給料の決め方、考え方。世間で言われている目安は本当なのか。
2021.09.02 執筆者:和仁 達也キャッシュフロー経営人件費歯科医院着眼点
社員の給料の決め方はどのように考えればいいですか?
と相談をいただくことがあります。
自分の社員の給料をいくらにすればいいのか
給料の決め方で悩んでいる経営者は意外に多いです。
世間一般的に言われている決め方でいいのだろうか?
と疑問や目安で決めることにしっくりきていないけど、
わからないからなんとなく決めているという
経営者もいるのではないでしょうか?
そこで、この記事では、歯科経営における給料の決め方、
考え方をお伝えいたします。
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今日は、月に一度の経営ミーティング。
加藤院長は、キャッシュフローコーチの和仁が院長室に入ると、
早々に質問を投げかけた。
「少しざっくりした質問で恐縮なのですが、聞きたいことがあります」
キャッシュフローコーチがうなずいて聞いているのを確認すると、
加藤院長は、お茶を一口含んで話を続けた。
知人の歯科院長から相談を受け、
勤務医の人件費適正額を知りたいとのこと。
「彼の話では、『人件費が25万円だったら、
売上は125万円と言われている』のだそうです。
ただ、私は売上ベースではなく、
粗利ベースで考えた方が適切だと教わったし、
その方がしっくりくるんです。
それで、そこから考えると、
売上125万円×80%=粗利100万円
このときの労働分配率は、
人件費÷ 粗利= 25万円/100万円 = 25%
ということで、
『勤務医は労働分配率25%くらいが適当』
なのかなと思っているのですが、この考えは適切なんでしょうか?
ネットで探すと、なかなか公的な数値もなくて、
ヒットしたと思ったら、数値がまちまちで、
結局知人にもちゃんとした回答ができなくて、
気になっていたんです」
一通り話を聞くと、キャッシュフローコーチは
ホワイトボードに歩み寄り、ペンのキャップを外しながら話し始めた。
「まず発想法をお伝えしますね。
院長クラスのドクターが1日30人の患者さんを診る
ときを考えてみましょう。
保険診療の患者単価が5千円だとして、
週休2日でチェア3台、保険診療を中心にやっているとします。
すると、売上は、
患者単価5千円×1日30人×22日=月商330万円で、
およそ年商4000万円というレベルになります。
ただ、これは歯科衛生士がフォローしてくれて、
院長報酬が年間1000万円程度、
月額80万円程度の院長1人に、衛生士3人体制でのイメージです。
このとき、医院は収支トントンくらいです。
次に、衛生士の力を借りながら勤務医1人で診れる
マックスを考えてみましょう。
これは、キャッシュフロー的に分解すると、
保険治療の患者単価は、上記と同じ30分で5千円。
8時間勤務でチェア1台につきっきりで最大で16人診れるとして、
5千円×16人×22日=月商176万円となります。
この医院の粗利率が80%として、
粗利は176万円×80%=140万円。
このくらいの力があるドクターが受け取る給料の相場は、
月額30〜35万円です。
つまり、40万円未満になりがちです。
なぜなら、40万円だと、院長の半分の数の診療しかしていないのに、
院長の半分の報酬を受け取ることになるからです」
加藤院長は口を挟んだ。
「院長の半分の仕事をしているなら、
半分の40万円を払ってあげてもいいような気もしますが?」
キャッシュフローコーチはにっこり微笑みながら話を続けた。
「はい、本当の意味で院長の半分の仕事をしているなら、ね。
ただ、院長の仕事は、診療行為だけでしょうか?」
加藤院長は、はっとした表示で、大きくうなずいた。
「そうか、経営判断や銀行からの借入の保証、
人の教育やシステムづくりなど、診療以外にも
やることはいくつもありますね」
「そうです。つまり、院長は診療以外にも
複数の役割を担っていることを考えると、
月商176万円程度の仕事量では、
院長もなかなか納得して40万円以上を払いにくいのではないでしょうか。
なので、月商125万円となると月商176万円の約70%なので、
40万円×70%=28万円となります。
するとまさに、はじめに加藤院長がおっしゃっていた、
『人件費が25万円だったら、売上は125万円と言われている』
という数字に近い感じになる、という訳です」
「なるほどね〜、そう考えていくのかぁ」
加藤院長は、感心したように深いあいづちを入れた。
ちゃんと理解されていることを確認すると、
キャッシュフローコーチは、1つ付け加えた。
「ただ、これはあくまで保険診療のみでシミュレーションした
事例です。
ここに自費収入が含まれれば、患者単価が変わってくるし、
チェア数やスタッフ数が増えてくるとスケールメリットが生きるので、
また違ってきます。
とは言え、発想法として上記のことは踏まえておいても
いいかなと思いますね」
世間で言われている目安をそのまま鵜呑みにするのではなく、
ちゃんと自分なりに裏付けを確認すること。
それが納得の意思決定につながることを、加藤院長は実感した。
【今回のレッスン】
◎月に125万円の売上をつくる勤務医に支払える目安は、
25~30万円。ただし、その数字を鵜呑みにせず導き出し方を理解しよう。
◎また、自費や物販収入、そしてチェア数やサポートにつく
スタッフ数によって柔軟に考えたい。
◎世間で言われている目安を鵜呑みにせず、
自分なりに裏付けを確認してみる。
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