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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

ドクターを雇っても、医院の資金繰りを圧迫しないためには?事前に計算しておきたい、たった1つのこと

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2019.03.03 執筆者:和仁 達也

歯科経営では1人ドクターの場合が多く、経営は安定しているところも多いでしょう。

その為、スタッフとして必要なのは「歯科衛生士」を雇う場合が多いです。

その理由は、開業時に設備投資の多い歯科医院では、資金繰りの問題もあり給与面でドクターを雇うことに抵抗があるからではないでしょうか。

しかし、もしあなたの医院がドクターであるあなた以外のドクターを雇うことで売り上げがアップするのならいかがでしょう。

ここで、注意してほしいことは、ドクターを雇えば売り上げが上がる!ということではなありません。

ドクターを雇ってチェア稼働を増やせば売り上げがアップする!
と単純な発想では売り上げはアップしても、利益を失ってしまい資金繰りが圧迫してしまう可能性があります。

ドクターを雇っても資金繰りを圧迫しないでしっかり利益を出す為に計算しないといけないことがあるのです。

その考え方をこれからお伝えしたいと思います。
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加藤院長は、院長室で悩んでいた。

歯科衛生士スタッフの結婚退社に伴い、新たに採用しようと募集をかけたところ、ドクターの応募があった。
せっかくだから、と面接をしたら、これが期待を大きく上回る人材だった。

医療人としてのマインド、仕事を通して成長したいという熱意、また親しみのある人柄と、どこをとっても素晴らしかった。技術レベルはまだまだのようだが、まだ29歳と若く、一定期間の教育でなんとでもなる確信が持てた。

だが、もともとの採用希望は歯科衛生士。

ドクターを雇えば、たしかに院長の忙しさは解消され、より多くの患者さんを診られるようになるが、心配なのはその人件費。

ホワイト歯科では、歯科衛生士なら通常22万円ほどの給料だが、ドクターとなると40万円。その差額は18万円。衛生士の給料の2倍近くの固定費がかかるのだが、果たしてそれに耐えられるのだろうか?

今日は毎月1回の経営ミーティングの日。ちょうど経営キャッシュフローコーチの和仁が院長室に入ってきた。院長は手早く事情を伝えると、キャッシュフローコーチは紙を取り出し、計算をはじめた。

「加藤院長のお悩みは、想定外に優秀なドクターの応募があって、できれば彼を雇いたい。だけど、ちゃんとお金がまわっていくのだろうか、という不安があって決断できない。そういうことですね?」

加藤院長はうなずきながら答えた。

「そうなんです。本来なら、衛生士1人を雇うだけで十分だと思っていたので、その差額だけでも月18万円、年間216万円もの固定費アップになるんです。残念ですが、あきらめるべきでしょうか・・・?」

キャッシュフローコーチは院長の話を聞きながら、医院の決算データに目をやった。
現状のホワイト歯科の収支は次の通りだった。

●年間売上が7000万円、院長の生活費を引いた後の利益が1000万円で、そこから借入の
返済を毎年700万円ずつ行い、あと6年での完済を予定している。売上はここ数年は微増が
続いている。

●院長は42歳で、年齢からもあと20年は働けるだろうから、キャッシュフロー上は良好な
財務状態である。

●歯科衛生士が一人辞めた枠を、新しい衛生士で埋めるのかドクターで埋めるのかが焦点。
「衛生士ではなくてドクターだからこそのメリット」がどれだけあるか、が鍵となる。

そこで、キャッシュフローコーチは院長に質問をはじめた。

「院長、もし衛生士ではなくそのドクターを雇った場合、医院の売上アップはどのくらい期待できそうでしょうか?

加藤院長は腕を組みながら、考えた。

「まず、今でも忙しくて曜日によってはアポを先に延ばしてもらっている状況なんです。
治療できるドクターが私一人ですから。なので、勤務医が入れば、即戦力として1日あたり今までより、少なくとも3人以上は多く診療できるはずです。あと、勤務医に保険診療を任せて、わたしが自費の治療を中心に診ることができたなら、自費の売上アップも期待できそうです」

院長の話を聞きながら、キャッシュフローコーチは電卓を叩き、計算を始めた。

ホワイト歯科では、保険診療の平均患者単価が5千円。つまり1日3人の患者数アップが約束されたならば、1日1万5千円の売上アップとなる。1カ月なら診療日数20日として30万円の売上アップ。粗利率が80%なので、1カ月あたり24万円の粗利アップが期待できる計算となる。

それだけでも、衛生士を雇った場合との人件費の差額分はカバーできそうだという目途が立つ。
あとは、自費の診療を積極的に受けていくことでプラスαの売上アップが見込めるならば、決して医院の収益を圧迫することにはならないだろう。

加藤院長は、電卓を覗きこみながら話を続けた。

「実は、かねてからこの規模でドクター1人体制というのは無理があると、うすうす感じてはいたんです。非常勤のアルバイトドクターは雇っていますが、医院に対する忠誠心は低いし、入れ替わりがあるので患者さんも不満に感じていました。そう考えると、そろそろ院長の右腕となる常勤のドクターを雇うべき時期にきているのかもしれません」

キャッシュフローコーチはざっくりとした目途が立ったことで、院長の背中を押すように話をつないだ。

「たしかにそうですね。概算としてはちゃんと採算は取れそうです。あとは、その勤務医1人が生み出すべき売上目標を明確にしてそれを達成できるようなサポートをすることが大切ですね。

具体的には、月40万円の給料を払うなら、ユニフォームや福利厚生費、教育費、その他の費用が付随してかかってくるので、最低でも1.3倍の固定費がかかります。つまり、52万円の固定費をペイできる粗利を彼が生み出す必要があるわけです。粗利率80%で割り戻してやると、月65万円の売上をつくれば、収支トントンというわけです。
初年度はこれを達成することを目指す。

そして、翌年は医院に収益をもたらす水準の売上をつくっていってくれれば、3年、5年スパンで見たら、今ここで採用すべきは衛生士やドクターか、より判断しやすくなるのではないでしょうか?ちなみに、計算を簡単にするためボーナスを外してお話しましたが、実際にはこれにボーナス分も考慮する必要がありますけどね。」

「よくわかりました。ここは、勤務医を採用して医院のさらなる発展を図るチャンスとして考えてみます」

加藤院長の目は輝きをとり戻していた。曖昧だった見通しに、たしかな手ごたえを感じているようだ。

【今回のレッスン】

◎ 一般的に、歯科医院においては、院長の考えに合うスタッフを見つけることは容易ではない。入ってもすぐに辞めたり、考え方の相違からお互いに違和感を覚えながら一緒に働いているケースも少なくない。

◎ だからこそ、理想にピッタリな人材が採用希望で訪れたとき、「どんな条件がそろえばその人を雇えるのか?」を予め明確にしておこう。その一つは、今回のような「人件費に見合う売上を生む可能性」の検証である。

 

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎スタッフ1人採用したら、いくらの売上アップが必要か? 医院に利益をもたらすための必達売上目標とは?

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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