目標を立てたのはいいが、圧迫感を感じるときに。数値目標に追い立てられる“焦り”との向き合い方とは?
2020.11.02 執筆者:和仁 達也キャッシュフロー経営売上アップ歯科医院目標設定着眼点
目標を立てたのはいいけど、その目標に向かっているつもりでも
何かを理由に進められない時に、罪悪感を抱いてしまう。
なかなか思ったように進めなかったりすると焦りと共に
思い通りにならない不甲斐なさを感じてしまう。
目標を達成する!と思っていたのになかなかできない現状を感じて
罪悪感を抱いてしまったりするとツライですし、
モチベーションが上がらなくなってしまいますよね。
特に、自分で会社をしている人にとっては、
売上目標を決めたものの、そこに集中できなかったり、
いまひとつその達成にこだわれないときには、一つ理由があります。
今回はその事例ストーリーと具体策を、歯科医院を題材に紹介します。
加藤院長は、「今年こそ飛躍の年」と決めていた。
開業して4年目、誠実に医療を続けるも、
患者さんにその価値を伝え切れずに、来たり来なかったりする
患者さんの態度に悩みながらやってきた。
しかし、今年は
「価値ある医療を提供することは大切。しかし、それと同等に、
その価値をちゃんと患者さんに伝える努力も大切」
だと気づき、カウンセリングや情報提供に注力してきた。
その甲斐があって、売上は上昇し始めた。
昨年売上5千万円に対して、今年は7千万円に40%アップを目指し、
昨年までの未達分を一気に挽回したいと考えている。
ところが・・・。
このところ、加藤院長はテンションが下がり気味だった。
それは目標達成を「やれる」という思いと
「自分には無理があるのでは」というモヤモヤした不安が
日々交錯しているからだ。
その気持ちの持って行き場がわからなくなった
加藤院長は、経営ミーティングでキャッシュフローコーチの
和仁に、その旨を伝えた。
一通り話を聞くと、キャッシュフローコーチは言葉を発した。
「よくわかりますよ。加藤院長のこのモヤモヤした不安の正体は、
いくつか理由が考えられます。
その1つは、
『その売上が実現するシナリオを、
具体的に描ききれていない不明瞭さ』
にあるのかも知れませんね。
つまり、『年間で40%の売上アップ』という大きな方向性は
あるものの、『1ヶ月あたり、あるいは1日当たりに、
保険診療で何人みて、自費診療を何人見て、
物販をどれだけ売れるとそこに到達するのか』が
イメージできていない、ということはありませんか?」
「あ、、、。それは、たしかにその通りです」
加藤院長は即答した。
それを受けて、キャッシュフローコーチはまず、
売上のシナリオをざっくりと概算で描いてみることにした。
「現状の年間売上5千万円は、
1ヶ月の平均売上が417万円で、月20日診療として
1日平均の売上が約21万円。
この内訳は、保険診療の平均単価が@5千円として35人、
自費診療の平均単価が@3万円として1人、
それに物販が5千円、という感じです」
ホワイトボードに数字を書きながら、話を続けた。
「これをどのようにすれば、年間売上7千万円になるかというと、
1ヶ月の平均売上が583万円で、月20日診療のままなら、
1日平均の売上が約29万円。
つまり、1日平均8万円の売上アップです。
なのでこれを、保険診療と自費診療、そして物販で
どのように構成するか、という議論ですね。
そのあたり、加藤院長としては、どんな感じが理想的だと思いますか?」
焦点が絞り込まれたことで、加藤院長に臨場感が湧いたのか、
前のめりになって答えた。
「そうですねぇ、、、。現状では、チェア5台あるうち、
1.5台分が遊んでいる感じなので、
これを稼働させるのが一番イメージしやすいです。
ただ、数だけじゃなく質も充実させていきたいので、
自費を高めたいんですよね。。。
ただ、この1年で自費を急増させるのが無理があるし、、、」
加藤院長が少し堂々巡りをし始めたので、
キャッシュフローコーチはたたき台を提案した。
「では、1つのたたき台の案を出しましょう。
この案をもとに意見を聞かせてもらえますか」
●1日あたり8万円の売上アップを実現するために
・年間売上5千万円と7千万円の違いは、
月の診療日が20日なら、1日あたり8万円の売上の差である。
・この8万円分を、保険収入で5万5千円、
自費収入で1万5千円、物販は1万円としてみる。
・つまり、保険診療の患者数を1日あたり11人増やし、
自費診療の患者数を2日あたり1人増やし、
物販売上は現状の5千円から1万円増やして1万5千円をつくる。
「なるほど、これを積み上げて行くと、年間売上7千万円で、
売上40%アップが実現するわけですね。
だいぶリアリティが出てきました。
『目標を小さく分解して具体化していく』ことが、
わたしには足りなかったんですね」
キャッシュフローコーチはにっこり笑って答えた。
「日常の忙しさにかまけて、本来目指すところが見えなかったり、
それが漠然したままで具体化できずにいる人は少なくありません。
だからこそ、そこを具体化することで、イメージしやすくなり、
やるべきことに集中できるようになるんですね」
加藤院長は、うなずきながらつぶやいた。
「そうか、、、。曖昧さは力を奪い、明確さは力をもたらす、ですね」
【今回のレッスン】
◎目標が大き過ぎて、そこに到達するイメージが描けないときは、
1ヶ月単位、1日単位に、リアリティが描けるところまで分解してみる。
◎曖昧さは力を奪い、明確さは力をもたらす。
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