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歯科医院の脱★ドンブリ経営 実践ストーリー

稼働日数を増やす前に考えておくこと。日曜日に診療することで、医院にどんな影響が出るのか?

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2023.12.15 執筆者:和仁 達也

歯科医院などの医療機関やレストランなどのお店が
売上を増やすために、週の営業日数を増やすことがあります。

週5日より週6日の営業の方が売上は増えそうですが、
一方で見落としがちな落とし穴があります。

それを歯科医院の事例ストーリーでお伝えします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ホワイト歯科の加藤院長は、診療日数を増やして、
スタッフの稼働量を広げることを考えていた。

そのきっかけは、勤務医の独立にあった。

今まで数人の勤務医を雇用してきたが、
3年から5年ほどすると独立開業を果たしていた。

加藤院長は何年も医院で頑張ってくれていた勤務医の
晴れの独立開業を応援し、快く送り出していたが、
内心複雑な気持ちがあった。

採用する時点でいずれ独立することは聞いてはいたものの、

「働いているうちに、独立開業ではなく当院の副院長として
勤務しながら医療の研鑽を磨く道を選んでくれるのではないか」

と密かに期待していたからだ。

しかし、採用時点で独立開業を口にするドクターは、
独立のタイミングは前後するにせよ、やはり独立の道を選んでいた。

それはすなわち戦力ダウンを意味し、新たなドクターの
採用と育成を伴うわけで、少なからず負担を感じていた。

そんな経験を重ねるうちに、加藤院長は

「勤務医が独立しても医院の経営にネガティブな影響が出ない方法、
むしろそれがポジティブな影響を与えるシナリオを描けないものか?」

と考え始めた。
その一つのプランが、「勤務医を余剰に雇用しての、診療日数の拡大」だ。

それを後押しする要因もあった。

幸い、ホワイト歯科は歯科衛生士の意識が高く自立していて、
技術力も高いので、院長としても長く務めてほしいと願っている。

そして10年以上勤務するスタッフが増える中、
子供が成長して仕事に割ける時間が増えたことから、
パート勤務から正社員への復帰を希望する人や、
パートのままでも出勤日数を増やしたいと申し出る人が増えてきた。

今までは、その意思を受け止めるにとどまっていたが、
そろそろ具体的な対策を考えなければとも感じていた。

そんな背景の中、勤務医が独立開業しても医院の運営が
安定するためには、「もう1人のドクターをプラスアルファで雇い、
スムーズに継承がなされる仕組み」を作っていきたいと考えた。

今のホワイト歯科に余剰に勤務医を採用する経済的な余力はないが、
診療日数を増やせばより多くの患者さんを見ることができ、
新たな売上を作ることができる。

そこから勤務医が増員した分の人件費や諸経費を支払えるようにすれば、
お金の問題は解決するし、さらにもっと長く働きたいと言う
衛生士の希望を叶えることもできる。

そこで加藤院長は、診療日数を増やすことを7割方、
心に決めていた。しかしあと3割は漠然と不安なままだったので、
その不安の正体を明確化すべくキャッシュフローコーチの和仁に相談することにした。

キャッシュフローコーチは加藤院長に尋ねた。

「加藤院長が考えておられるプランは理にかなっているし、
良いと思います。とは言え新たな取り組みですし、
スタッフや医院に与える影響も大きいことなので、
漠然とした不安があるのもよくわかります。

そこでお尋ねしたいのですが、具体的に加藤院長が
懸念している点はどんなことですか?」

加藤院長はしばらくの沈黙の後、答えた。

「今は木曜日以外の平日と土曜日の週5日勤務ですが、
これを週6日、さらには週7日の勤務にするには、

①『木曜日と日曜日に何人のスタッフが出勤してくれのるか』

が大きなポイントです。特に日曜日が問題で、
『平日なら働きたいけど、日曜日は家族との予定があるので遠慮したい』
と言うスタッフもいると思います。

それから、

②『お金の流れ的に、何ヶ月目で投資分が賄えて収支トントンになるか』

が見えていないのも不安です。勤務医を重複して余剰に雇用することが前提となるわけですからね。

また、

③『勤務医が場を取り仕切っているときに、
チームとして一体感を持って連携できるのか』

も気になります。

それから、これは一般的な話として

④『人は新しい変化を避けたくなる』

ものだと思うので、週5日勤務から週6〜7日勤務のシフト制に
切り替えることに不安を感じるスタッフは多いと思います。
それがどの程度なのか、がまだつかめていないことも気に掛かります。

最後に、それらに関連するのですが、

⑤『私が医院にいない間、スタッフだけで医院をまわしていることを
想像すると気が気じゃなくて、心が休まらないのではないか』

と言う気がするんです」

「いろいろ出てきましたね〜」
キャッシュフローコーチはそう言うと、微笑みながら話を続けた。

「それだけ懸念点がハッキリしているのなら、今やるべきことは明確です。

まず、日曜日に働けるスタッフは何人いるのか、
これはスタッフに直接、打診してみましょう。

お金の流れがどうなるか、についてはシミュレーションが必要ですね。
これは勤務医の給料やボーナス、諸経費を弾き出して、
それをカバーするためにいくらの新たな売上が必要か、を一緒に算出しましょう。

勤務医が場を取り仕切って一体感をもって運営するには、
『そのためのドクター教育や、医院としてのサポートについて何ができるか』
を整理しておきましょう。

また、週7日勤務になることの意味も言語化したいですね。
例えば、次のように。

・医院にとっては、勤務医を余剰に抱えることができ、
独立しても安定した診療体制を保てる。

・スタッフにとっては、より長く働きたい希望を叶えることができる。

・患者さんにとっては、木曜日や日曜日に診療を受けたかった
希望が叶い、利便性がアップする。

このような三方よしの意味づけができれば、
スタッフの理解もより得やすいかもしれませんね」

「なるほど、確かにこのように懸念点が明確になれば、
やるべきこともはっきりします。

今、上げていただいたことを次回までに書き出してみますので、
その続きは次回のミーティングで相談に乗ってください」

加藤院長は、晴れやかな顔でメモを取り、さっそく行動に移し始めた。

 

【今回のレッスン】

◎診療日数を増やす際には、まずそれに付随して発生する
「気になること」をリストアップして、その対策を書き出そう。
◎診療日数を増やすことの、医院にとって、スタッフにとって、
患者さんにとっての意味づけを言語化しよう。

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎週5日から週6日診療に増やして売上アップを狙うために、シフト制を導入するときの落とし穴とは?

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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