価値を伝える工夫で利益を増やす方法。契約率20%が30%にアップしたら、利益は何倍?
2021.05.15 執筆者:和仁 達也キャッシュフロー経営価値の見える化全員参加経営(オープンブック・マネジメント)歯科医院着眼点
売上アップのためにとにかくスタッフに「売れ〜!」
と大号令を出しても、その商品、サービスの価値を
しっかりとスタッフが理解していなければ、
お客様には伝わらずに思うように売上も上がらないでしょう。
逆に押し売りをされた!と思われてしまう可能性もあります。
価値を伝え、そこから得られる利益がどれくらいあるのかを
明確に「知る」ことで「医院のお金の流れと利益を生む仕組み」
を知ってもらうことができます。
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今日は、月に1度の院内お金の勉強会。
キャッシュフローコーチの和仁からホワイト歯科の
院長はじめ全スタッフに向けて、
「医院のお金の流れと利益を生む仕組み」を学ぶ時間だ。
今の医院の重要テーマの1つは、
「いかに患者さんに納得の診療(=自費診療)を選んでもらうか?」
だった。
何も無理やり自費診療を売りたいわけじゃない。
患者さんの立場に立って、
「もし自分がこの患者さんの立場だったら、
迷わずこの自費診療を選ぶ」のに、
その価値をちゃんと伝えられていないから、
価格の安さだけを理由に
「保険でいいです」となっているのが現状だった。
キャッシュフローコーチの話が始まった。
「今日は、キャッシュフロー経営の基本を学んだ
みなさんのために、大切な気づきをもたらす
キャッシュフロークイズを用意しました。
ある営業会社があって、そこの営業マンは、
新規で面談をすると20%の契約率で受注できているとします。
この会社の収支は、
売上が100、粗利率が80%、
固定費は70で利益が10です。
ここで質問です。
この会社の契約率が20%から30%にアップしたら、
利益は何倍になるでしょうか?
まずは、各自で3分間、考えてみましょう」
院長はじめ、スタッフはノートにメモを書き始めた。
スラスラ書き続ける人。
ブロックパズルの枠だけ描いたあと、ペンがピタッと止まる人。
横の人のノートをチラチラ見る人。
あっという間に3分が経ち、キャッシュフローコーチは続けた。
「では、隣同士で答え合わせをしてみましょう。
どんな答えになりましたか?」
スタッフは口々に思ったことを伝えあった。
「全然わからないんですけど!」
「なんとなくだけど、契約率が20%から30%に
1.5倍に上がったんだから、利益も1.5倍に増えるんじゃないかな」
「いや、1.5倍に増えるのは利益じゃなくて、売上でしょ?」
「あ、そうか。契約率が増えた分だけ、
売上が増えるんですよね。て言うことは、
利益はもっと増えるってことじゃない?」
頃合いを見計らってキャッシュフローコーチは口を挟んだ。
「はい、ではディスカッションはそこまで、ね。
ここで正解をお伝えします。
この場合、契約率が20%から30%にアップすると、
その分売上が1.5倍に増えますね。
だから、売上は150になります」
やっぱりそうだんだ、とスタッフたちはつぶやいた。
「そして、粗利率は80%なので、粗利は120。
さて、固定費は?」
「固定費は変わらないんですよね?」
とスタッフは声を上げた。
「そう、固定費はあくまで“固定”で
変わらないので、70のままだね。
すると、120から70を引くと、
利益はいくらかな?
50です。
つまり、利益は10から50に、
なんと5倍にもなるんですね」
スタッフから「お〜っ」と、軽いどよめきの声が聞こえた。
「これ、すごい変化だと思わない?
だって、契約率が20%から30%にアップしたら、
5年かかるはずの利益を1年でつくれちゃうってことですからね。
今はたまたま営業会社の例で話しをしたけど、
これを歯科医院に当てはめて考えると、
どんな気づきがあるかな?」
一人のスタッフが答えた。
「そうか、ウチの医院の自費診療を受けている
患者さんが、ちょうど患者数全体の20%なんですけど、
これが30%にアップしたら、
そのくらい利益が増えるってことですか?」
キャッシュフローコーチは笑顔で答えた。
「勘がいいですね〜!
まあ、厳密に言えば、さっきの営業会社と
歯科医院を同列に並べることはできないです。
というのは、営業会社が契約率20%ということは、
残りの80%の見込み客からは売上がゼロなのに対して、
歯科医院の場合、自費の契約率20%のとき、
残りの80%は売上がゼロじゃなくて
保険診療の売上が立っているわけだからね。
とは言え、それを加味しても、
利益のアップは軽く2倍とか3倍になる可能性は
秘めていることは感じてもらえると思うんです」
それを受けて、院長が話を続けた。
「ということは、
そこから最新の診療機器を買う資金も生まれるし、
がんばっているスタッフにボーナスとして
還元する原資も生まれるっていうことですよね。
ちゃんと患者さんに価値を伝える工夫を重ねることが、
患者さんにとっても、医院にとっても、
スタッフにとっても意味があることが
わかってもらえたんじゃないかな。
そういうわけで、次回は具体的に
カウンセリングのやり方をトレーニングしよう」
普段から院長が「ちゃんと価値を伝えよう」と
言っていることの意味が、スタッフにもさらに
一段深く理解できたようだった。
【今回のレッスン】
◎患者さんが納得の治療を選択できるよう、
「価値が伝わる工夫」をする。
それが医院の利益を何倍にも引き上げることにつながる。
◎そこから最新の診療機器を買う資金も生まれるし、
がんばっているスタッフにボーナスとして
還元する原資も生まれる。
◎つまり、ちゃんと患者さんに価値を伝える工夫を
重ねることは、患者さん、医院、スタッフ
それぞれにとって意味がある。
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