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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

先に言えば“説明”、後で言えば“言いわけ” 「言いにくいけど伝えるべきこと」を、気負わず言うコツとは?

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2018.09.18 執筆者:和仁 達也

言いにくいけど伝えた方がいいことってありますよね。

特にビジネスの世界では、お客様にとって良いと思ったものが高い商品やサービスである場合は、「売り込み」と思われて伝え難い場合があります。

伝える時に、相手のことを考えて伝える場合に、ただこちらの都合で話してしまうと、相手には「説得」のように感じて敬遠されてしまいますが、お客様が知っておいた方がいいことを伝えることは、お客様にとって最善の選択肢を与えることになります。

この記事では、お客様に言いにくいことを気負わずに伝えるコツを解説しています。


高校時代の友人、木村から、久しぶりに地元に戻ってくるとの連絡があり、加藤院長は行きつけのバーに誘うことに

した。木村は障害者向けの住宅会社を経営している。

そしてアルコールが進むにつれ、長年の悩みを口にした。

「ウチは、障害者専門のバリアフリーの建築会社で、重度の障害をもった車イスの方でも、快適に生活できる家を目指して、もう10年になる。お客さんからは、『木村さんと出会えたことが奇跡です』とまで言われ、とても喜ばれててね」

「なんだよ、自慢かよ?」

加藤院長がからかった口調で言うと、木村はビールに少し口をつけると、力のない声で続けた。

「いや、施工に関わったお客さんからは喜ばれるんだけど、事業がなかなか軌道に乗らなくて。それはやはり、粗利率が低いからだと思うんだ。障害者向けの家は、普通の家と比べると、格段に手間がかかって、付加価値も十分あるから、本来なら30%以上いただいても構わないはずなんだけど、実際は20%程度でね。

でも、お客さんの予算とか、他社の相場が頭をよぎって、なかなか見積書に高い金額を書き込めないんだよ。お客さんからは、今でも『高い』と言われることがよくあるし。
せっかく、苦労してプランをつくってプレゼンしても、『見積が高いから・・・』と逃げられてしまう”恐怖感”もある。

『障害者のご家族から、本当にこんなにいただいてもいいのか?』
『”暴利”ではなく”適利”だと、自信を持って言えるのか?』

という、気持ちの迷いもあるんだ。

かといって、原価を下げるのも難しくてね。安い職人、安い材料を使うと、仕事のミスやトラブルも増えて、かえってお客さんに迷惑がかかる。
事業規模が小さいから、大量発注で仕入れ値を下げる事もできないし。

なんだか、八方ふさがりでさ。苦労してお客さんに喜んでいただくのはいいんだけど、結局お金は残らないわ、役員報酬も低いわで、今後もモチベーションを持ち続ける自信がないんだよ・・・」

木村の悩みは、思いのほか、深刻だった。加藤院長は、3年前の自分と重なり、声をかけた。

「わかるよ。その話は、歯科業界でも同じでね。
患者さんが、保険診療か自費診療かを選ぶとなると、ほとんどの人が『保険で』って言うんだ。

もし僕が患者だったら、間違いなく自費診療を選ぶんだけどね。だってその材料が、どれだけ長く持つか、身体への影響、見た目のきれいさなどをトータルで考えたら、保険診療では不十分だって知っているから。でも、ふつうの患者さんはそこまでの知識がないから、選択基準が『価格』だけになっているんだ」

木村は、自分のおかれている状況と共通していることが、少し慰めになった気がした。

「うん、まさに住宅業界と同じだな。とくに、ウチの障害者専門の住宅の分野では、ノウハウがちゃんと確立している会社は少ないし、手間がかかるので大手は手を出さないんだ。

たとえば、建築の前にちゃんと車イスの人が生活しやすい動線になっているか、扉の開閉方式から、ノブやスイッチの位置、段差に至るまで、手間暇かけて原寸大の模型をつくってシミュレーションするんだけど、そこには当然、人件費がかかるし、ノウハウの蓄積が必要なんだ」

「へ~、そこまでやるんだ。それは、一般住宅よりもかなり大変そうだな」

「そうなんだ。だから、たとえばそこまでやらないヨソの会社で3,000万円かかるのが、ウチだと3,500万円かかるようなことがあるんだけど、それがなかなか納得してもらえなくて・・・」

(まさに以前の僕と同じ葛藤じゃないか・・・)

加藤院長は、かつてはほとんどの患者さんが保険診療を選んでいたが、今では売上の半分が自費診療が占めている。そこまで変化したのは、患者さんに対して「ある働きかけ」があったからだった。

「木村、僕の経験でアドバイスすると、“お客さん教育”が必要なんだと思う、たぶん。なぜその価格になるのか、ちゃんと理由は説明しているのか?」

「うん、見積りのときにちゃんと説明している。まあ、伝えたつもりでも、伝わっていなけりゃ、意味ないよな・・・」木村は自嘲気味に答えた。

「ひょっとしたら、言っている内容はOKなんだけど、タイミングに問題があるのかも知れないぞ」

「え、タイミング?」

「うん。実は3年前に僕が改善したのは、そこなんだ。以前は、検査をしてどの治療にするかを選んでもらう段階になって初めて、自費の説明をしていたんだ。すると、自費の説明をし始めた瞬間、患者さんの顔色が変わるのが目に見えてわかるんだよ。
まるで『さっきまで親身になってくれていたドクターが、急に売り込みに走った商売人に変身した』とでも言わんばかりにね」

「なるほど、それ、すごくわかる」

「そのとき、気づいたんだ。患者さんは『どの診療が自分にとってベストか?』の選択基準を持っていない。だから、『できれば安い保険がいい』という思い込みをもってやってくる。

本当は、『食事を楽しめるか(健康)』『素材の質と健康のバランス(耐久性)』『素材の人体に対する影響(安全性)』『見た目の美しさ(審美性)』といった4つの基準があって、そこに『いくらかかるか(経済性)』との相談で決めるべきなんだけど、その4つのことを知らないから、一番わかりやすい『いくらかかるか=価格』が優先されてしまうんだ。

さらに言えば、価格だって、短期的には安い材料を使った方が負担は小さいように思えるけど、残りの人生、治療のやり直しや材料の劣化のリスクを考えると、生涯コストはかえって自費診療のほうが割安になることだってある。

だから、医院としてはそれを伝える必要があるんだけど、それを伝えるべきは、治療内容を選ぶときではなく、患者さんが最初に来院したときなんだ。あらかじめ、『当院は、こういうスタンスで診療をしています』という予告をしてあれば、『決して、暴利をむさぼるために自費診療を勧めているのではなく、患者さんにベストな治療を選択していただくために、必要な情報をお伝えしている』という真意がつたわりやすくなる。

それは、患者さんに聞かれる前に言っているから、相手も素直に聞きやすいわけでね。
先に簡単にでも説明してあれば、後で詳しく説明するときも、患者さんは心の準備があるから素直に聞いてくれる。

つまり、先に言えば“説明”、後で言うと“言い訳”なんだ。これは、ここ最近で学んだ大きな教訓の1つだな」

「なるほど、たしかにそうだ。選ぶ基準は、こちらがちゃんと教育しないといけないな。それに、伝えるタイミングに問題がありそうだ・・・」

木村は、深くうなずきながらなんどもつぶやいた。

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎言いにくいことでも言える環境をつくる為には経営者がどんな会社にしたいのかというビジョンをしっかり共有すること

 

今回のレッスン

◎ほとんどの患者さんは、「価格=安さ」以外の選択基準を持っていない。たとえば、安全性、耐久性、審美性、機能性、そして経済性。それを教えてあげる仕組みを医院として持とう。

◎理想的で納得の治療を選ぶには、「生涯コスト」にも言及しよう。

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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