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社員を巻き込みビジョンを実現する キャッシュフロー経営って?

会社の数字をオープンにするのを社長が躊躇する5つの理由

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2022.04.30 執筆者:和仁 達也

会社のビジョンや数字をオープンにするメリットを感じていながらも、
一方でいざ実行しようとすると、ばくぜんとした不安で躊躇する社長も
少なくありません。

特に、これまでオープンにしてこなかった会社の数字を
社員にオープンにするというのは、それなりに勇気がいることです。

今まで「あえて隠していた」と言う訳ではなくても、
わざわざ見せる必要がなかったのですから。

そういう意味では、経営をオープンにするというのは、
これから新たに会社をおこそうというケースのほうが導入に際して
抵抗感がないでしょう。

しかし、すでに何年も経営している会社でも、
以下の5つのことさえクリアできれば、オープンにすることは可能です。

これまでの私のコンサルティング経験の中で、
社長が経営をオープンにすることをためらうことがあるとすれば、
おおよそこの中のどれかに原因があるからです。

そして、その解決策は想像していたほど難しいものではありませんでした。
では、一緒に見ていきましょう。

 

1.社長が自社の数字をほとんど把握しておらず、オープンにすることに漠然とした不安がある。(社員に質問されても答えられない)

社長自身が経営、特に数字について把握していない場合、
「何をオープンにしていいかわからない」ということがあります。

仮にオープンにしたとして、社員からいろいろと質問を受けても
答えられないのではないか、という不安が先に来てしまう、
というような初歩的なハードルがあります。

この場合、まずは最低限の必要なレベルでの
お金の流れの全体像とその意味を理解しておきたいところです。

この記事で紹介している「お金のブロックパズル」に
自社の実際の数値をいれてみましょう。

さらにしっかりと学びたい方は、拙著「超★ドンブリ経営のすすめ」
(ダイヤモンド社)が参考になります。

 

2.社員に知られるとマズイ隠し事がある、あるいはマズイと“思い込んでいる”

自社のお金の流れの全体がわかってくると、次に不安になることがあります。
それは、「この数字がバレたらどうしよう?」という不安です。

「交際接待費が多いことを突っ込まれそうだなあ。
『社長は毎日、飲み歩いてばっかりじゃないですか』なんて言われそうだな」

「社長が社員の5倍以上の給料を受け取っていることを知ったら、
社員はどう思うだろうか」

「ほかにもいろいろと社員が不審に思うようなことがあるんじゃないか」

というように。

でも、実は社長が知られて困る要素は限られているのです。

要するに
「社長の私的なものを経費にしているところはどこか」
ということです。

決算書の中で目を向けておきたいところは、まず自分の給料です。
交際接待費です。

他には何があるでしょう?
一度、考えてみましょう。

「私の場合、高級外車に乗っているのですが、
これを会社の経費にしてあります。実際、仕事でも使いますから」

ほかには?

「接待費が多いと思うかも知れません。
私としては、これは会社をPRしたり人脈づくりの一環なので、
後ろめたい気持ちはないのですが・・・」

ほかには?

「あとは・・・。う~ん、それくらいじゃないでしょうか」

そうですよね。せいぜい2~3項目ぐらいではないでしょうか。

社員に伝えたときに不信感を与えないために
きちんと説明をしたほうが良い項目というのは、
たくさんあるような気がしますが、実際には2つか3つなんです。

「社員に知られると不安なことは何か?」
ということを予め具体的に考えておくことがまず大事でしょう。

会社を始めて間もないうちは、どこまでがプライベートで
どこからが仕事なのかの線引きが曖昧だったりします。

それが組織が成長し、きちんとした枠組みをつくる
必要性が出てきたときには、そのブラックボックスが徐々に
黒からグレーへ、グレーから白になっていくことになります。

上場企業になれば否応なくオープンになり、
どこを突っ込まれても答えられるだけの透明性が必要になりますからね。

経費として計上している中身についても、必然的に根拠が明確になります。

社員に聞かれても堂々と答えられるよう
「これはこういう理由で経費なんだよ」というふうに。

小さい会社のうちは自分の中で曖昧になっている部分がある。
それがだんだん公的なものに移っていく段階で、
「これはこういう理由で会社に必要な役割を果たしている」
という根拠付けをするようになります。

それができないと、全部社長の道楽でやっていると社員に思われてしまうかも知れません。

 

3.社長の報酬が社員と比べて、あるいは実際の貢献度と比べて極端に高すぎるので後ろめたい

私のセミナーに参加したある会社の社員がこんなことを言っていました。

「会社の利益は全部、社長の懐に入ると思っていました」

これは大きな誤解ですよね。
実際はその利益から会社の借金の返済に充てたり、
将来の投資のために蓄えたり、設備投資をしたりするのですから。

しかもお金が足りなくなると、社長は個人資産を切り崩して
会社に補填するわけです。

そうすると「利益は全部社長の懐の中」というのとはまったく逆なんです。

「でも、私(社長)の給与は高過ぎるから社員には
オープンに出来ないような気がします。

自分は社員の3~4倍もらっている。
これだけもらっていると社員は文句を言うから、ちょっとオープンに出来ません」

そんな社長の声も聞こえてきます。

では、社長の役割を考えてみてください。

社長は通常、会社のトップセールスマンです。

その上に経営者として会社の舵取りの役割をしています。

それから個人の資産から出資をして、ときにはお金を会社に貸し付ける役割もする。
要するに投資家的な役割もしますから、お金を貯えておかないといけません。

さらに、会社をおこした当初は、収入が不確定なため、
あまり給料を受け取らず無報酬で働いていた時期もあるでしょう。
ただ働きを1~2年してきた社長も少なくない。
だから売上ができてきて、利益が出た頃にその分を回収するというのは、
長期的な視点に立てば当たり前の話だと思いませんか。

つまり社員10人以下の会社の社長は、
1人で3つ、4つの役割を果たしているわけです。

そういう人が社員の3倍、4倍もらうことが果たして問題があるのだろうか。
十分もらっていいと私は思います。

ただ、このことを社長が自ら社員に言うのは気がとがめるものです。
また、自分で言うと言い訳がましく聞こえるかも知れません。

そこで、この話を社員にするときは、
社長本人が言うよりも第三者に説明してもらったほうが、
より説得力を持ちます。

税理士でもいいし、キャッシュフローコーチでもいいし、
第三者の口から言ってもらうことがポイントです。

本書のこのページをコピーして社員に読ませてもいいでしょう。

要するに客観性のある他人に言ってもらうこと。

やはり、正論であっても自分に都合のいいことは自分では言いにくいものです。

ただ1点だけ注意があります。

もし社長の日頃の働きぶりに「社員の3倍、4倍の役割がある」
というような実体が伴っていないと、当然ながら社員の不満は高まります。

この記事でお話ししていることは、すべて理屈です。
そしてこれはあらゆることにおいて言えることですが、
人は理屈だけでは納得させられません。
先に納得に足る「実態がありき」で、
それを裏付ける理屈があってこそ社員は納得してくれます。

つまり、「社員の3倍、4倍(あるいはそれ以上)の報酬を受け取る
ということは、それに見合った仕事をしているのだ」という緊張感を社長に与え、
パワーを引き出す効果があるのです。

したがって、私の個人的見解として、
社長は自分の納得のいく給料をきっちり受け取ってください。

以上、社長の給料を公開する場合のことをお話ししましたが、
実際のところ、社長や社員の給料をオープンにするのは、
成熟した企業にしかお勧めしていません。

なぜなら、給料というのは組織のモチベーションを
上げる要因ではなく下げる要因になりやすいものだからです。

給料が多いかどうかは、社員のモチベーションにつながると思っている人は
少なくありません。しかし、本当にそうでしょうか?

給料がモチベーションアップにつながるのは、
給料が自分の期待以上に上がったときだけではないですか。

社内の給料をオープンにすると、実際には、
社員は次のような質問を頭の中に投げかけています。

「なぜ自分の給料よりも、同僚のAさんのほうが多いのか?」
「他部門のBさんは、なぜあんなに高い給料をもらえるのか?」
「なぜ役員はあんなに給料をたくさんもらえるのか?」

これらの質問を、直接聞きに来てくれれば、
社長としても答えようがあります。

しかし、たいていは「人と比べて不満を言うなんて、
大人気ないと思われそうだ」と自分の腹の中に収めてしまいます。

そういう人は、本心では納得はしていないので、常に腹の中に不満を持っています。

人は自分と他人とを比較する習性があります。
それがプラスに働くか,マイナスに働くか、よく見極めてください。

さきほど言った「成熟した企業」とは、
周りの人と比べてどちらが頑張っているかという
相対価値だけで考えるのではなく、
自分の役割に対してどれだけ実践しているかという
絶対価値で評価する人たちによる企業を意味します。

そもそも、100%正しい給料なんて、存在しません。
最終的には最高経営責任者である社長の判断です。

その社長が、適当に根拠もなく決めた給料だとしたら問題ですが、
きちんと考え抜いて決めた給料であるとしたら、
それがその会社の答えだということです。

その答えを尊重し、
マイナス的な見方(なぜあの人のほうが給料が高いのか?)ではなく、
プラス的な見方(私もあの人を上回れるよう頑張ろう!)ができる社員が
大半を占めるようになったら、給料をオープンにする効果も出てくるでしょう。

 

4.経営状態が危ないことがバレて、社員が不安で辞めるかも知れない

これは、まず社長が次の質問に答えを出し、決断をする必要があります。

・経営状態が危ないことを隠して、今までのやり方を続けるのか?
・そのピンチを「社長も含め、全社員が本気になるチャンス」に変えるのか?

もちろんオープンにすることだけが唯一の道ではないので、
いろいろと選択肢を広げた上で最終的に決断すればよいのです。

ちなみに、「現状を話すと社員が辞めていくのでは?」という
不安があるとしたら、社員が辞めていく根本的な原因は、
社長と社員のコミュニケーション不足にあります。

「会社が今、どうなっているのか?」
「そしてそれを踏まえて社長は今後についてどのように考えているのか?」
「それを実行すると、会社や自分たちはどうなると期待できるのか?」

それがわからないから、漠然とした不安で社員が戸惑うのです。

したがって大切なことは、現状を認識した上で、
ビジョンと方向性、対策をきっちりと伝えることです。

現状がどれだけ危ないのか、悲観的な話だけを聞かされ、
「だから、とにかく頑張れ」と言われるだけでは、
社員はどのように頑張っていいかがわかりません。

具体的には、何をどのような順番で社員に伝えれば良いのでしょうか?
それは次の順番で行います。

まず、①経営をオープンにする意図を伝え、②現状を伝えます。
そして③理想の状態を話した上で、④その理想の状態に到達する期間・期限を伝えます。

①の“オープンにする意図”の伝え方をご紹介します。
ある社長は次のように社員に説明をしました。

「正直、オープンにするかどうかは迷いました。
会社の結果は社長である私の責任で、その数字は恥ずかしい内容なので、
皆さんもびっくりすると思ったからです」

「と同時に、この会社はまだまだ潜在力のある会社だと思っています。
したがって、こんな数字でもまずはみんなで今の状態と
これから何をしていけばどう回復していくのかをきちんと共有することが、
今何よりも大切だと考えました」

「ということで、今後会社の経営情報をオープンにして、
みんなで一緒に稼いで儲かった分はそれに応じて還元していく
というスタイルで経営していきたい。それがみんなにとっても
会社にとってもハッピーになる道だと信じています」

その次に、どの道をどの順序で、どのぐらいのスピード感で進むのか。
その結果、どのような理想の結果が待っているのか。
その先の道を社長が真剣に考え、その考えに社員がついてきてくれるかを問います。

つまり、会社として何を行い、その結果いつ頃までに
理想の状態に近づくのかをおおよその時間軸を交えて伝えるのです。

もっとも、よくも悪くも、社員は社長ほど臨場感を持って
経営状態を把握しておらず、危機感を持っていません。

よってあなたの予想に反して、社員は楽観的だったりする場合もあります。

もちろん残念ながら会社の状況を知って辞めていく社員もいるかも知れません。
しかし、あなたが本気で考えて伝えたことが納得できないとしたなら、
その人はいつかはいなくなる人なのではないでしょうか。

ならば、早くその結論を出して、あなたのビジョンに必要な人を
新たに引き寄せるのも1つの道です。

最終的には社長の覚悟が必要だということです。

 

5.当社の業績が社外に漏れるのではないか?

会社の数字は秘密書類として大切にあつかうことは重要です。
ミーティングルームに気楽に置きっぱなしにしたり、
他人の目の触れるところにおいておくのは論外です。

資料には「社外秘」マークをつけて厳重に扱うよう、
そのあたりの注意は最初に全社員にきっちり伝えておくことが必要になります。

その前提での話ですが、それでも、社員に数字を公開し
その資料を持ち帰れば、その数字がどこかで社外の人に伝わってしまう
可能性はゼロではありません。

資料の入ったカバンをどこかに置き忘れて
人手に渡ることもないとは言えませんからね。

そこで、経営データが社外に漏れた場合の最悪の状況を
想像してみてください。どんなことが起りえますか?

「たとえばライバル会社や取引先が当社の業績を知ることだと思います」

そうなると、どんな不都合なことがおこりえますか?

「なんとなく不安があるのですが・・・。改めてそう聞かれると、
具体的にはとくに思いつきません」

上場企業は経営データの公開が義務付けられています。
中小企業でも、帝国データバンクや東京商工リサーチなどで、
毎年の決算情報は開示されています。

つまり、会社としての主要な数字はすでに世の中にオープンになっているのです。
上場準備をしていて、株価に影響を与えるなどの特殊なケースは別として、
大抵の場合、万が一数字が社外に漏れたからと言って、
社長が思っているほど深刻な事態にはならないのではないでしょうか。

ただ念押しをしますが、極秘開発プロジェクトをすべてオープンにせよ、
という話ではありませんので、クローズドにしておいたほうが
経営上都合が良いことは絶対にオープンにしないでください。

なんでもかんでもオープンにすればよいというわけではありません。

オープンにするメリットとデメリットを比較して、
メリットのほうが多いと判断したら、そうすれば良いということです。

以上、社長が会社の数字をオープンにするのを躊躇する5つの理由をご紹介しました。
いかがでしたか?

これらについてクリアできる見通しが立ったとき、
私は社長に次の2つの話をすることにしています。

いずれもご自身の覚悟を確かめるための問いかけです。

 

覚悟その1 そのビジョンに本気でコミットメントしているか?

みなさんがビジョンやお金の流れを社員に公開する前に、
確認しておきたいことがあります。

社長本人がそのビジョン実現に本気でコミットメントしていますか?

会社のビジョンや方針、そして今の立ち位置を社員に伝えるということは、
それに同意できない社員が退職を申し出てくる場合もあります。

また、立派なビジョンを口にした手前、ごまかしたり、
なあなあでやり過ごすという甘えは許されなくなります。

たとえば「時間を大切にしよう」と言っている社長自身が
会議の時刻に毎回遅刻して社員の時間を浪費させていたら、
説得力を失いますよね。

社員は社長の言行不一致に敏感に反応するので、
「ウチの社長は、言っていることとやっていることが違う」
なんて言われないようにしたいものです。

 

覚悟その2 粗利目標の達成にこだわれるか?

社員のモチベーションを引き上げるキーポイントの1つは、
「会社の成果と自分の報酬のつながりがわかる仕組みをつくること」です。

社員のやる気を引き出し、成果と報酬を連動させる。

そのポイントは詳しくは別の記事でお伝えしますが、ひと言でいうと
「粗利とボーナスを部分的に(または全部を)連動させる」
ということです。

つまり、会社が目標の粗利を達成すると、
年初に決めたボーナス原資を減らすことなく予算額まるごと確保できます。
その原資の中から、貢献度に応じて一人ひとりに分配するわけです。

そして、粗利目標を上回った場合、
超過した分の粗利の一部をボーナス原資に上乗せすることができます。

そして、残りは会社の利益や必要な設備投資などの予算に上乗せできます。
この場合は会社も社員も双方ハッピーですね。

問題は、粗利目標を下回った場合のことです。
「ボーナスを粗利と連動させる」ということは、
「粗利が不十分だと、ボーナス原資が確保できない」ということです。

すると、社員にとっては
「粗利が確保できなかったので、ボーナスがもらえない」
というリスクもあります。

ここで何が大事かと言うと、社長は目標を立てた段階で、
「絶対にこの粗利を確保するぞ」と決意する必要があります。

目標粗利を確保するという決意というのは、言い換えれば
「社員のボーナス原資を絶対に確保するぞ」
という決意なんです。

そのためにありとあらゆる知恵と行動力、リーダーシップで、
目標を達成するという覚悟です。

なぜこのような話をするかというと、
オープン経営の良い点ばかりに目を向けてしまい、
「社員に責任を持たせることで社長はラクができるんだ」
という点ばかりを追い求めて欲しくないからです。

オープン経営は社員に当事者意識を持たせることが狙いであって、
社長の権限放棄とは違います。

当然ながら社長自身も目標達成に向けて、脳に汗をかいていただきたいと思います。

「さらに理解を深めたい人はこちらの記事もオススメ」

▶︎情報をオープンにする時に注意すること。「言葉足らず」に気をつけよう!

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  • 和仁 達也

    ビジョンとお金を両立させる専門家、ビジョナリーパートナー。1999年に27歳で独立、月1回訪問・月額30万円以上の顧問先を複数抱える。継続期間は平均10年で、20年以上の支援先も。この高額報酬で長期契約が続く【パートナー型】コンサルティングを学びたいコンサルタントや士業が養成塾や合宿に1,000人以上参加。2015年に日本キャッシュフローコーチ協会を設立。CFコーチの育成と普及に注力。著書に「年間報酬3000万円超えが10年続くコンサルタントの教科書」他多数。

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