贅沢しているつもりはないのにお金がたまらない人へ。 お金を使う基準を確認しよう!
2025.09.15 執筆者:和仁 達也キャッシュフローコーチキャッシュフロー経営着眼点資金繰り
マイホームの購入のように、大きな買い物をしたきっかけで、
一気に財布の紐が緩むことがあります。
そんな時にチェックしたい着眼点と、そもそも
無理なくプライベートな支出を減らす発想を、
歯科医院の事例でお届けします。
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ホワイト歯科の経営が順調に軌道に乗り、子供が大学に進学した頃、
加藤院長は長年の賃貸マンション生活を終えて、新築のマイホームを手に入れた。
一戸建ての家は数千万円単位の大きな買い物だ。
あらかじめ想定していたものの、数十万円、ときには数百万円単位で
お金が出ていくことに戸惑いを感じていた。
買い物に対する金額の基準は相対的なもので、
一旦、数千万円レベルのものを購入すると、家具や家電などで
数十万円のものを買うのには抵抗がなくなってしまった。
普段なら「ソファーに何十万円もお金をかけられないな」と
感じることでも、「新築の時に買っておかなければ今後何十年も
買い替えないんだから、ここはケチるべきではない」と
自分に言い聞かせて、大奮発してしまう。
そうやって、冷蔵庫や洗濯機、乾燥機、食洗機、キッチン、
ベッド、ソファーに大型の壁掛けテレビを続々と購入した。
「まぁ、最初だけだから」の一言で、数十万円単位の支出が増えていった。
そして気がつくと、新居とは関係のない支出も増える。
子供の海外留学の費用で60万円、
両親の銀婚式のお祝い旅行で40万円、
新築のお祝いを兼ねた海外旅行で100万円と言う具合に。
気がつくと残高が大きく減っていて、さすがに加藤院長も危機感を覚えた。
そこでキャッシュフローコーチの和仁との定例ミーティングは、
今月は家計のキャッシュフローの見直しについて話し合うことにした。
キャッシュフローコーチは一通り話を聞くと、うなずきながら声をかけた。
「なるほど、一戸建てマイホームと言う高額な買い物をしたことで、
いつの間にかお金を使う基準が変わっていたようですね。
院長ご自身は改めて今のお金の使い方をどのように感じていますか?」
加藤院長は答えた。
「1つにはまさにその通りで、数千万円と言う大きな買い物を
したことで数十万円台の買い物が簡単にできてしまえるようになっていました。
以前ならもっと躊躇したり我慢していたはずなのですが。。。
そこには危機感を感じています。
それからこれは最近気がついたのですが、やはり心のどこかで
“贅沢をしていることへの罪悪感”があり、
その罪悪感を減らすために日々の支出をコツコツ節約というか、
我慢しているようなのです。
例えばスーパーでの買い物は夕方以降のタイムセールを利用したり、
ドラッグストアで毎月20日にあるダブルポイントキャンペーンが
あればその日にまとめて買うようにしたり、というように。
日々の細かな節約に注力することで、少しでもお金を貯めようとしています。
ただ、今話しながら気づいたのですが、
『小さな支出を我慢することと引き換えに、大きな支出をドンとしてしまう』
と言う、アンバランスなことになっている気もしています。
日々の支出を細かく節約する一方で、夫婦2人の旅行で数十万円を使っていて、
いかがなものかと思いますよね」
キャッシュフローコーチは笑顔で答えた。
「とても客観的に考察されていますね。今お話しされたように、
小さな支出を我慢することで罪悪感を減らして、
その反動で大きな支出をしてしまうと言うのはよくある落とし穴です。
これは支出のすべてをリストアップして、
何を使い、何を使わないかをちゃんと全体をとらえることが大切ですね。
場合によっては日々の細かな節約はそれほどしなくても良いから、
高額な何かを減らす、例えば旅行に行く回数を
今より3分の1減らすだけで十分手元にお金が残ると言うこともあるかもしれません。
あともう一つチェックしたいのは、
毎月継続的に支出を伴うモノの中身をチェックすることです。
いわゆるサブスクリプション型のサービスです。
今は様々なサービスが継続課金になっていて、
例えば動画配信や衣服や高級ブランドバッグのレンタル、
掃除用具、保険等、多岐に渡ります。
これらを全て把握せず、知らないうちにお金を払っている人も
多いようなのですが、加藤院長のご家庭はいかがですか?」
加藤院長は苦い表情で答えた。
「確かにそれはツッコミどころ満載な気がします。
動画配信だけでも複数加入していて、中には月に1度も観ていない
ものもあります。また保険についても20年前に入ったまま
見直しをしていないので、もしかすると今の実態に合わないかもしれません。
この機会にチェックした方が良いですね」
キャッシュフローコーチはうなずきながら言葉を加えた。
「そこは改善の伸びしろが大きそうですね。
最後に、これは人それぞれ価値観にもよるのですが、
加藤院長のように仕事が天職と感じられているような方であれば、
『仕事に関わる時間を無理のない形で長くする』という発想があります。
と言うのは、『人がプライベートでお金を使うのは余暇時間』だからです。
余暇が消費を促進させます。逆に働いている間は家計の支出はありませんよね。
つまり働いている間は家計は潤うのです。だとしたら、
『楽しく長く働ける工夫があれば、
お金の入りは増えて出は減るので家計に優しい』
と言えるのではないでしょうか」
加藤院長は答えた。
「なるほど、確かにそうですね。世の中の流れとして
労働時間を減らして余暇を増やそうという傾向がありますが、
そもそも私のように仕事が好きな人間からすれば、
その仕事の内容に変化を持たせることで、飽きずに楽しむことができそうです。
例えば通常の診療の仕事以外に、講演会でのプレゼンの準備をしたり、
本の執筆をしたり、地元の他の分野の医療機関と連携したり、
飲食店に紹介ツールを置いてもらったりするような活動は、
脳の違うところを刺激してくれます。
本業である診療の仕事とは異なるけど仕事といえますし、
それをやっている間はお金を使うのではなくお金が入ることにつながりますね」
加藤院長は、単純にお金を使わないという我慢による節約ではなく、
豊かな生活をしてお金が貯まる方向性を考え始めていた。
【今回のレッスン】
◎小さな支出を我慢することで罪悪感を減らして、
その反動で大きな支出をしてしまうと言うのはよくある落とし穴。
これは支出のすべてをリストアップして、何を使い何を使わないかを
ちゃんと全体をとらえることが大切。
◎毎月継続的に支出を伴うモノの中身をチェックする。
◎楽しく長く働ける工夫があれば、お金の入りは増えて出は減るので
◎家計に優しい。