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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

「まとめ買いはお得です」の誘惑に乗る前に! お金の使い方には、時間軸の発想を持とう

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2018.08.16 執筆者:和仁 達也

「まとめ買いは安くなる」

という認識を持っている人は非常に多いと思うのですが、スーパーでも1個40円のジャガイモが3個だと98円だったり、ネット通販でも、カタログ通販でも1個より複数買いはお得です。

ということは、主婦でも、子供でも知っているという認識はあると思います。

そして、本当は今日必要で1個でいいのに、「お得だから、どうせ使うし!」とつい複数買いをしてしまう場合が多いのではないでしょうか?

しかし、客観的に考えてみたときに、それは本当にお得だったのかと考えてみるとどうでしょう?

日常の生活でよくある「まとめ買いはお得」という誘惑と同じように、経営の現場でも少しでも経費を削減するために「まとめ買い」を利用するという人も多いのですが、実際には本当にそれはお得だったのでしょうか?

この記事ではそのような疑問にお答えすべく、お金の使い方を知ることでわかる、時間軸の発想をお伝えしています。

大学時代の後輩の田中から、久しぶりに電話がかかってきた。彼も今では開業して10年以上になる歯科医院長だ。「今後のことで相談したいことがある」というので、加藤院長は最近行きつけのショットバーに誘った。先日お気に入りのバーボン「フォアロゼス・プラチナ」のボトルを入れたばかりだった。

ここ数年のお互いの近況を一通り話したあと、田中は、かなり水で薄めたバーボンを一口のどに流し込んで、「それで、加藤先生に相談なんですが」と本論を切り出した。

「今チェアが3台でやってきて、2週間以上先まで予約が一杯で、これ以上患者さんを待たせるのも申し訳ないし、そろそろ拡張を、と思っているんです。それで先日、業者に見積もりを出してもらったら、『チェアを2台まとめて入れたほうが、かなり割安になる』って言われまして。チェアを入れるなら、拡張工事も必要だし、スタッフも採用しないといけないから、それなりの出費になります。だいたい1000万円ぐらいでしょうか。
でも、こういうご時勢だし、本当にこんなチャレンジをして、大丈夫か不安なんですよね」

「そうか、田中も頑張ってるなぁ。それだけ患者さんを待たせている状況なら、たしかにチェアを増設したほうがいいかもな」

氷をカランと鳴らしながらバーボンを口に運び、加藤院長はうなずきながら答えた。

聞けば、田中歯科医院は借金の返済も大方終わり、院長とスタッフ3人、チェア3台で手堅く医院経営を行ってきた。取り立てて宣伝活動はしてこなかったが、患者の口コミで患者は増え続けてきた。

ただ、半年前から「治療して治ったら終わり。そして、悪くなったらまたおいで」というスタイルに限界を感じ、「3か月ごとに定期メンテナンスに来院する」“予防スタイル”を積極的に進めていったところ、とうとうチェア3台では受けきれなくなったというのだ。

加藤院長は、日ごろのキャッシュフローコーチとの会話で、「僕が田中の立場だったら、どんな質問や提案をされるだろうか?」と想像しながら、模擬コンサルを楽しむような感覚で田中に質問を投げかけた。

「ここ数年は、患者さんの増え方は、どんなペースなの?」

「3年ぐらい前から、いつも予約で一杯で、どちらかというと、増やしたくても増やせない感じなんですが、でも積極的に働きかければ、まだまだ増える手ごたえはあります。
僕の医院はすごい田舎にありまして、近くにも3件ほど歯科医院はあるんですが、ドクターがもうかなりの高齢で、患者さんがだんだんこちらに流れてきている感じです」

話しぶりからは、田中は「ここで一気に拡張を推し進めていこう」と半分心を決めている様子だった。

加藤院長は、別の角度から質問を切りこんでみた。

「そっちのほうでは、歯科衛生士の求人はどう? 募集すると、すぐに見つかる?」

田中の表情が一瞬、硬くなった。

「いえ、それがここ1~2年ぐらい、急に採用が反応が悪くなったんです」

「そうか、いまはどこも人不足だからね。いわゆる少子化の影響に加えて、そもそも衛生士学校に入学してくる生徒自体が急激に減っているそうなんだ。学生のほうに選ぶ権利が増えたから、歯科衛生士のなり手が、僕たちの予想をはるかに超えて、激減しているらしい」

その言葉には、田中もなるほどとうなずいた。「わかるような気がします」

「しかも、この不況だ。田中の医院は別格かも知れないけど、いま僕の周りの多くの歯科医院では、患者が歯科への支出を控える傾向があってね。売上を維持するだけでも大変なんだ」

それを聞いて、田中は思うところがあったのか、不安の表情を隠さなかった。

「たしかに、最近ウチの医院でも、完治する前に来なくなってしまう“途中離脱”の患者さんが目立つようになってきました。そういう意味では、あまり楽観視できないような気がしてきました」

ここで加藤院長は、意外な質問を田中に投げかけた。

「さっき、チェアを2台導入して、拡張工事をしたいと言っていたよね。それに合わせて、スタッフも入れる、と。なぜいきなり2台入れるの?まずは1台だけでもいいんじゃない?」

「でも、営業の人が“2台まとめて買うと、割引率が良くなる”というものですから」

「じゃあ、具体的にいくら得するの?」

「え!?・・・・・・それは聞いていないです」

加藤院長は、ふうと息を吐いて言った。

「だろ? それじゃあ、営業の思うツボだよ。向こうは、少しでも売り上げを増やしたいんだから。でもよく考えてみなよ。1台にしておけば、はじめの半年か1年はそれだけで十分かも知れない。逆に2台もあれば、スタッフも余計に雇って人件費も増える。人が増えれば、それに伴ってユニフォームとか研修費とかいろいろ固定費もかさむだろ?」

「たしかに、1台だけなら多少無理をすれば、拡張工事をしなくても済みますから、かなり投資資金はおさえられます。そのほうが、手堅い気がしてきました」

「うん、それで追加した1台では足りなくなるのを見極めて、さらに2台目を導入するんだ。
ついつい、“値引き幅が増えて得する”という話には飛びつきたくなる気持ちはわかるよ。
でも、今のような逆風の時代には、万が一に備え、リスクを手堅くしたほうがいい。

それに、業者のほうだって、売りたくて仕方がないんだから、“今すぐは買えないけど、1年後予定通りに患者が増えたときには、間違いなくあなたから買うから、良い条件を提示してよ”って交渉してみる余地はあるんじゃないかな」

田中の表情がパッと明るくなった。

「なるほど!そうですね。“2台の拡張か、現状維持か”の二者択一でしか考えていませんでしたが、中間を選ぶ道もあったんですね。しかも、交渉の仕方次第では、おいしいどころ取りができるイメージも描けました。さすが加藤先輩ですね。ありがとうございます!」

(今日は、自分がキャッシュフローコーチになったような、妙な感覚だな。きっと、和仁さんはいつもこんな感じで僕のことを見ているんだな)

加藤院長は、いつも間にか、客観的なアドバイスを人にできるようになった自分を、少し誇らしく思った。そして、バーボンを飲みほし、いい気分で「自分に」酔っていた。

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◎大きな設備投資をするときは、「お得」と「万一のリスク」を数値化して、比べてみよう。

◎選択肢は「二者択一」だけとは限らない。その真ん中の「おいしいどころ取り」ができないか、を考えてみよう。

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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