスが分配できる

 

社長は経理の勉強はするな!これだけわかっていればOK!

「このコンテンツサイトで紹介されているような儲けの仕組みについて、
本来どこで学べばいいのでしょうか?」

そのような相談を受けることがあります。

しかし、経理や帳簿の仕訳を社長が勉強しにいくかというと、
現実的にはそれはまずありえません。

ありえないどころか、私は社長に
「経理の勉強はしてはいけない」と言っています。

なぜだと思いますか?

 
それは、
経営者は、経営の意思決定に必要な枠組みと基準を
持っていることが大切なのであって、
「どの費用がどの科目に振り分けられるのか」
を細かく知る必要はないからです。

 
もちろん知っているにこしたことはありませんが、
それより先に

「全体像としてどうお金が入ってきて、
どれだけ出て行き、いくら残るのか」

そのマクロ的な流れをおさえておくことのほうが経営には必要です。

だから今、本当に社長にとって必要なのは、
儲けの仕組みについて必要最低限のことを短時間で学ぶ
ということです。

もちろん決算書を読めるにこしたことはありませんが、
それをマスターするために掛かる労力と時間を考えると、
それはあまりお勧めできません。

それをさらに簡略化して、このコンテンツサイトでも紹介している
「お金のブロックパズル」で会社のお金の流れの全体図をつかむことが、
社長に把握してほしい最低限の必須ラインになります。

お金のことは、図で学びましょう!

 
この記事内容の理解をさらに深めたい方は、
執筆者によるこちらのセミナー教材が参考になります。

 

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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