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精鋭CFコーチの 実践コンサルティング・レポート

何年も前から値上げを考えているのに、未だに踏みきれていない社長へ

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2020.11.27 執筆者:大久保 優子

 

一生懸命お客様のためを考えて事業をしてきて、
従業員もみんな頑張ってくれている。

お客様にも喜んでいただけているけど、
それに見合った利益が出ていない。

もう少し売り上げを上げられたいいけど、
それには値上げしかないこともわかっている。

でも、
値上げをしてしまうと
せっかく喜んでいただけているお客様を
悲しませてしまうのではないか。

また、
従業員からも
値上げをして
お客様を失ってしまうことへの反発で
モチベーションを下げてしまうのではないか?

と、相手のことを考えると値上げに踏み切れずに、
いつもモヤモヤした気持ちを抱えてしまう。

お客様のことや、
従業員のことを考えて、
このように
なかなか値上げに踏み切れない社長さんは、
とても優しい方なのだと思います。

値上げしてもいいんじゃないか…。

わが社の商品・サービスはもっと価値があるはずだが…。

社長なら、
一度や二度は
こんなお気持ちになったことが
おありではないでしょうか?

ところが、
一方では、

「お客様が離れていったら、どうしよう…」

「スタッフに反発されないだろうか…」

とためらうお気持ちもありますよね。

今回の社長も、
そんなご不安を抱えていた
お一人でした。

 

待ち行列のできている施設の社長との会話

「自宅いる時と同じように、
ゆったりとした時を過ごしていただきたい…。」

そんな家庭的な雰囲気や、
まるで、
家族ように親しみの感じられるスタッフの対応が好評で、

入居希望者の待ち行列が絶えない
福祉系事業の社長との
打ち合わせでのことでした。

「社長のお考えになるような、
スタッフさんの頑張りに報いるだけのお給料を払って、
そして、
利用者様にもご満足いただけるサービスを
これからも提供し続けるには、
もう少し売上げが必要そうですね。」

「それに、
利用者様からのご要望も多い、
カフェを新規オープンするには、
今から少しずつでも、
自己資金を準備し始めたほうが良さそうです…。」

会社のお金のブロックパズルを描きながら、
社長の夢を実現させる元手となる
必要利益額から逆算して
売上目標を立てました。

その結果、
目標を達成するためには
現行の価格設定のままでは難しいと
改めて分かりました。

 

頭では分かっている、分かってはいるけれども…

社長:
「うちは設備ビジネスだから
一度に受け入れられる利用者の上限は決まっている。

今の稼働率をキープしても
売上や利益の伸びは限られてしまう、
そういうビジネスモデルなのです。」

キャッシュフローコーチは、
社長に問いました。

「では、売上を増やすのではなく、
同じ売上のままで利益を増やす策を
考えてみましょうか?」

社長:
そりゃ、値上げをすればいいんだよ。
それに、
うちの料金設定が相場よりも
低めなのも分かっている、

それは分かっているんだが…。

コンサルタントから見ると
現行の価格設定はむしろ低すぎで、
値上げの余地は十分にありそうです。

なぜなら、
待ち行列ができているのですから。

だとすると、
価格改定の難しさは、
社外ではなく、
社長の心の中にありそうです。

そこで…。

社長にはお願いして2つのことをやってもらいました。

 

お客様にしているもの・こと(提供価値)に向き合う

まず、
施設のマネージャーから
スタッフさんにお願いして、
朝、利用者にご挨拶をするところから、
おやすみなさいを言うまで、
1日を通じて、
どのような作業、
サービスを提供しているのかを洗い出し、
箇条書きにしてもらいました。

お部屋に季節の生花を飾ること、
入居者の好物の和菓子を
わざわざ車を運転して買いに行っている事、
等々…。

スタッフさんが
箇条書きにしてくださったメモからは、
ご利用者の気持ちに寄り添った
献身的なサービスをされていることが窺えました。

次に、
マネージャーにお願いして、
箇条書きされた1つ1つについて、
課金されているのか、
無償で提供されているのかを分類し、
後者にはチェックをつけてもらいました。

結果は…。



18項目が無償提供にチェックがつきました。

つまり、
利用者への提供サービスや作業は
計93項目ですが、
そのうち18項目は
無償奉仕で行われていたのでした。

キャッシュフローコーチ:
社長、
とても細やかな対応をされていることが改めて分かりました。
本当に素晴らしいですね。

ところで、
スタッフさんも大忙しではないでしょうか?

社長:
そうなんです、
法律で定められた基準内の人員では
とても対応しきれません。

ですので、
うちでは、
規定以上のスタッフを常時配置しているんです。

 

無償提供しているサービスに仮の価格をつけてみる

キャッシュフローコーチ:
そうでしたか…。
スタッフさんが作ってくれたこのメモと、
今の人員配置のことを
頭の片隅に置いていただいて、

無償提供している項目の隣に
仮の料金を書いてみてもらえませんか?

もし、社長が、
この施設に大切なご家族を託しているとしたら、
各項目においくら位なら支払ってもいいと思いますか?

社長は、
時々ペンを止めながらも、
これまで無償提供していた項目の1つ1つに
仮の値付けをしてくださいました。

半分くらいまで進んだ時、
これまで値上げをためらっていた社長の表情が変わりました。

キャッシュフローコーチ:
社長これをご覧になって何か感じた事はありませんか?

社長:
これだけたくさんのことをしているのだから
現行の料金よりも、
もう少しいただいてもいいんじゃないかと思います。

 

お客様に伝えた結果は?

翌月の訪問日、
社長からはこんな言葉が聞かれました。

ご利用者様の家族にご説明をしました。
個別のサービスに値を付けて請求するのではなくて、
基本料金を上げる事にしました。

ご家族様の誰1人として
値上げに反対をされる方はいらっしゃいませんでした。

ありがたいことです。

そして、
もう一つ、
嬉しかったのは、
スタッフからも値上げに対する反対はなく、
あのシートを記入したことで、
自分たちの仕事を
改めて見直してくれたような気がします。

私たちの仕事は、
人が人にサービスを提供します。

ですから、
安価で高品質、良質なサービスと言うのは
無理をして一時的に成立させることができても
継続するのは難しいのです。

今回の件で、
稼働率が高くても利益が残らない理由も実感できました。

利用者様に
日々ご提供している価値を見える化したことで、
改めて
喜んでいただけるサービスを提供している
という自負も生まれました。

それに、
スタッフも
自分がやっていることに
プライドを持って働き続けられる、
そんな雰囲気が
少しずつではありますが、
感じられるようになりました。

 

後日談

社長が決めた値上額は、
無償提供の項目の1つ1つにつけた
仮の価格の合計よりもだいぶ控えめで、
近隣の相場と比べても同等レベルまででした。
(コンサルタントとしてはもう少しいいんじゃないか、
と余計な事を思ってしまいます)

それでも、
今回の価格見直しで
(設備等や新規採用等の支出をしなくて)
利益が増え、

そして、

利用者様からの
ご要望も多くいただいている
カフェの開業資金も
積立てはじめられるようになりました。

副次的な効果として、
今回の事がきっかけとなり、
マネージャー層も適正価格の設定や、
収益性について意識するようになられた
とのことでした。

 

今回のまとめ:

社長が、
頭では必要と分かっていても
値上げに進めない時は、
まず提供価値の見える化をしてみましょう。

見える化をする際は、
Step1:まずは顧客に頻繁に接しているスタッフに
  提供サービスや商品を網羅的に洗い出してもらう
(複数のスタッフに依頼することで
項目のモレを減らし、
期限内に集まりやすくもなります)

Step2:次にマネージャーに、Step1のリストを渡し、
  無償提供されている項目をピックアップしてもらいます

Step3:最後に、社長が無償提供されている各項目に
  仮の価格をつけてみましょう

仮の価格を合計して、
現在の提供価格と比較し、
社長の心の中にどんな思いが湧いてくるか、
そっと向き合ってみましょう。

 

上記の一連のプロセスに、
スタッフやマネージャーにも参画してもらうことで、
各自が自分の仕事の価値を再認識する
きっかけにもなります。

もし、
頭の中だけでなく、
社長のお気持ちの上でもご納得されたら、
お客様に伝える日を決めましょう。

 

以上

社長からの後日談をお聞きできる日を楽しみにしております

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  • 大久保 優子

    経営者のビジョンを言語化し、経営数字の裏付がある計画化、実現までを伴走支援する社長補佐官(R)。外資系IT業界にて管理会計やビジネスインテリジェンスソリューションの導入支援に参画後独立。海外拠点立上げ、現地スタッフ育成も得意とする。目指すは海外でも一目置かれる会社。
    株式会社Office優for YOU 代表取締役 MBA 中小企業診断士 ノースカロライナ州政府日本事務所 海外展開アドバイザー

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