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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

治療と予防の採算シミュレーション 予防メンテナンスは、本当に採算が合うのか?

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2018.09.03 執筆者:和仁 達也

近年予防歯科が注目されていますが、単価の落ちる予防メンテナンスでは、
治療よりも価格差が出てくるため、積極的に展開しようとしても、どうしても「収益」が気になってきます。

採算が取れているのかいまいち実感がないし…

増えてきたのはいいことだけど、このまま売り上げも落ちてしまうのではないだろうか?

そのような「心配」もありますよね。

この記事では、予防メンテナンスの収益の考え方を解説しています。

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毎月1回の経営会議。加藤院長は、経営キャッシュフローコーチの和仁と一緒にここ半年のデータを眺めていた。

「半年前と比べて予防メンテナンスの患者さんが全体の3割近くまで増えてきました。
初診の患者さんに対するカウンセリングが定着してきた感じがあります。
これは、うれしい傾向なんですが、果たしてちゃんと採算も合うのでしょうか?」

加藤院長の不安はこうだった。

・予防メンテナンスが増える。

・その分、治療の患者さんの枠を奪う。

・治療と比べて、患者単価が低い予防メンテナンスの枠が増えると、全体として売上が減る。

たしかにホワイト歯科では、治療の患者単価(1人の患者さんの1回来院あたりの平均の収入)は、保険診療の場合で5千5百円、自費診療で3万円で、いずれも1時間ほど使っている。

それに対して、メンテナンスでは、患者単価は5千円。使う時間はやはり1時間。
保険診療で治療するのと比べればさほど違わないが、自費診療と比べれば、格段に差がある。

キャッシュフローコーチは尋ねた。

「加藤院長、今、チェアの埋まり具合はどの程度ですか?4台あるチェアがすべてフル稼働している状態を100%としたら、今は何%でしょう?」

「う~ん、そうですね。日によってばらつきはあるけど、だいたい80%ぐらいですね」

「なるほど、では、あと20%は患者さんが増えても、チェアの増設や診療日を増やしたりしなくても、対応は可能ということですね?」

ここでキャッシュフローコーチは、コストパフォーマンスという概念について解説し始めた。

「これまで保険診療においては、ドクターが1時間かけて5,500円の収入を得ていました。
予防メンテナンスでは、衛生士が1時間かけて5,000円の収入を得ているとします。

これは、どちらがトクでしょう? 簡単な計算をしてみましょうね。

仮にドクターの月給が50万円、時給換算で2,840円だとしましょう。
同じく衛生士の月給が22万円、時給換算で1,250円。(月22日、1日8時間として)

治療のほうは、時給の高いドクターが5,500円の売上。しかも、治療は変動費がかかりますから、実質の手取りである粗利は、80%として4,400円。
研修費や器具・機械の購入、医院の家賃、旅費、広告宣伝費など『その他の固定費』が本当はかかってきますが、ここでは話をシンプルにするため、外して考えます。
すると、粗利から人件費を引くと、利益は1,560円となります」

「1件あたりの利益が1,560円ですか、でも、実際はここから医院の家賃とか、リース料なども引いて考えないといけないんですよね。そうすると、あまり残らないような気がするなあ」

加藤院長は思わず、腕を組んでつぶやいた。

「そうです。もちろん、これは1件の治療にドクターが1時間使っている、という前提なので、もっとスピードアップすれば、その分、さらに利益が生まれますけどね。

さて一方、メンテナンスの採算を考えてみましょう。

メンテナンスは、ドクターよりも時給が低い衛生士が5,000円の売上。金属などの変動費がかからないので、売上がほぼそのまま粗利。すると、粗利から人件費を引くと、利益は3,750円になります。なんと、保険診療の場合と比べて、2倍以上の儲けが出る計算になります」

「う~ん、そうか。売上ばかりに目を奪われていたけど、実質的な儲けとしては、メンテナンスのほうがある、ということですか」

加藤院長は、おもわずうなった。

「そうです。最近は材料の高騰で逆ザヤがおこっていますが、メンテナンスは金属などの変動費がかからないので、そんな心配もいりません。つまり、歯科医院にとって予防メンテナンスというのは、コストが低い割に粗利が大きい、コストパフォーマンスの高い収支モデルなんです。

したがって、治療が終わった患者さんの中から、一定の割合でメンテナンスで通い続ける仕組みをつくることは経営の安定化につながります。なぜなら、衛生士が活躍する場が生まれる上に、3~6カ月ごとのリピート来院が見込めるからです。その上、ドクターが一切手を出さずに、衛生士だけで運営できるので、高コストパフォーマンスが実現するのです。

ただ、一つだけ前もって知っておくべきことがあります。それは、メンテナンスが順調に増え続けると、いつかはチェアが満席となり、チェアの増設と衛生士の増員が必要になる点です。
そのときには、タイミングをちゃんとシミュレーションする必要があります」

患者さんの立場にたって考えても、虫歯になってから歯医者に行くよりも、虫歯にならないために歯医者に行くほうが、一生涯を通してのコストパフォーマンスは圧倒的によいはずだ。

加藤院長は、これまで漠然とした不安から、メンテナンスの促進に本腰を入れていなかったことを反省し、明日から「メンテナンスの価値を患者さんに伝えていく」ことを決断した。

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎目先の売上げではなく将来の成長を目指す為に必要なこととは?

今回のレッスン

◎予防メンテナンスは、ドクターが一切手を出さずに、衛生士だけでまわる分野。金属などの変動費がかからないため、材料費の高騰による逆ザヤのリスクもなく、高い粗利率が期待できる。

◎その上、メンテナンスは衛生士がやりがいを見いだせる分野でもあり、医院とスタッフ、患者さんの3方良しの診療スタイルである。はじめの一歩は、「定期メンテナンスを受ける価値」を患者さんにきちんと伝えていくことから。

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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