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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

ボーナスを支払うときに悩む理由とは?金額そのものより「どんな意図で決めたのか」を伝える!

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2024.12.15 執筆者:和仁 達也

 
経営者にとって社員にボーナスを支払う時に悩むのは、
「いくら払うか」と同時に「どのように、何と言って払うか」です。

今回はその葛藤と対策を歯科医院の事例で紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ボーナスの時期を間近に控え、加藤院長は院長室で思い悩んでいた。

例年より業績が良くスタッフの頑張りに報いてあげたいが、
多く支払うと「来年も同じだけもらえる」と誤解するスタッフが
いそうで不安だったからだ。

そこでキャッシュフローコーチの和仁との定例ミーティングでは、
ボーナスの支払い方について思考整理することにした。

キャッシュフローコーチが状況を確認すると、院長は次のように答えた。

 
「おかげさまで今年は売上は過去最高で、
目標も大きく上回ることができました。

これもスタッフの頑張りのおかげです。

なので、彼女たちにボーナスで還元したいのですが、
来年も同じ業績が出せる保証はないので、
来年以降に過剰な期待をさせてしまうのも不安でして・・・」

 
キャッシュフローコーチはうなずきながら答えた。

 
「加藤院長、お気持ちはお察しします。
確かに業績が良かったからこそ支払えたボーナスを、
来年以降ももらえると思われてしまったら、
それがもらえなかった時にスタッフのモチベーションが
下がる恐れもありますからね。

ここは具体的に考えていきましょう。

まずは、加藤院長がどうしたいかを聞かせてもらえますか?」

 
加藤院長はボーナス査定の表を見ながら話し始めた。

 
「今回私が特に気になっているのは、入社5ヶ月目の山本さんです。

彼女は当院のスタッフの入れ替わりが激しく人が足りなかった
数ヶ月間、積極的に出勤してサポートしてくれました。
向上心も高く積極的に学ぶ姿勢も伝わります。

ただ、不注意なミスが多くて、何度も注意するのですが
同じミスが続くのは気になっています。
あと口癖なんでしょうが、否定語が多いのも改善してほしいと思っています。

そのように改善点はありますが、トータルとしては
私の期待以上の仕事をしてくれているので、それに報いてあげたいのです。

ただ当院の賞与の規定では、入社6ヶ月目から
ボーナスを支払うことにしていて、彼女はその規定からすると
次のボーナスからになります。

それに厳密に従うなら今年のボーナスは無しになるんですが、
当院は年1回のみのボーナスなので1年も待たせる
ことになってしまうのが気になっています。

かといって、簡単にルールを破って良いのかどうか。
その辺がモヤモヤしています」

 
キャッシュフローコーチはうなずくと話をまとめた。

 
「なるほど、少し整理しますね。

院長の本当の気がかりは、あと1ヵ月入社が早ければ
支払えたボーナスを今回は払えない点が気になっている。

そしてボーナスが年2回なら『次の夏で支払うからね』と言えるが、
年1回なので1年も待たせるのはどうなのか。

あまり評価されていないのかな、と誤解されてしまうのが
気になっている。そんな感じでしょうか?」

 
加藤院長は大きく頷きながら答えた。

 
「そうなんです!気持ちだけで行動すると、
後でつじつまが合わなくなるのも心配だし、かといって
ドライにルールに従うだけが本当に正解なのか、疑問なんですよね」

 
キャッシュフローコーチは院長の話を整理した上で、考える視点を提示した。

 
「もしかすると今回の相談の真のタイトルは、
『どのようにボーナスを支払うか』ではなく、
『どんな言葉を添えて支払えば良いか』かもしれませんね。

つまり院長の気持ちとしては、スタッフの活躍に報いてあげたい。

ただ、気持ちだけが優先してルールを壊してしまうことは避けたい。

また、今回は業績が良かったから特別に行うことを、
来年以降も当たり前に期待されては困る。

それらを満たすアプローチができると良いですよね。

ポイントは3つかと思います。

1.基準の提示
2.今回は例外処置をする理由
3.今後の改善点。

つまり、本来はどうあるべきかを伝え、
今回は例外措置をする理由を伝えます。

と同時に今後の改善点も伝えることで本人に健康的な危機感を
持っていただくような話をしてはどうでしょうか。

例えば、次のような感じです。

 
『山本さん、当院のボーナスの件について説明しますね。

通常は入社後6ヶ月経過してからボーナスが発生します。
なので、その規定からすると山本さんは今回のボーナスは支給されず、
その次からの支給となります。

しかし、山本さんは入社直後から多大な貢献をしてくれて、
スタッフの不足時に積極的に出勤してくれたこと、そして
向上心高く貪欲に学んで仕事でそれを生かしていることを
私は高く評価しています。

それらを還元するのが1年後と言うのは、院長として
少し先過ぎると判断しました。

幸い今年は目標の売上を達成していることもあり、
本来の規定からは外れますが、特別にボーナスを支給します。
これは院長からの気持ちとして受け取ってほしいと思います。

 
そして今後の山本さんに期待することとして、
不注意のミスを何度か指摘したことがあったよね。
これはチェックリストを作るなどすれば解決できるので、
同じミスを繰り返さない工夫をしてほしいと思う。

それから口癖だと思うが、無理です、難しい、でも、などの
否定語が時々気になるんだよね。
口癖は自分の思考に大きな影響与えるし、周りの場の雰囲気にも
影響与えるので、これからは肯定語を意識して使うように
してもらえるとうれしいです。どうだろう、できるかな?』

 
と、このようなことを前置きして支払うと言うのはどうでしょうか」

 
加藤院長は明るい表情になって答えた。

 
「その言い回しなら伝わると思います。
そして私の思いも全て含まれているので、
モヤモヤがなく心から言えると思います」

 
キャッシュフローコーチはうなずいて今回の話を整理した。

 
「良かったです。ボーナスは成果の還元であり、
本来はスタッフの仕事ぶりを評価して、支払うか否か、
支払うならいくらにするかを決められるものです。

なので、そこにばかりフォーカスが向きますが、
今回の場合は『いくら支払うか』と同等以上に大切なのは、
『どんな言葉を添えて支払えば良いか』です。

金額そのものよりも、どんな意図でその金額を決めたのか、
をきちんと言語化することが大切ですね」

 

【今回のレッスン】

◎ボーナスの支払いにおいて『いくら支払うか』と同等に大切なのは
 『どんな言葉を添えて支払えば良いか』である。

◎金額そのものよりも、どんな意図でその金額を決めたのか、を
 きちんと言語化する。

 

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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