節税対策を提案されたら、まず確認すべき1つのこと
2022.10.15 執筆者:和仁 達也キャッシュフローコーチキャッシュフロー経営借入金着眼点
黒字の見通しが立つと、周りの専門家は節税対策として
さまざまな提案をしてきます。
それによって税金が減ると得するように見えますが、
それによって別のところで不具合がでることもあり、
一面的に見ることにはリスクがあります。
この記事では、歯科医院を題材にして節税対策を提案された際に
何をどのように考えれば良いか、をお伝えします。
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開業3年目を迎え、無事、黒字決算の見通しがついたところで、
加藤院長は微妙な違和感を抱えていた。
それは、取引先である銀行や医療機器のディーラー、
税理士からの提案についてであった。
これは、この2週間の間でのそれぞれとの会話だ。
<医療機器ディーラーの営業マン>
「院長先生、減価償却費で節税するためにも、
以前からご提案していたこちらの設備、導入されては
いかがでしょうか?」
<銀行>
「院長先生、昨年で支払いが2本終わっていますので、
新たな借入をなさいませんか?1千万円までなら、
わたしの判断で即決できますよ」
加藤院長がこの両者からの提案を顧問税理士に
伝えたところ、次のように促された。
<税理士>
「院長先生、それは良い提案です。
今年はかなりの利益が出てしまうので、
税金も大変なことになりそうだったのです。
でも、ここで設備投資をして減価償却費で
経費を増やせば、税金が減るので、おススメです。
貴院なら銀行の融資も大丈夫だと思いますから」
みんなが口を揃えて
「節税対策のため、借入をして設備投資をした方がよい」
と持ちかけるのだが、本当にそうなのだろうか?
それは、税金が減るとしたらそれは確かにうれしい。
ただ、借金も早く無くしたいのに、借金を勧められるのは
違和感がある。一体、どれが正解なのだろうか?
そんな違和感を、キャッシュフローコーチの和仁に
相談したところ、思いがけない着眼点を提示されることとなる。
「ここで問われているのは、
院長が何を一番、重要視しているか、だと思います。
周りの専門家たちは、顧客である院長がどうなりたいか、
に合わせて提案を持ちかけてくるからです。
その点は、いかがですか?」
しばらく考えて加藤院長は答えた。
「それは、税金が少なく済むならその方がいいけど、
『何を一番重要視しているか』って言われたら、何だろう?
『早く借金を無くして、現預金がそれなりに手元にあって、
お金の不安から解放されて、医療に専念できる状態になること』かな」
キャッシュフローコーチはあいづきを打ち、共感しながら言った。
「そうですよね!理想の医療に専念できる状態をつくりたい。
そのために、早く無借金状態にして、手元の現預金を増やしたいのですね。
ここで気をつけたいのが、『節税対策』の落とし穴です。
税理士に相談すると、『税金が少なくなること』を
優先した提案をされることがあります。
その結果、確かに税金は減るが、手元の現金も減る案
を提示され、結果として借金はいつまでたっても無くならず、
資金繰りが苦しい状態が続く、なんてこともあり得ます」
院長は素朴な質問をした。
「なぜ、ウチの税理士は、節税対策を強く勧めるのですかね?」
「おそらく、今までに多くの顧問先の社長から、
それ(節税したい)を求められてきたからだと思います。
そして、節税は数字で効果がわかるので、感謝されやすいのでしょう。
これは、業績が好調な右肩上がりで資金繰りの不安がない時代は、
それでもいいのかも知れません。
しかし、今はそんな時代ではないし、
ましてや院長の望みはみんながみんな『節税』ではなく、
加藤院長のように『早期の無借金化と手持ち現金の増加』であれば、
それに適した提案をしてもらいたいところですね。
今までに、税理士とそのような話をしたことはありますか?」
加藤院長はハッとした顔をして答えた。
「今言われて気がつきましたが、
わたしがどうなることを望んでいるか、を税理士や周りの専門家に
ちゃんと言葉にして伝えたことは無かったかも知れません。
それでは、世間一般的な常識を持ちかけられても仕方がないですね。
さっそく今月の打ち合わせで、その話をしてみます」
キャッシュフローコーチはうなずいて言った。
「加藤院長のように、本当に望んでいることを自覚している人は、
実は少数派なのかも知れませんね。
『周りのみんながやっているから、言っているから』
という基準で発想し、判断している人は少なくありません。
それだと、納得の意思決定から離れてしまいます。
今回のような問答を重ねることで、
自分が本当に望むものは何かがハッキリします。
その問答の起点は違和感です。
それを軽く流さずに、注目することから理想への道は開けるのでしょうね」
【今回のレッスン】
◎『周りのみんながやっているから、言っているから』
という基準で発想し、判断していると、納得の意思決定から離れてしまう。
「自分は何を一番重要視しているか?」を自問しよう。
◎違和感を感じたら、それを起点に信頼する人と問答することで
「自分が本当に望むものは何か」がハッキリする。
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