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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

素人のお客様が納得の判断をするために必要なこと。 理想の治療を提案して、患者さんに決断してもらうには?

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2023.04.15 執筆者:和仁 達也

コンサルタントやドクターをはじめ、その道の
専門家の見立てでは「これがベスト」と確信して
お勧めするも、素人のお客様には前提となる情報がないため
それが伝わらず、残念な判断をするケースがあります。

その対策について、歯科医院の事例ストーリーを紹介します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

加藤院長は、理想の治療を患者さんに提供することに情熱を注いでいる。
そのことでかねてから悩んでいることがあり、キャッシュフローコーチの
和仁との今月の定例ミーティングではそれを議題に取り上げることにした。

「今日は、大きな契約をコンサルするときのクロージングの
コツについてご相談させてください。

当院でも、インプラントや矯正治療の相談は入るのですが、
なかなかベストな治療の選択をしてくれる方が増えません。

何度も相談の時間を取って資料も作り、
結論が先延ばしになった挙句に、
一部は自費でやり、後は保険の銀歯と義歯で終わるパターンも
少なくありません。

『患者さんに押し付けになってはいけない』と思うがあまり、
過剰に控えめになってしまっているかもしれません。

コンサルの仕方やクロージングのコツなどがあれば
教えていただけないでしょうか?」

キャッシュフローコーチの和仁は、
現状をヒアリングすることから始めた。

今の成約率は、知人のドクターが8割ほど成約している治療を、
当院は2〜3割程度であった。

また金額は他の医院が35から40万円程度のインプラントが
当院は45万円から50万円すると言うこと。

つまり品質が高い分、価格帯がよその医院よりはやや高めであった。
しかし、加藤院長が本当に気にかけているのは、
価格が高いこととは別のことにあった。

「実は私も自覚しているんですが、最後の判断を、
患者さんに任せすぎているところがあると思うんです。

『説明は以上です。後はちょっと考えてみて』
と判断を患者さんに投げてしまい、あと一押しが
足りないのだと思います」

その理由を尋ねると、院長はこう答えた。

「この治療にすれば大丈夫だ、と言い切れないと
思っているからです。どんな治療でも完璧と言うことはなく、
お口の中の環境も年々変わっていくので、

『これだけ高いお金を払って治療したんだから一生涯大丈夫だろう』

と言うスタンスで来られると、私も困ってしまうんです。

なので、『私を信頼してこの治療を受けてください』とまで
言い切れないんですよね」

状況をおおよそつかんだキャッシュフローコーチは、
次の質問を投げかけた。

「加藤院長わかりました。1つ質問させて下さい。

例えば院長が勧める治療を受けることによる
メリットとデメリットを言語化するとどうなりますか?」

加藤院長は答えた。

「例えばある症状に対して、義歯とインプラントで比べると、
義歯であれば6から7本で50万円相当の治療が、
インプラントなら4本で200万円と言う治療があったとします。

この場合インプラントをお勧めしたいんです。

そのメリットは
『自然に噛める』と言うことと、
『残っている歯に負担がかからない』こと、
『発音に悪影響が出にくい』こと、
『義歯なら針金が見えて見栄えが良くないがその心配がない』こと、
『義歯だと食後に外して洗う手間が発生するがそれがなくラクである』こと、
などがあります。
デメリットは、費用負担が大きくなることでしょうね」

キャッシュフローコーチはそれを聞いてさらに尋ねた。

「なるほど、よくわかりました。
では加藤院長、もう1歩踏み込んで質問しますね。

義歯ではなくインプラントを選ぶことで、
患者さんは仕事や生活にどんな良い影響を受けることになる
のでしょうか?」

加藤院長はしばらく考えて答えた。

「そうですね。義歯だと残っている歯に大きな負担がかかります。
それによって痛みやすくなり、歯が割れるリスクが高まるんです。

そうなるとまた治療しなければならず、生涯を通して考えれば
結局費用が高くつく上に、治療にかかる時間と回数が増え、
日常の手間が増える。

トータルで考えると仕事や生活に支障が出ると感じます。

また、もし人前で話をする人であれば義歯だと発音しにくい
ことが常に気になるでしょうし、
そこもお金に換算しにくい価値なんじゃないでしょうか。

例えばもし私が和仁さんの立場なら、人前で話をする際に
見た目の美しさや発音がしやすいことは優先順位が上がるので、
間違いなく義歯ではなくインプラントを選ぶと思います」

キャッシュフローコーチは膝を打って答えた。

「加藤院長、そうですよね!
私が聞きたいのはそこなんです。

つまり、どちらが良いのかを判断するときに、
『自然に噛める、発音に影響しない、残っている歯に負担がかからない』
などの機能面のメリットは我々素人には分かりにくいんです。

つまり、価値が伝わりにくい。しかし今のように、
それがどう仕事や生活に影響するのか、の
生活面のメリットを聞かされて初めて、
『それだったらこのぐらいの費用を払う価値がある』
と気づくことができるのです。

もし普段そこまで伝えていないのであれば、
もう一歩先の仕事や生活におけるメリットまで
言及してみてはどうでしょうか」

加藤院長がメモをしているのを見ながら、
キャッシュフローコーチはもう一言言い添えた。

「そしてもう一つ、
最後の押しが足りないと感じている点についてですが、
条件付きでOKを言うと言うのはどうでしょうか。

さすがに家で全く歯磨きをせず、年に1度の定期検診にも
来院しないようではお墨付きを与えられませんよね。

しかし、たとえば
『毎日朝晩、歯磨きをして3ヶ月に1度は定期検診を受けるなど、
いくつかの条件を満たしている人なら、よほどのことがない限り
9割以上の患者さんが安心して生活することができています』

と言う言い方ならできるのではないでしょうか。

つまり大事なことは、どんな条件を満たせば快適に生活できるのか、
をきちんと言い添えた上で、プロとして自信を持って
お勧めすることなのではないでしょうか」

それまで、0か100か、マルかバツか、の
両極端な発想しかなかった加藤院長にとって、
「条件付きでOKと言う」概念は目から鱗だった。

自分の歯を守るためには、当然自ら行動する必要がある。

そこをちゃんと言葉にして伝えることで自己責任の概念を
患者さんに理解してもらい、そしてそれによって得られる恩恵を
伝えることがこれからの自分に必要なことだと実感していた。

【今回のレッスン】

◎機能面のメリット・デメリットは素人には理解ができない。
そのさらに先の生活面のメリット・デメリットを伝えてあげよう。
◎「絶対にOK」とは言えないなら、「条件付きOK」を伝えてあげる。

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎価値を相手にちゃんと伝える秘訣とは。治療内容の説明が先か、価格の説明が先か?先に言えば説明、後で言えば言い訳。

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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