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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

移転拡張か高額の設備投資か?優先順位は「一時」支出と「継続」支出の総額で判断しよう!

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2022.12.15 執筆者:和仁 達也

高額な支出が伴う投資においては、その優先順位を適切に
行わないと、あとで過大な借金に苦しむリスクがあります。

人気の店舗やクリニックが手狭になり
移転拡張するか、それとも質の向上を目指して
高額な設備投資をするか、で迷うとき、
どのように優先順位をつければ良いか。

今回はその判断の仕方を歯科医院を題材に紹介します。

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加藤院長は、迷っていた。
いよいよ手狭になった医院を移転して医院を拡張する時期に来たな、
と感じていた。

そして、同時にかねてから導入を検討していた、
高額の医療設備の導入もそろそろしたい。

しかし、その両方を同時にやるのは経済的に不安がある。
今は幸い患者さんに支持され、十分な利益も出ているが、
移転後もそれが継続する保証はない。

また、移転する以上は現状のチェア5台から7台体制に
増設することが前提だが、そのためにはスタッフをさらに
2人採用することになり、固定費もアップする。

この「移転拡張」と「設備投資」。同時にやるべきか、
どちらか片方だけにするか?
あるいは、どちらもやらないべきか。

元来、楽観的な加藤院長は、「どうせなら、両方一緒に!」
とも思いつつ、勢いで決めるのは危険なことの自覚はある。

一人で考えていても、頭の中で堂々巡りするばかりだったので、
キャッシュフローコーチの和仁に相談することにした。

「わかりました。まずは、状況を整理させてくださいね」

キャッシュフローコーチは前置きをしつつ、
医院の現状をヒアリングしながらホワイトボードに書き出した。

・医院の収支は、売上が7,000万円、粗利が5,600万円、利益が1,000万円で、
借金残高は4,000万円。

・移転拡張をする場合、内装工事や最低限の設備の入れ替え、保証金などの一時金、
新たに増設する2台のチェアで、合計1,800万円の支出を伴う。

・検討中の高額な医療設備の金額は、1,500万円。

ざっと概要を確認すると、キャッシュフローコーチは
いくつかの質問を続けた。

「ここで考えたいことは、
“一時的な支出”と“継続的な支出”の把握です。

移転拡張をした場合、“一時支出”として、
1,800万円が必要ということはわかりました。
では、それとは別に毎月発生する、“継続支出”には、
何があるでしょうか?」

加藤院長は、答えた。

「まず、家賃が今より月額10万円、アップします。
あと、スタッフを2人採用する必要があるので、
その給料やそれに伴うユニフォーム代や教育費などが増えるでしょうね」

スタッフの年収が350万円として、2人で700万円。
さらに増員に伴う固定費のアップを考慮して、
トータル900万円は見込んでおくことにした。
そこに家賃が年間120万円。

つまり、移転拡張の“継続支出”として
年間1,020万円の固定費アップが伴うことになる。

なお、同様に高額な医療設備の投資については、
1,500万円の購入額とは別に、年間数十万円の
メンテナンス料がかかる程度で、
大きな“継続支出”はかからないことがわかった。

キャッシュフローコーチは話を続けた。

「では、一方で新たな収入の見込みを考えてみましょう。
移転拡張してチェアが2台増えた場合、少なくとも
いくらの収入アップが見込めそうですか?」

加藤院長は、控えめな試算をすることにした。
今でも予約が一杯で患者さんを待たせていて、
次の予約が3週間から1ヶ月先になってしまう人がいる程だ。

チェアが2台増設できれば、少なくとも新たに
1日16人は見込めるはず。患者単価5千円として、1日8万円。

1ヶ月で20日の診療日数として160万円で、
年間1,920万円。粗利率80%なので、
1,536万円の粗利アップが見込めるだろう。

「ということは年間で、1,536万円の粗利アップ分から、
新たに増える継続支出1,020万円を差し引きして、
516万円の利益アップが見込めるということですね。

この利益で、一時支出の1,800万円の移転拡張の
先行投資分を回収するとなると、減価償却費と税金を別にして4年弱。

正確には税理士に減価償却費と税金をちゃんと
試算してもらう必要がありますが、
約5年で初期投資回収というイメージではないでしょうか」

加藤院長は、なるほどとうなずきながら、
ようやく状況を俯瞰でつかめた気がした。

ちなみに、高額な医療設備に関しては、
それに伴う収入アップは見込めないと判断。

患者の満足度は格段にあがるし、医療施設として
出来る範囲は広がるが、それが収入アップにつながるか、
と問われると直接的な増収にはならないと考えた。

キャッシュフローコーチは、
今回の「移転拡張」と「設備投資」の全体像を共有した上で、
院長に問いかけた。

「この状況を踏まえ、選択肢は3つあります。
1つ目は、両方を同時にやる。
その場合、さっきの試算からすると、初期投資の回収は
さらに数年伸びることになります。

2つ目は、設備投資だけをやる。
その場合、収入アップは見込めないとすると、
支出だけが増えて、その回収は従来の利益から行うことになります。

3つ目は、移転拡張だけをやる。
その場合、おそらくは5年以内に初期投資の回収が終わり、
それ以降は拡張により増えた利益分が積み重なっていくので、
経済的には余裕が生まれる見込みが高くなります」

論点が整理されたところで、加藤院長の心は固まった。
3つ目の選択肢にしよう、と。

それなら、先に十分な受け入れ体勢が整って
相応の収入が見込めた上で、診療の質のアップに向けて
安心して設備投資ができる。

つい、勢いで「どうせなら、両方一緒に!」なんて思いかけていたが、
きちんと優先順位を考えることが大事だな、と再認識したのだった。

 

【今回のレッスン】

◎数千万円レベルの支出を伴う投資の決断は、
事前に「一時支出」と「継続支出」を試算して、
その全体像を把握する。

◎その投資がもたらす収入と支出によって、
何年で投資回収できるか、を控えめに(堅実に)試算する。

◎その上で、選択肢を提示して、納得の決断をしよう。
決して、勢いだけで決断しないように。

 

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▶︎高額な設備投資の判断の仕方。本当にその金額を払うにふさわしい価値なのか?

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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