上司と部下のコミュニケーションギャップを解消するコミュニケーション術
組織の行動を揃えるカギは、言葉の定義を整えること。
2025.09.22 執筆者:和仁 達也コミュニケーション伝え方着眼点
いくら言っても、スタッフがこちらの思う動きをしてくれない。
そんな時に確認したい、意外な着眼点について、歯科医院の事例を紹介します。
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同じ言葉を使っても、人によってそこからイメージするものは異なるようです。
例えば、サービス業において「ホスピタリティ」という言葉は
よく聞きますが、その定義を尋ねると、10人いれば10種類、異なります。
ある歯科医院でのことです。
患者さんへのスタッフの接し方にバラつきがあることが
院長の悩みでした。
院長はミーティングなどで事あるごとに
「ホスピタリティを大切にしよう」と口にするのですが、
その表現が人によって違うのです。
Aさんは、いつもにこやかな笑顔で印象は良いが、
不注意のミスが多く、ちょくちょく患者さんをイラッとさせる。
Bさんは、言葉遣いについては敬語が完璧で丁寧だが、
表情が硬くて親しみがなく、ちょっと無愛想で冷たい印象を与える。
Cさんは、敬語が苦手で言葉づかいが多少馴れ馴れしい
ところがあるが、常に先回りした動きができて、
気が利く面が評価されている。
「Aさんの笑顔と、Bさんの言葉づかいと、Cさんの先回りした動き。
この3人の良いところを寄せ集めると完璧なんですが・・・」
と苦笑いする院長に、わたしは1つ質問をしました。
「院長がスタッフに求める”ホスピタリティ”の定義って、
どんな感じですか?」
院長はしばらく黙って考え込み、答えました。
「それは、患者さんのことをちゃんと観察して、
心地よく安心して診療を受けていただけるよう、
配慮することだと思います。
その意味で、笑顔や言葉づかいも大切なんですが、
それだけでは表面的なように思えて・・・。
そうか!患者さんが、心地よく安心して診療を受けられるよう、
『一歩先取りした言動』をすること。
それが、わたしが求める”ホスピタリティ”です」
この会話の後、院長はスタッフに対して
「当院における”ホスピタリティ”の定義」を伝え、
具体例を繰り返し伝え続けたところ、
徐々にスタッフの動きが変わっていきました。
スタッフの動きに違和感があるときは、
言葉の定義を見直してみてはいかがでしょうか。