東京ディズニーランドに学ぶ 絶妙な設備投資のタイミングとは?
2018.08.02 執筆者:和仁 達也キャッシュフロー経営設備投資
設備投資はいつするか?が重要で、買うタイミングを間違ってしまうと「こんな物買うんじゃなかった」
「失敗した」と後悔する場合もあります。
設備投資をすれば儲かるのではないか?と、買うか、買わないかで判断してしまうからです。
この記事では、東京ディズニーランドの設備投資方法を例に上げて、絶妙な設備投資のタイミングをお伝えしています。
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「パパ、また今度もディズニーに連れてってね!」
「あぁ、いいよ、また来ようね」
後ろの座席で興奮冷めやまぬ娘の声に笑顔で応えながら、加藤院長は車のキーを回した。
今日は久しぶりの家族との休日。加藤院長は、以前から娘にせがまれていた東京ディズニーランドに家族で遊びに来ていた。
1日明けてキャッシュフローコーチの和仁との面談日。加藤院長は昨日疑問に感じたことを持ちかけた。
「昨日久しぶりに東京ディズニーランドに行ったんですが、ランドとシーのほかにホテルや商業施設も出来て、どんどん大きくなっていて、びっくりしました。あれだけ設備投資をしていて、なぜちゃんとお金が回っていくんでしょうね?」
和仁はうなずきながら答えた。
「あそこが成功している理由はいくつかあるようですが、1つ歯科医院においても応用できる秘訣があると思いますよ」
「え、医院にも当てはまる秘訣?なんですか、それは?」
和仁はコップの水を一気に飲みほして話し始めた。
「それは、設備投資のタイミングです。セミナーで受講者からお聞きすると、多くの歯科医院が設備投資で失敗して後悔されています。加藤院長のまわりにも、いませんか?」
自分にも心当たりがある院長は、一瞬ギクリとしながら平静を取り戻して答えた。
「(汗)たしかに、そういう声はよく聞きますよ。あとになって『余計なモノを買うんじゃなかった』とか、『買うのを急いでしまった』とか。でも仕方がない面もあるんですよね。言葉巧みな営業マンに、『今週中に決断すれば、30%をサービスします』なんて言われると、つい急がないとって思っちゃうみたいです」
「そうですよね。買うかどうか、もありますが、買うタイミングをきちんと見極めることが大切だと思います。ディズニーランドがすばらしいのは、はじめから今の規模ではなかった点です」
「あぁ、たしかにディズニーシーやホテルや商業施設はあとから出来ていますね」
「そう、そしてパーク内のアトラクション自体も後から追加されて増え続けています。つまり当初から最大の入場者数を想定し、そこから逆算してはじめは少なめのキャパシティでスタートしているんです。そして来場者数が増えるに従って、器を大きくしていく。だから、最小限の投資で済むし、余計な休眠施設をつくらずに済みますよね」
「なるほど。でも、それが歯科医院でどう応用できるのでしょうか?」
「たとえば、歯科医院で来院者数に直接影響するのは、チェア台数ですよね。新規開業する方は、何台のチェアから始めるか、本当はもっとよく考えたほうがいい。『知人が3台でスタートするから』とか『ディーラーに勧められたから』ということではなく、1日の患者数の受け入れ数が1年目、2年目、3年目に何人かをおおざっぱにでも想定すると、また違った判断になると思いませんか?」
「たしかに、ウチの場合も、開業1年後は1日10人、2年後で13人、3年後で19人。4年後になってやっと3台のチェアが一杯に埋まって予約が1週間以上埋まる状態になりました。
ということは、はじめの2年半ぐらいは、2台のチェアで十分だったということになるのか…」
「そうです。結果論ではありますけどね。そして、4台目のチェアを増設するかどうかは、4年目以降、すぐ買うのか、それとももう少し待つのかは、今後の患者数の増減の見込みを踏まえての経営者判断となります。まあ、加藤院長の場合は、紹介で増え続ける患者さんにちゃんと対応しようということで、チェアの導入を決断されましたよね。それはそれでOKだと思います。
問題は、本当に必要なタイミングよりも早過ぎて、設備を片隅で眠らせて老朽化させてしまうことです。営業マンに煽られることもあるのでしょうが、多くの人が焦って早く買おうとします。でも設備を眠らせるのは、3つの意味で賞味期限を食いつぶすことになるんです。
1つは実質的な機能が陳腐化して使えなくなること。2つ目は機能的は使えても使い心地や流行面で陳腐化して使えなくなること。3つ目は、新しいモノ好きな人に多いのですが、飽きてしまって新しいモノが欲しくなること。その上、貴重な資金を眠らせることにもなって、効率が悪いんです。思い当たることはありますか?」
新しいモノ好きと指摘されて、加藤院長は冷や汗をかきながらもつぶやいた。
「う~ん、たしかにあるかも知れませんね」
(そうか、買うタイミングを間違えることは、目に見えないところで損になるんだな)
最後にキャッシュフローコーチは念押しをした。
「逆にキャッシュフローの観点からは、今すぐ買ってもいいものもあります。それは、それを買うことですぐに収入アップが見込めるものです。たとえば、すでに予約待ちの行列状態のときに導入する新しいチェア、医院の魅力がちゃんと伝わり新規の患者さんを呼び込む力のあるホームページ、そして患者さんに情報開示して健康観を高めるデンタルXのようなコミュニケーション・ツールなどです」
「なるほど・・・」院長はうなずいた。
そして、「買うか、買わないか」という判断基準に加えて、「いつ買うとベストか?」という判断基準を持とうと心に決めたのだった。
今回のレッスン
Q.今、この設備投資をした場合、実質的な賞味期限で、元を取れるだろうか?
せっかく買うなら、それをフル稼働させるベストなタイミングを考えよう。
<イメージ図>
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