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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

インフルエンザの予防接種を全額医院負担で全スタッフに受けさせる理由とは? スタッフへの還元の仕方にバリエーションを!

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2018.12.03 執筆者:和仁 達也

働き方改革が政府主導で叫ばれ、人件費の高騰や人手不足は経営者にとっては深刻な問題になっています。

働きやすい会社にし、退職を防ぐためには何も人件費アップだけではなく、福利厚生の面でも可能です。

そして、その福利厚生が、スタッフのためなのはもちろんですが、医院のためにもなるのならばいかがでしょうか?

この記事では、スタッフへの還元の仕方のバリエーションを解説しています。

「今期もほぼ目標通りの決算を迎えられそうだな」

この日の診療を終えた加藤院長は、院長室で決算数字を眺めつつ、コーヒーを味わっていた。
そして、業績がよかったことに喜びつつも、それをどうスタッフに還元するかで悩んでいた。

「ボーナスに上乗せしてあげてもいいんだけど、今期は臨時収入があって、それが来期も続く保証はまったくない。ボーナスを一度ガンとアップして、次のとき下がっていたら、きっとガッカリするだろう。

今年はスタッフの入れ替わりもあって、キャッシュフローの教育も不十分だから、『ボーナスは業績還元なので、今後も同額を保証するものではない』と言っても、なかなか理解できないだろうし。金額にしたらたいした額にはならないけど、これが既得権になって毎年期待されてはたまらない。どうしたらいいか?」

この晩は、馴染みの居酒屋で、小さな製造業の会社を経営している友人の鈴木との会食だった。
加藤院長は、歯科業界内の発想に偏らないよう、意図的に異業種の人脈を大切にしていた。

「仕事の調子がいいみたいだね」

鈴木はビールをグイッとあおると、照れ笑いを浮かべながらうなずいた。

「あぁ、おかげさまで東南アジア中心に仕事が増えていて、この厳しいご時勢の割に順調で忙しいよ」

「そうか、じゃあ、社員にボーナスははずんだの?」

「いや、今だけかもしれないので、ここで一気にボーナスを増やすのは怖い」

「うん、わかるよ、同感だ」

「その代わりに今年は、1つ新しいことをやってみたんだ。それは、インフルエンザの予防接種を全額会社負担で全社員に受けさせることにした。これが社員から好評でね」

加藤院長は驚いた。

「え、全額会社負担でかい?ずいぶん、気前がいいなあ。自分の健康のためなんだから、せめて半額負担くらいでいいんじゃないの?」

「うん、税理士や同業者からもそう言われたよ。『非常識だ』とか『そこまでしなくてもいい』って。でも、僕なりに意図があってね。

社員の健康面のサポートをしたいということ以外に、実は狙いが2つあるんだ。

1つは、インフルエンザで休まれたら、稼働力が下がるだろう?ウチはおかげさまで受注量に生産体制がギリギリ追いつこうとしている状態だから、1人でも欠勤がでると、売上ダウンに直結するんだ」

それは、加藤院長も納得だった。

「言われてみれば、ウチの医院もそれは同じだよ。この間、衛生士が1人風邪で休んだんだけど、1人足りないとその分患者さんを待たせることになるから、まわらなくなってしまうんだ。待ち時間も長くなって、患者さんのクレームも増えるし、出勤しているスタッフの負担が増えて、かなり大変な思いをしたんだ。
それにしても、全社員の予防接種を全額会社が負担するなんて、やっぱり気前が良すぎると思うんだけど?」

鈴木は続けた。

「もう1つ狙いがあってね。それは、予防接種が3千円として、これを現金で受け取った場合と、インフルエンザの予防接種を会社負担でプレゼントした場合と、どちらが感謝されると思う?」

なるほど、と加藤院長はパチンと指を鳴らした。

「そうか!同じ3千円でも、どういう渡し方をするかで、印象がまったく違うわけだ。
3千円を現金でもらうよりも、『身体を大切に、インフルエンザにかからないよう、予防接種を医院が全額負担するから、受けてきなさい』と伝えたほうが、スタッフを大切にする医院なんだ、という印象にもつながるし、意外性があって、インパクトも大きい。

それに、インフルエンザにかかって欠勤されるリスクが下がるのなら、医院の運営に支障をきたしたり売上がダウンするのを予防する“保険”的な意味合いもある。ダブルでお得ってわけだ」
その話から、加藤院長はもう1つ思いついた。

「そうだ、これまでドクターがレセプト計算をやっていたのを受付スタッフに引き継がせようと思いつつ、なかなか手つかずだったが、研修に派遣してマスターさせよう。9万円の研修費を全額医院負担してあげると言ったら、スタッフ本人にしてみればタダで資格取得できて一生使える資産になるのだから、きっと喜ぶだろう。医院としても、ドクターの負担が減って、より診療に専念できるから、ダブルでメリットがあるぞ」

鈴木はうなずいて、つぶやいた。

「うん、それはいいアイデアだな。お互い、せっかくなら“生きた”お金の使い方をしたいもんだ」

今回のレッスン

◎ 限られたスタッフ還元予算。どういうカタチで渡すと、スタッフに喜ばれ、感謝されるかを考えてみる。

◎ それがまわりまわって医院のメリットにもつながるシナリオを考えてみる。つまり、投資効果を最大化する“生きた”お金の使い方を工夫しよう。

(注)ただし今回のお話は、あくまでスタッフが安心して生活できる収入(給料・ボーナス)があった上でのこととご理解ください。

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎「院長は、自分ばっかり良ければいいんだ」とスタッフから誤解されないために、 スタッフに業績を還元する効果的な方法とは?

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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