上司と部下のコミュニケーションギャップを解消するコミュニケーション術
迷っている人に必要なのは、アドバイスより選択肢の提示。
2023.07.22 執筆者:和仁 達也コミュニケーション伝え方安心安全ポジティブな場づくり着眼点
迷っている人に必要なのは、「こうしろ」というアドバイスよりも
「AでもBでもCでもいいけど、どれがいい?」
と本人が明快に選べるようにしてあげること。
人の相談に乗る立場にある人に大切なことを
歯科医院の事例を紹介します。
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往診のボリュームが今後増えていくことが予想される
歯科医院での話です。
「これから当院は往診の割合が増えていくから、そのつもりで」
とミーティングで伝えた後、エース級の衛生士が
申し訳なさそうな顔をして、院長に言いました。
「すみません、もし今後、往診が増えていくなら、
辞めさせてもらいたいです」
理由は、自分が学んできたことを活かせないから、というものでした。
院長は、
「すぐに結論を出さなくていいから、よく考えて」
と再考を促したものの、衛生士不足の中、すぐに代わりの
スタッフを採用できるアテもありません。
本当に辞められては困ります。
そこで、どう声をかけたものか、と悩んでいました。
「医院の方針なんだから、わがまま言わずにやりなさい」
と言ったところで、圧倒的な衛生士不足な状況で、
衛生士が引く手あまたな環境の中では、強制力を持たない。
院長は、どうしてよいか決めあぐねていたので、
わたしは院長に選択肢を提示してみることにしました。
「院長、その衛生士への対応として次の3つの選択肢のうち、
どれかを選ぶとしたら、どれが一番しっくりきますか?」
A案:基本的に院内診療が中心で、今まで通りのボリューム
(月に2回程度)の往診をやってもらえばいい。
(往診が増える場合は、他の衛生士に任せる)
B案:他のスタッフと同等に、往診のボリュームを
増やしてもらうが、極端に増えるわけじゃない
(月2回が月4回になる程度)ことをきちんと数字で伝える。
C案:その他。
院長はしばらく考えた後、ハッとした顔をして答えました。
「B案です。よく考えたら、往診が増えるとは言え、
今の月2回が4回に増える程度であって、全体の中でいえば
大した数ではない。そのボリューム感をちゃんと伝えていなかったので、
過大に受け止めてしまったかも知れません」
迷っている人に必要なのは、「こうしろ」というアドバイスよりも
「AでもBでもCでもいいけど、どれがいい?」
と本人が明快に選べるようにしてあげること。
人の相談に乗る立場にある人に大切なことは、
「いかに多くの選択肢を提示してあげられるか」
ではないでしょうか。そんなことを実感する出来事でした。